CONTENTS
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.各国の貿易政策の状況
①EUが貿易救済措置に関する2023年の年次報告書を公表
②欧州鉄鋼連盟が欧州鉄鋼行動計画を公表
③韓国が迂回防止制度の本格導入に向け、企業からの意見を収集
④WTOが貿易監視報告書を公表
⑤WTOでAD委員会 会合 開催 ―2024年1月~6月期―
3.相談窓口
4.FAQ
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2024年9月~10月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。実施状況詳細
アンチダンピング(AD)
2024年9月~10月は、以下の調査が開始されました。
補助金相殺関税(CVD)
2024年9月~10月は、以下の調査が開始されました。
2.各国の貿易政策の状況
①EUが貿易救済措置に関する2023年の年次報告書を公表
欧州委員会は、2024年9月24日、EUにおける貿易救済措置の2023年版年次報告書を公表しました1 。報告書において、EUでは2023年末時点で182件の貿易救済措置が発動されており、そのうちAD措置は156件、CVD措置は25件、SG措置は1件でした。これらの措置を通じてEUにおける約50万人以上の直接雇用が保護されたと分析しています。 報告書では、これらの貿易救済措置の有効性は、効果的かつ適切な執行にかかっているため、引き続き、関税を回避しようとする輸出業者に対する監視と措置を優先するとし、現在発動中の措置の5分の1以上が迂回行為への対処に取り組んでいることは、この問題に対する欧州委員会の強固な対応を示すものとしています。
また、中小企業を重要な経済グループと位置づけ、どのように貿易救済措置をナビゲートし、支援するかに関して焦点を当てています。過去数年間において、COVID、ウクライナに対する軍事攻撃、エネルギー危機、インフレの上昇など、一連の危機の影響を大きく受けている中小企業は、依然として不安定性に直面しており、供給制約や労働力不足だけでなく、公平な競争条件を歪める不公正な競争に対しても脆弱であり、欧州委員会は、中小企業が大企業と同様に貿易救済措置にアクセスし、その恩恵を受ける可能性を確保することにコミットすることとしています。
1.https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_4829
②欧州鉄鋼連盟が欧州鉄鋼行動計画を公表
欧州鉄鋼連盟はウェブサイト2において欧州鉄鋼行動計画(EU Steel Action Plan)を公表し、中国からの生産コストを下回る価格による輸出が鉄鋼の価格を著しく押し下げ、さらに、これらの輸出により、他の地域が鉄鋼をEU市場に転用することを余儀なくされており、こうした世界的な鉄鋼過剰生産能力が欧州の鉄鋼産業の持続可能性に対する脅威をもたらしていることを表明しました。 また、鉄鋼製品に対して通商拡大法第232条の関税を導入した米国を含む、多くの国において、国内市場を鉄鋼輸入から保護しており、これらのWTOルールにそぐわない関税措置が、EUの生産者に大きな影響を与え続けているとしています。
さらに、欧州委員会及び加盟国に対し、以下の貿易救済措置の強化を含む、産業の強靭性を確保するための貿易政策を求めています。
- 不公正な貿易慣行及び迂回を早急に阻止するため、EUの貿易防衛手段(アンチダンピング、補助金相殺関税、セーフガード)を迅速に強化するとともに、積極的な執行を確保する
- 2026年に期限切れとなる現行の鉄鋼セーフガード措置を、より強固な関税措置及びWTOルールを考慮した措置に置き換え、持続的に悪化を続ける世界的な過剰生産能力の波及効果を包括的に阻止するための構造的な解決策を採用する
- CBAMに沿って、WTOルールに完全に準拠した持続可能な鉄鋼に関する国際協定を締結する
③韓国が迂回防止制度の本格導入に向け、企業からの意見を収集
産業通商資源部貿易委員会は、2024年10月15日、韓国貿易協会において「迂回ダンピング防止に関する告示及び調査申請に関する意見収集のための公開会議」を開催しました。
報道発表資料3によると、会議では、迂回防止調査の申請適格性、調査申請の受領通知、調査対象物品の範囲に関する利害関係者による意見の提出、調査対象供給者による調査参加申請書の提出など、迂回ダンピング防止制度の運用内容が盛り込まれた告示改正案が紹介されたとしています。
また、米国、EU、オーストラリア、インドなどの海外事例を参考にしながら、迅速な調査のため、既存のアンチダンピング調査申請よりも簡略化した申請書の草案を公開し、企業、団体、代理人からの意見を集約しています。
貿易委員会のイ・ジェヒョン委員長は、アンチダンピング関税の有効性を向上させるためには、迂回防止措置の迅速な実施の必要性を強調し、制度が滞りなく実施できるよう、企業などの関係者との継続的な意見交換を通じて、年内に告示の改正を完了するよう努力すると述べています。
④WTOが貿易監視報告書を公表
2024年11月13日に公表4されたG20貿易措置に関するWTO貿易監視報告書5によると、G20諸国が導入したAD等の貿易救済措置を含む貿易制限措置は、過去1年間で大幅に拡大し、内向きで一方的な貿易政策が増えていることを指摘しています。
報告書によると、対象期間におけるG20による貿易救済措置の調査開始件数の月平均は25.4件で、2020年に記録した最高値である28.6件に近づいています。これは、2021年から2023年にかけてみられた貿易救済措置に関する調査開始件数の減速が終わったことを示しています。また、この期間において終了した貿易救済措置の月平均は7.5件で、2015年以降で最も低い記録となりました。貿易救済措置、特にAD措置は、ほとんどのG20諸国にとって引き続き中心的な貿易政策であることが示され、報告書に記録された物品に対する貿易措置の63%を占めています。
4. https://www.wto.org/english/news_e/news24_e/trdev_13nov24_e.htm
5. https://www.wto.org/english/news_e/news24_e/trdev_13nov24_wto_report_e.pdf
⑤WTOでAD委員会 会合 開催 ―2024年1月~6月期―
WTOのAD委員会が2024年10月30日に開催されました6。AD委員会は半年に一度開催され、新規、改正または再検討が行われた法令及び規制に関する加盟国からの最新の通知と、AD措置に関する報告について議論されます。
会合では、2024年1月1日から6月30日までの期間を対象とする半期報告に関して、45の加盟国がこの期間に実施したAD措置を委員会に報告し、15の加盟国は同期間に新たなAD措置は実施されなかったことを報告しました。さらに、51の加盟国は調査を実施する権限のある当局を設置しておらず、現在までAD措置を講じていない旨の報告を行いました。ウクライナは半期報告書の中で、ウクライナでの戦争と国内産業への影響に懸念を表明しました。
今回のAD委員会で、カナダは加盟国に対し、タイムリーな通知を提出することを推奨し、十分な証拠や正当性に基づかない政治的動機に基づく調査の実施について懸念を表明しました。暫定議長は、半期報告書及び措置に関する臨時報告書を提出していない加盟国に対し、速やかに提出するよう促すとともに、加盟国が半期報告書を提出するにあたって貿易救済措置ポータル7を引き続き広範に利用していることを歓迎しました。
2025年のAD委員会は、春と秋に予定される会合を、それぞれ2025年4月28日の週と10月27日の週に開催することを決定しています。
3.相談窓口
経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
また、「日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合」の御相談は、経済産業省国際経済紛争対策室まで御連絡ください。
経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 特殊関税等調査室
TEL:03-3501-1511(内線3256)
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
経済産業省 通商政策局 国際経済部 国際経済紛争対策室
TEL:03-3501-1511(内線 3056)
E-mail:bzl-wto-soudan@meti.go.jp
4.FAQ
最終更新日:2024年11月27日