CONTENTS
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.各国の貿易政策の状況
3.相談窓口
4.FAQ
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2022年4月から5月にかけての、諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。施状況詳細
アンチダンピング(AD)
2022年4月から5月までの二か月では、EU、オーストラリアがアンチダンピング措置の調査を開始しました。いずれも調査対象国は中国でした。 補助金相殺関税(CVD)
2022年4月から5月までの二か月では、EUが補助金相殺関税措置の調査を開始しました。調査対象国はインドネシアでした。過去の調査及び措置の状況
過去の主要国の発動状況は、当室のHPで確認することができます。https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/caseinfo/index.html
2.各国の貿易政策の状況
米国が対中関税の「再構成」を検討へ
6月に入って、米国政府高官から対中関税の見直しに関する発言が相次いでいます。米国では、外国企業に対する技術移転の強要や米国の知的財産の窃取を理由に、米通商法301条に基づき、中国に対して制裁関税を課してきました1。
バイデン大統領は2022年5月25日の日米首脳会談後の共同記者会見で、対中関税の見直しについては「対応を検討」としていると述べました 2。2022年6月5日、レモンド米商務長官は、約40年ぶりの高いインフレを抑える方法として、中国からの輸入品について、自転車や日用品などの一部の財に対する関税を撤廃することは「理にかなうかもしれない」と発言しています。一方で、米国の鉄鋼産業を守るため、鉄鋼やアルミニウムについての一部は、関税を維持するとしています3。さらに、2022年6月19日には、イエレン米財務長官が、「我々が引き継いだ関税の中には、戦略的な目的に適わず、消費者のコストを引き上げているものがある。そのため、関税の一部を再構成して、より意味のあるものにし、不必要な負担を減らすことが検討されている」と述べています4。
一方で、タイUSTR代表は、6月22日、中国製品に対する関税は米中貿易関係における「重要なレバレッジの役割」があり、関税を撤廃しても短期的なインフレ抑制効果は限定的である旨述べています5。
ホワイトハウス内でも関税撤廃に対する意見がわれており、関税撤廃の規模や対象となる品目について今後注目されます。
1.https://ustr.gov/issue-areas/enforcement/section-301-investigations/section-301-china
2.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2022/05/23/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-fumio-kishida-of-japan-in-joint-press-conference/
3.CNN “The State of the Union”, https://www.youtube.com/watch?v=fEqVT3R7jh4
4.ABC News, https://abcnews.go.com/Politics/recession-inevitable-inflation-remains-unacceptably-high-janet-yellen/story?id=85482728
5.https://www.appropriations.senate.gov/hearings/a-review-of-the-activities-and-fiscal-year-2023-funding-request-of-the-office-of-the-us-trade-representative
米国における太陽光発電関連製品に対するAD/CVD課税の迂回課税の保留について
米商務省では、2022年3月から、中国の太陽光発電製品6について、関税を回避するために、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムを経て米国に輸出される、いわゆる迂回輸出が行われていないか、調査を行なっています。米国で設置される太陽電池モジュールの大半は輸入品であり、2020年には東南アジアからの輸入品が約4分の3を占めるようになっています。 しかし最近、米国は、気候変動やクリーンエネルギーの目標達成、電力網の資源確保、エネルギー価格上昇への対応に必要な太陽電池容量の増加を確保するために、十分な量の太陽光発電製品を確保できず、太陽光発電関連事業の多くが、キャンセルもしくは延期に直面しているとされています7。一方で、昨今のロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、米国のエネルギー市場へのインフレ圧力が急速に高まっています。加えて、気候変動対策も求められている中でエネルギー供給源の多様化を進める必要があり、太陽光エネルギーの活用は重要な要素となってきています。
これを受けて、バイデン大統領は2022年6月6日、太陽光発電関連製品(太陽電池とモジュール)の供給不足に関して緊急事態を宣言し、国内におけるクリーンエネルギー関連の製造力強化のための施策8をまとめました。その一環として、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4か国からの太陽光発電関連製品輸入に対して、最長24か月間(または緊急事態が終了すると宣言されるまで)、関税免除などの措置を講ずるよう商務長官に指示する大統領布告9を発表しました。
米商務省は、今回の措置に関して、「迂回調査は中断されることなく継続され、調査が終了した時点で商務省が下した結論は、この緊急事態の期間が終了した後も適用される。大統領の宣言に従い、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムから輸入される太陽電池セルやモジュールには、緊急事態の期間中、新たなアンチダンピング関税や相殺関税が課されることはない」と説明しており10、迂回輸入が見つかった場合も、アンチダンピング(AD)及びおよび相殺関税(CVD)は最長24ヶ月(または緊急事態が終了すると宣言されるまで)課されないことになっています。
6.米国では現在、中国からの太陽光発電関連製品の輸入にアンチダンピング(AD)および補助金相殺関税(CVD)を発動中である。
7.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/06/06/declaration-of-emergency-and-authorization-for-temporary-extensions-of-time-and-duty-free-importation-of-solar-cells-and-modules-from-southeast-asia/
8.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/06/06/fact-sheet-president-biden-takes-bold-executive-action-to-spur-domestic-clean-energy-manufacturing/
9.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/06/06/declaration-of-emergency-and-authorization-for-temporary-extensions-of-time-and-duty-free-importation-of-solar-cells-and-modules-from-southeast-asia/
10.https://www.commerce.gov/news/press-releases/2022/06/department-commerce-statement-president-bidens-proclamation-solar-cells
3.相談窓口
経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
4.FAQ
最終更新日:2023年12月8日