公正なM&Aに関するルール形成について

公正なM&Aに関する取組

 M&Aは数多くのステークホルダーが絡み合う企業の支配権を巡る取引であるところ、日本企業の活動や資本市場の更なるグローバル化が進む中、日本の法制度や社会規範に根差しつつ、国際的に活動する投資家も含む国内外のステークホルダーからの期待に応え、その理解と信頼を得られる公正なM&A の在り方を明らかにし、関係者の共通認識の形成を図っていくことは、M&Aを実行する上での予見可能性を高めることで企業価値の向上に資するM&Aを促進し、日本におけるM&Aの健全な発展に資するとともに、日本の資本市場に対する信頼を高め、グローバルな市場間競争の中で日本企業への中長期的な投資を呼び込む上でも有益であると考えられます。
 産業組織課では、M&A等に関する研究会を開催するとともに、それらの議論等を踏まえ、各種ガイドライン等を策定しています。

 

M&Aに関する各種ガイドライン及び出版物

 国内外で活動する投資家を含むステークホルダーの期待に応え、その理解と信頼を得られる公正なM&A の在り方を明らかにすることは、 M&Aを実行する上での予見可能性を高めるとともに、グローバルな市場間競争の中で日本企業への中長期的な投資を呼び込むことにつながると考えられます。そこで、M&Aに関する各種のガイドラインを策定するとともに、出版物を刊行しています。

 
「企業買収における行動指針ー企業価値の向上と株主利益の確保に向けてー」(令和5年策定)
 これまで、経済産業省は、公正なM&A市場における市場機能の健全な発展により、経済社会にとって望ましい買収が生じやすくなることを目指し、MBO(経営者による買収)や買収防衛策等について、その在り方やベストプラクティスを整理する指針及び報告書を策定してきました。
 他方、M&Aを巡る日本企業及び資本市場を取り巻く環境に様々な変化が生じてきた中、上場会社の経営支配権を取得する買収を巡る当事者の行動の在り方を中心に、M&Aに関する公正なルール形成に向けて経済社会において共有されるべき原則論及びベストプラクティスを提示することを目的に、「企業買収における行動指針」を策定しました。
 本指針は、通常の独立第三者間取引を主に念頭に置いた上で、構造的な利益相反のある取引(MBO等)や買収防衛策(本指針では「買収への対応方針・対抗措置」の用語を使用)に関する過去の指針の整理等を踏まえつつ、買収提案の受領時から検討までの一連の対応における当事者の行動規範を包括的に提示しています。 
 
(参考資料)
(関連リンク)  
「公正なM&Aの在り方に関する指針ー企業価値の向上と株主利益の確保に向けてー」(令和元年策定)
 2009年の「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」策定後、判例や議論の蓄積、コーポレートガバナンス改革の進展等の上場企業を取り巻く環境の変化等を踏まえて、見直しについて検討する時期に来ているとの指摘や、支配株主による従属会社の買収等、MBO以外の利益相反構造のあるM&Aについても論点整理を行うべきとの指摘がありました。そこで、本ガイドラインでは、MBOに加えて新たに支配株主による従属会社の買収も対象に追加した上で、企業価値の向上と株主利益の確保の観点から日本において共有されるべき公正なM&Aの在り方として、原則論を含めた考え方の整理と、その考え方に基づいた実務上の対応について取りまとめました。
  (参考資料)
(関連リンク)
「公正なM&Aの在り方に関する指針」の解説(令和2年監修)
 「公正なM&Aの在り方に関する研究会」の委員等によって執筆された論稿や座談会の内容、ガイドライン等をまとめた書籍を刊行しました。

<主要目次>
第1章 解説
 「公正なM&Aの在り方に関する指針─企業価値の向上と株主利益の確保に向けて─」の解説〔越智 晋平〕
公正なM&Aの在り方に関する指針


第2章 M&A指針の意義と実務的対応
 Ⅰ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」の意義〔藤田 友敬〕
 Ⅱ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」の背景とその設計─実証分析結果に基づく考察〔井上 光太郎〕
 Ⅲ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」の意義と実務への影響〔石綿 学・内田 修平〕
 Ⅳ M&A指針を踏まえた上場企業M&A実務の留意点〔武井 一浩・松尾 拓也〕
 Ⅴ M&A指針下における親子上場解消案件の進め方と留意点〔玉井 裕子・西村 修一・濱口 耕輔〕
 Ⅵ 財務アドバイザーからみた「公正なM&Aの在り方に関する指針」のポイント〔角田 慎介〕
 Ⅶ M&A実務の観点からみた「公正なM&Aの在り方に関する指針」〔別所 賢作〕    
 Ⅷ 流通市場に対する取締役会の責任〔三瓶 裕喜〕
 Ⅸ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」について─米国法の観点からの一考察〔ディビッド A. スナイダー〕
 Ⅹ 〔座談会〕公正なM&Aの在り方に関する指針の意義と実務〔神田 秀樹・小口 正範・江良 明嗣・坂本 里和・武井 一浩〕

第3章 資料
 資料1 公正なM&Aの在り方に関する指針
 資料2 海外調査部分〔宇佐神 順・朝山 志乃・森田 一至・ハンセン ネルスクリスチャン〕

 (関連リンク)
「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(平成20年策定)
 2005年に策定された「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」では、株主共同の利益を確保し、向上させる買収防衛策として、(ⅰ)株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買収者間の交渉機会を確保することを目的とする買収防衛策や、(ⅱ)株主共同の利益を毀損することが明白である買収を止めることを目的とする買収防衛策が想定されているところ、経営陣の保身を図ることを目的として買収防衛策が利用されるような事例もあるのではないかといった指摘がありました。そこで、本ガイドラインでは、株主や投資家の理解と納得を得ることができるような合理的な買収防衛策の在り方を示すとともに、そのような合理的な買収防衛策に関して、過去の裁判例との関係について整理しました。
   
「企業価値の向上及び公正な手続き確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(平成19年策定)
 2005 年に制定された「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の策定後、一定の事例蓄積がなされるとともに、証券取引法等の改正や証券取引所における開示充実の要請がなされたこと等を受け、MBOの意義や課題に関する各種論点を整理する必要がありました。そこで、本ガイドラインでは、企業価値研究会における議論を踏まえ、企業価値の向上及び株主利益への配慮のための公正な手続確保を目的とした、MBO に関する公正なルールを整理しました。
 
 (関連リンク)  
「企業価値報告書」(平成17年策定)
 敵対的M&Aに対する適切な対応策を検討するとともに、人材の引抜き防止策のあり方について議論するために2004年から設置されていた「企業価値研究会」が2005年4月に公開した「論点公開~公正な企業社会のルール形成に向けた提案~」に対するパブリックコメントを踏まえ、同研究会において再度議論を行い、必要な修正を加えて公表した報告書です。
   (関連資料)  
「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(平成17年策定)
​ 買収防衛策に関する判例や学説、企業価値研究会の企業価値報告書(本指針の策定日と同日の平成17年5月27日に公表)等を踏まえ、現在考えられている典型的な買収防衛策を念頭に置いて、適法で合理的な買収防衛策の在り方を提示し、買収に関する公正なルールの形成を促すことを目的とした報告書です。
 
 (関連資料)

 

M&Aに関する各種研究会

 国内外で活動する投資家を含むステークホルダーの期待に応え、その理解と信頼を得られる公正なM&A の在り方を明らかにすることは、 M&Aを実行する上での予見可能性を高めるとともに、グローバルな市場間競争の中で日本企業への中長期的な投資を呼び込むことにつながると考えられます。そこで、M&Aに関する諸政策について議論するため、各種の研究会を開催しています。
 
「公正な買収の在り方に関する研究会」(令和4年~令和5年)
 M&Aに関する各種ガイドライン等の策定をこれまで行ってきたものの、M&Aを巡る日本企業及び資本市場を取り巻く環境に様々な変化が生じてきました。例えば、金額ベースでは、近年は国内企業に対するM&Aよりも、海外企業に対するM&Aが積極的に行われている状況にあり、また、当初の買収提案を契機に第三者から対抗提案が提示され、それぞれの評価を巡って見方が分かれるケースが増加するなど、取締役会が検討・対応すべき事項が複雑化してきました。こうした動向を踏まえ、買収を巡る両当事者や資本市場関係者にとっての予見可能性の向上や、ベストプラクティスの提示に向けた検討を行うため、「公正な買収の在り方に関する研究会」を開催しました。

 (関連リンク)  
「公正なM&Aの在り方に関する研究会」(平成30年~令和元年)
 グローバルな環境変化の中、日本企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を果たす上で、M&Aにより大胆な事業再編や経営資源の効率的な活用を進めることは極めて重要です。公正な M&A の在り方を明らかにし、取引関係者の共通認識を形成することは、日本のM&Aの公正・健全な発展につながるととともに、取引に係る予見可能性の向上・不確実性の軽減につながり、経済的意義を有するM&Aの促進や、日本の資本市場に対する信頼の維持・向上にもつながると考えられます。そこで、MBO指針の見直しの要否を含めて、日本の公正なM&Aの在り方について検討を行うため、「公正なM&Aの在り方に関する研究会」を開催しました。

 (関連リンク)  
「企業価値研究会」(平成16年~平成20年)
 1997年の独禁法上の持株会社の解禁以降、会社法の改革や企業組織再編税制の整備が進むとともに、雇用流動化政策が進展したことと受け、大型の産業再編が加速していました。他方、M&Aの自由化や雇用の流動化、さらには株式持合慣行の解消などを背景に、敵対的M&Aの増加がや人材の引抜きに伴う技術流出が懸念されていました。そこで、敵対的M&Aに対する適切な対応策を検討するとともに人材の引抜き防止策のあり方について議論を行うため、「企業価値研究会」を開催しました。

 (関連資料)
 (関連リンク)
 

M&Aに関する各種委託調査について

 産業組織課では、M&Aに関する実態把握や各種政策立案のため、各種委託調査を実施しています。

 
海外のM&A制度等に関する実態調査(令和4年度)
 日本におけるM&Aルールの在り方に関する検討の示唆を得るため、米国・英国・ドイツ・フランスの4か国における上場会社M&A制度(法制度、判例ルール、実務運用等)並びにその市場動向及び主要事例に関する調査を行いました。
   
日本企業における機関投資家のエンゲージメント活動の実態に関する調査(令和元年度)
 日本企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、機関投資家によるエンゲージメント活動を通じ、日本の上場企業におけるイノベーションの創出や機動的な事業ポートフォリオ転換(大胆な事業再編等)が後押しされることが期待されているところ、機関投資家のエンゲージメント活動の実態を把握・分析するため、国内及び海外主要国における具体的なエンゲージメント活動内容等の調査を行いました。
   
M&Aに関する調査(平成30年度)
 諸外国におけるM&Aの制度・実務を参考とすることを目的として、米国・英国・ドイツ・フランスの4か国におけるconflict of interestのあるM&Aに関する法制度・判例ルール・プラクティス等の調査を行いました。
 

最終更新日:2024年10月31日