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ADnewsletter 2022年8月号(諸外国の貿易救済措置発動状況/各国の貿易政策)

CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.各国の貿易政策の状況
3.国内セミナーのお知らせ
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2022年7月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

 2022年7月は、該当する事案はありませんでした。
 
画像が表示できません
 

  補助金相殺関税(CVD)

 2022年7月は、該当する事案はありませんでした。
画像が表示できません
 

  過去の調査及び措置の状況

 過去の主要国の発動状況は、当室のHPで確認することができます。
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/caseinfo/index.html  
 

2.各国の貿易政策の状況

米国で中国に対抗し、サプライチェーンを強化や半導体産業支援策を盛り込んだ「CHIPSプラス法」が成立

 米国における半導体の国内生産を支援する「the CHIPS and Science Act1(CHIPSプラス法)」にバイデン大統領が8月9日に署名2しました。この法に基づく予算は5年間で総額2,800億ドル規模で、そのうち527億ドルが米国内で半導体を生産する企業への支援(半導体インセンティブ制度CHIPS3)に用いられます。

 半導体業界向けのCHIPSに関する527億ドルの予算の主な内訳4は次のとおりになります。
1. 半導体製造施設への助成(390億ドル):半導体の設計・製造・試験・研究開発のための国内施設や工場の新設・増設または最新化に対する資金支援。

2. 半導体研究開発への助成(132億ドル):半導体関連の研究開発プログラム、人材開発への資金支援。

3. その他の助成(5億ドル):国際情報通信技術セキュリティおよび国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの資金支援。

 上記の助成金を受ける企業は、その日から10年間、中国を含む懸念国に対して特定の半導体製造を新規で行うための投資を禁止するとCHIPS法は規定しています。

 また、上記のほか、半導体および関連装置の製造に関する設備投資に対して25%の投資税額控除の実施や、米国の競争力を高めるために、AIや量子コンピュータ、通信技術などの科学研究促進向けに10年間で約2000億ドルを支援する措置も含まれます。


8月25日、バイデン大統領は、CHIPSプラス法を実施に移すための大統領令に署名しました5。本大統領令の主な内容は以下のとおりです。
●CHIPS法の効果的な実施のための調整をおこなう省庁横断の実施運営委員会の設置

●CHIPS法の6つの優先順位の設定
 1. 納税者の資金保護:納税者の資金が保護され、賢明に使われることを確実にするために、厳格なコンプライアンスと説明責任の要件とともに、申請書の厳格な審査を行う。

 2. 経済安全保障のニーズへの対応:過度に集中した海外生産への米国の依存を低減し、米国の生産性と競争力を高める生産能力を構築することにより、経済および国家安全保障上のリスクに対応する。
 
3. 米国の長期的なリーダシップの確保:半導体研究とイノベーションのためのダイナミックで協力的なネットワークを確立し、将来の産業における米国の長期的なリーダーシップを可能にする。
 
4. 地域の製造・技術革新クラスターの強化・拡大:多くの企業に利益をもたらす半導体製造とイノベーションのクラスターの拡大、創造、調整を促進する。
 
5. 民間部門の投資の活性化:CHIPSプログラムにおける政府の役割は、生産、画期的な技術、労働者に対する大規模な民間投資を最大化するための財政的インセンティブを転換することである。
 
6. 広範なステークホルダーへの利益供与:新興企業、労働者、マイノリティや退役軍人、女性が経営する企業や地方企業を含む社会的・経済的に不利な企業、大学、カレッジ、州や地域の経済に対して利益を創出する。

同日、米商務省はCHIPS.govを開設しました6。CHIPS.govは、CHIPSプラス法の実施に関連するすべての情報の中心的なリソースとなり、米商務省の優先事項、資金調達機会、スケジュール、要件などに関する情報が入手可能になり次第、提供される予定です。
   

 

1.https://www.congress.gov/bill/117th-congress/house-bill/4346?q=%7B%22search%22%3A%5B%22hr4346%22%2C%22hr4346%22%5D%7D&s=1&r=1
2.
https://www.state.gov/the-passage-of-the-chips-and-science-act-of-2022/
3.Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductorsの略称
4.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/08/09/fact-sheet-chips-and-science-act-will-lower-costs-create-jobs-strengthen-supply-chains-and-counter-china/
5.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2022/08/25/executive-order-on-the-implementation-of-the-chips-act-of-2022/
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/08/25/fact-sheet-president-biden-signs-executive-order-to-implement-the-chips-and-science-act-of-2022/
6.https://www.nist.gov/chips


 

韓国貿易委員会が中国産とベトナム産シームレス銅管に対するAD税賦課を最終判定

 韓国 産業通商資源部貿易委員会は、2022年3月に中国産とベトナム産シームレス銅管7に対し、アンチダンピング(AD)調査の予備判定をしていました。当該判定を受け、供給企業別のダンピングマージン率が設定されていた企業のうち、中国の3社とベトナムの1社からは、輸出価格を引き上げて輸出するとの価格約束の提案8を受けていました。

 8月22日、韓国 産業通商資源部貿易委員会は、中国産とベトナム産シームレス銅管に対し、国内産業への損害があるとの最終判定9を下し、今後5年間で9.98%~18.12%のAD税の賦課を企画財政部長官に建議しました。それと同時に、輸出価格を引き上げて輸出するとの価格約束の提案をしていた中国の3社とベトナムの1社については、産業保護や価格安定を考慮し総合的に判断した結果、提案の受け入れについて併せて建議を行うこととなりました。企画財務部長官は最終的なAD課税の可否を本年10月28日までに決定することになります。

 韓国政府がこれら輸出者の価格引き上げ提案を最終的に受け入れれば、これらの4社はAD税を賦課されず自発的に提案した価格でシームレス銅管を韓国に輸出が可能となります。 なお、今後、上記4社が輸出価格を引き上げて輸出するとの価格約束に違反した場合は、個別にAD税が即時賦課されることになります。

 

 

7.精製した銅で作ったコイル形態の管。耐食性と熱伝導率に優れ、主にエアコンや冷蔵庫などの家電製品や、工業用熱交換機、冷暖房と空調システムなどに使われる。2020年基準で韓国の市場規模は約3000億ウォン
8.輸出者が自発的に輸出価格を引き上げることにより、ダンピングによる国内産業への被害を回避する制度(AD協定第8条)
9.http://www.motie.go.kr/motie/ne/presse/press2/bbs/bbsView.do?bbs_seq_n=165927&bbs_cd_n=81¤tPage=11&search_key_n=title_v&cate_n=1&dept_v=&search_val_v=

 

ベトナムが、マレーシア、タイ、中国産の一部の溶接材料(ステンレス鋼溶接棒および溶接ワイヤ)製品についてAD課税を決定

 2022年8月15日、ベトナム商工省はマレーシア、タイ、中国産の一部の溶接材料製品にAD税を適用する決定10をしました。3カ国に適用されるAD税は0%から36.56%です。

 ベトナムは、2021年3月から本件の調査を開始していましたが、調査の結果、マレーシア、タイ、中国からの調査対象品の輸入量が国内産業の総消費量及び総生産量に対して、絶対的・相対的に増加したことを認める最終調査結果を発表しました。
なお、溶接材料分野はベトナム政府の政策として、製造が奨励・優先されている産業分野であり、現在、ステンレス鋼溶接棒および溶接ワイヤ製品のベトナムでの国内生産能力は、国内需要を満たしています。

一方で、ベトナム商工省は、AD措置の対象となる当該輸入品について、AD措置の適用を免除するケース11もあるとしています。具体的には、国産品と区別される特性を有する製品で国産品に代替できない製品や、直接的に競合する製品でも国産品では供給不足の製品等を輸出をする企業に対しては、AD措置の適用免除申請の提出を検討するよう通知しています。

 

 

10.http://www.trav.gov.vn/default.aspx?page=news&do=detail&category_id=91b07cf1-3658-4f39-b688-73b9e8ff8a05&id=e5519d92-e5a3-42e5-94d1-3f0f78f5630b
11.http://www.trav.gov.vn/default.aspx?page=news&do=detail&category_id=91b07cf1-3658-4f39-b688-73b9e8ff8a05&id=abb190ca-5248-4cbe-867a-5cdb7feac3b3

 
 

3.国内セミナーのお知らせ

 
令和4年度 貿易救済セミナー
~ 会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ ~ のご案内



 7月号ADNL、臨時号ADNLでもご案内しております、『令和4年度 貿易救済セミナー~ 会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ ~』を、9月1日(木)14時~16時にオンラインにて開催いたします。

 経済産業省特殊関税等調査室では、貿易救済措置に係る普及啓発を目的とし、今年度は、申請に向けて有用な情報を提供することに力を入れ、皆様にとって価値のある情報をお届けする予定です。

 本年度は、アンチダンピング措置の制度を実際に利用した企業として、大八化学工業株式会社とAGC株式会社の2社のご担当者にセミナーへご登壇いただきます。

 
 

◇大八化学工業株式会社

「可塑剤・難燃剤」を主とする有機化学製品の製造・販売を行っている企業。
AD申請について当初は知識やノウハウがなく専門部署もない状況から、単独でAD申請を成し遂げた話を伺います。
 

◇AGC株式会社

「ガラス・電子・化学品・セラミックス等」の幅広い事業領域において、独自の素材・ソリューションを提供しているグローバル企業。
業界団体であるカリ電解工業会に加盟する一社として申請のための準備を行い、業界団体としてカリ製品のAD申請を成し遂げた話を伺います。
 

より多くの皆様にご参加いただき、貴社における経営戦略の一つとして、貿易救済措置制度の活用をご検討いただく契機としていただければ幸いです。参加申し込み中ですので皆様お誘いあわせの上、ぜひご参加ください!

 

 概要

■開催日時
9 月 1 日(木)14:00~16:00

■開催方法
オンライン(WEB)

■プログラム
①経済産業省からAD・CVD措置の概要説明
・貿易救済措置(アンチダンピング(AD)措置や補助金相殺関税(CVD)措置)の概要と効果の解説

②モニタリングシステムの紹介
・特殊関税等調査室の各種モニタリングシステムの効果的な使い方紹介、分野別モニタリングシステムの紹介

③AD申請者による経験共有
・申請経験者から、アンチダンピング(AD)措置申請に至るまでの経緯、申請に当たっての留意点、課税後の状況等を紹介
・質疑応答

④申請の仕方について
・ADモデル申請書、CVDガイダンスについて紹介

■セミナー詳細
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/seminar/20220901_seminar.html

■参加申込
https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/tokusyukanzei01/tr2022

■参加料
無料

■問い合わせ先
qqfcbk@meti.go.jp (経済産業省 特殊関税等調査室)

 
 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 
<相談窓口>

 経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2023年12月8日