「触知案内図の情報内容、形状及び表示方法」の国際規格が発行されました
「手で見る地図」の作り方~視覚障害者の移動支援に役立つ、日本提案の国際規格~
「右前方の通路を進んで2番目の角を右へ曲がって3番目の通路を左へ…」と言葉で聞くとわかりにくかった場所が、地図で見るとたちまちわかる、そんな経験はありませんか? 印刷された地図を見ることのできない視覚障害のある人も、「手で見る地図(「触知案内図」)」によって移動が楽にできるようになる場合があります。
図1:駅構内に設置されている触知案内図の例
しかし、印刷された地図を浮き出させただけでは、手で触ってわかりやすい地図になるとはかぎりません。地図の全体像を瞬時にとらえることのできる視覚と異なり、触覚で一度にとらえられる範囲は基本的に指の幅のみ、細かい情報や色によって示される情報など、触覚では確認できない内容もたくさんあります。
今回、この「手で見る地図(「触知案内図」)」の内容と形状および表示方法を規定した国際規格が、日本発案のアイデアを基に新たに発行されました。
1.規格制定の背景
障害のある人の社会参加の機会は、日本国内はもちろん、国際的にも大幅に増大し、障害者の自立を支援するさまざまなツールや仕組みが求められています。視覚障害者の移動を支援する触知案内図も近年広く活用されるようになりました。日本国内では、国土交通省の「バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)」でも、公共交通機関や公共施設等への触知案内図の設置が推奨されています。また、触知案内図には設置型のほかに、手に持って使用する携帯型のものもあり、空港等の施設内で利用者に貸し出され、活用されています。
しかし、触覚で理解しやすい案内図の条件は、印刷された案内図のそれとは大きく異なることから、適切ではなかったり、誤読の可能性の高い触知案内図も多く作成され、利用者に大きな問題を引き起こしてきました。
2.規格のポイント
今回、日本からの提案で発行された国際規格は、「ISO 19028 アクセシブルデザイン-触知案内図の情報内容、形状及び表示方法」という名称で、視覚に障害(全盲及びロービジョン(※))のある人々の安全で円滑な移動を支援するために公共交通機関や公共施設等に設置される触知案内図を、適切に作成するための条件を規定しています。
- 触知案内図の構成と、表示する情報項目の原則
- 触知案内図の寸法と設置方法
- 触知案内図における、現在地と目的地、触知図形、触知記号、点字と浮き出し文字、拡大文字等の表示方法
- 触知案内図の製造に適した素材
で、日本や欧州で使用されているさまざまな触知記号の例も付属書として多数掲載されています。
※ロービジョン:「両眼による矯正視力が0.3未満で、視覚による社会生活は可能であるが非常に不自由」な状態(JIS S 0042(高齢者・障害者配慮設計指針-アクセシブルミーティング)より引用)
(図2)ドイツで使用されている「エスカレーター」を表す触知記号の例
(図3)日本で使用されている「トイレ」を表す触知記号の例
3.「触知案内図」の国内規格
国内では、触知案内図に関する規格として、平成19年にJIS T0922(高齢者・障害者配慮設計指針-触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法)を制定しています。現在、国内の点字出版所等で作成される触知案内図は、すべてこの規格に準拠しています。
4.国際的な普及を目指して
触知案内図は、言葉だけでは伝わりにくい情報を、視覚に障害のある人にも伝えることのできる、有効な手段の一つです。今後、この国際規格に準拠したわかりやすく有用な触知案内図が世界で普及することが期待されます。
お問合せ先
産業技術環境局 基準認証ユニット 国際標準課 高齢者・障害者支援担当
E-mail:jisc@meti.go.jp
電話:03-3501-9277(直通)
FAX:03-3580-8625