CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.日本の貿易政策の状況
①不当廉売関税に係る迂回防止制度の検討
3.各国の貿易政策の状況
①米国が貿易救済措置の執行を強化する規則改正を実施
②中国によるブランデーへの暫定的なアンチダンピング関税の賦課に対し、EUが二国
 間協議を要請
③WTOの年次報告書において、貿易救済措置の調査開始の増加が示される
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2024年10月~12月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

2024年10月~12月は、以下の調査が開始されました。

 


補助金相殺関税(CVD)

2024年10月~12月は、以下の調査が開始されました。

 

2.日本の貿易政策の状況

①不当廉売関税に係る迂回防止制度の検討

 わが国における関税率及び関税制度の改正について審議を行う「関税・外国為替等審議会 関税分科会」が2024年12月16日に開催され、令和7年度における関税率及び関税制度の改正等に関する答申案が公表1 されました。当該答申案のなかで「不当廉売関税に係る迂回防止制度」が、引き続き検討すべき事項として盛り込まれています。
 具体的には、不当廉売関税に係る迂回防止制度の創設については、不当廉売関税制度の実効性を高める意義が認められることから、早期に実現する必要がある。他方、制度設計に当たっては、制度創設の必要性・期待される効果等や制度設計の妥当性・合理性及びWTO協定整合性の確保をはじめとする事項の精査・検討を十分に行い、有識者や関係者等の意見も踏まえ、実効性のある制度を創設することが重要である。こうしたことを踏まえ、早期の制度創設を念頭に、引き続き精査・検討を継続することが適当であるとしています。
 なお、上記の不当廉売関税に係る迂回防止制度の検討に関しては、2024年12月20日付で「令和7年度における関税率及び関税制度の改正等についての答申」として公表2されています。

1. https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/proceedings_customs/material/kana20241216.html 
2. https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/report/20241216_toushin.html 
 

3.各国の貿易政策の状況

①米国が貿易救済措置の執行を強化する規則改正を実施

 米国商務省国際貿易局は、1930年関税法に基づき、アンチダンピング関税及び相殺関税措置(AD/CVD) の執行を強化するための最終的な規則を公表 3しました。当該改正は、2024年7月12日に米国商務省が官報で公表した規則案 4に対して寄せられた国内生産者、輸入業者、外国政府を含む利害関係者からの意見を評価し、最終的な改正規則に反映させたものとなっています。
 改正規則は、貿易救済措置の執行面に関する既存の措置や運用の明確化などを含む30箇所に及ぶ全般的な改正となっており、商務省国際貿易局は2024年12月19日のプレスリリース 5において、以下の項目を含めた規則の改正を行うように、外国企業や政府による不公正な貿易慣行に適切に対処し、米国の産業と労働者の公正な戦争条件を維持することができるとしています。
   当該改正は2024年12月16日に公表され、2025年1月15日に発効しています。加えて、貿易救済措置に関する規則の付属書の改正(貿易救済措置に関する調査のスケジュール及び利害関係者に課される期限)についても公表6しています。

3. https://www.federalregister.gov/documents/2024/12/16/2024-29245/regulations-enhancing-the-administration-of-the-antidumping-and-countervailing-duty-trade-remedy
4. AD Newsletter 2024年7月号参照 https://www.federalregister.gov/documents/2024/07/12/2024-15086/regulations-enhancing-the-administration-of-the-antidumping-and-countervailing-duty-trade-remedy
5. https://www.trade.gov/press-release/us-department-commerce-updates-trade-enforcement-regulations-level-playing-field-us-0
 6. https://www.federalregister.gov/documents/2024/12/19/2024-30257/modernizing-the-annexes-of-the-antidumping-and-countervailing-duty-trade-remedy-regulations
 

②中国によるブランデーへの暫定的なアンチダンピング関税の賦課に対し、EUが二国間協議を要請

 EUは、中国によるブランデーへの暫定的なアンチダンピング関税の賦課が「1994年の関税及び貿易に関する一般協定(1994年GATT)」及び「アンチダンピング協定」に違反するとして、WTOに二国間協議を要請しました78
 中国は、2024年11月に暫定的なアンチダンピング関税の措置を発動しており9、EU側は、当該措置はEUが実施した中国産電気自動車に対する補助金相殺関税に関連して行われた報復的なものであることを懸念しているとしています。また、EUは要請文書のなかで、特に、アンチダンピング関税の調査開始、国内産業の損害及び因果関係の認定において協定との不整合があるとして、協議を行うとしています。
 要請に従って正式に協議が開始された場合、紛争当事国は相互に満足のいく解決に向かって努力することとなっています。しかし、一定期間内(通常、協議要請を受けた日から60日以内)にこの協議によって紛争が解決できなかった場合、申立国はパネル(小委員会)に紛争を付託することができます10

7. https://www.wto.org/english/news_e/news24_e/ds631rfc_27nov24_e.htm
8. https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/FE_Search/FE_S_S009-DP.aspx?language=E&CatalogueIdList=311298&CurrentCatalogueIdIndex=0&FullTextHash=&HasEnglishRecord=True&HasFrenchRecord=True&HasSpanishRecord=True
9. https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/gpmy/art/2024/art_3ac262493e0147299c54c25f5390c9c8.html
10. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/funso/seido.html
 

③WTOの年次報告書において、貿易救済措置の調査開始の増加が示される

 2024年12月11日に公表11されたWTO事務局長による年次報告書12によると、WTO加盟国による貿易救済措置を含む措置が、前回の調査と比較して大幅に拡大していることが示され、内向きで一方的な貿易政策の増加が世界経済にさらなる不確実性をもたらすことを懸念しているとしています。
 報告書によると、今期の調査期間における加盟国による貿易救済措置の調査開始件数の月平均は28.2件で、前期の16.7件から増加しています。このことは、2021年以降にみられた貿易救済措置に関する調査開始件数の減速が終わったことを示すものとなっています。また、この期間において終了した貿易救済措置の月平均は9.3件で、2015年以降で最も低い記録となりました。
 貿易救済措置、特にアンチダンピング関税措置は、ほとんどのWTO加盟国にとって引き続き中心的な貿易政策であることが示され、物品に対する貿易措置の49.5%を占めています。

11. https://www.wto.org/english/news_e/news24_e/trdev_11dec24_e.htm
12. https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?filename=q:/WT/TPR/OV27.pdf&Open=True

 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。
  申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 また、「日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合」の御相談は、経済産業省国際経済紛争対策室まで御連絡ください。
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピングの申請を検討している場合>
 経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-1511(内線3256)
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合、日弁連セミナー>
 経済産業省 通商政策局 国際経済部 国際経済紛争対策室 
TEL:03-3501-1511(内線 3056)
E-mail:bzl-wto-soudan@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2025年1月29日