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中国による日本製ステンレス製品に対するアンチ・ダンピング措置がWTO協定違反と判断されました
~WTO紛争処理小委員会最終報告書が公表されました~
2023年6月19日
同時発表:外務省
同報告書は日本の主張を認め、中国に対し措置の是正を勧告しました。日本は、中国に対し、引き続き措置の撤廃を求めていきます。
1.概要
中国が日本製ステンレス製品に賦課しているアンチ・ダンピング措置については、日本の要請(2021年8月)により、世界貿易機関(WTO)において紛争処理小委員会(パネル・第1審)が設置され(同年9月)、その後パネルでの審理が行われていましたが、今般、パネル最終報告書が公表されました。
中国は、日本、韓国、インドネシア及びEUから輸入されるステンレス製品のダンピングによって中国の国内産業が損害を受けていると主張し、2019年7月から5年間の予定でアンチ・ダンピング(AD)税を賦課しています(以下、「本AD措置」という。)。
日本は、本AD措置は、中国の調査当局の認定や調査手続に瑕疵があり、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)及びアンチ・ダンピング協定(1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定)に違反すると考え、一貫して措置の撤廃を求めてきました。
パネル会合(口頭弁論、2022年6月及び10月に実施)での議論等を踏まえ、本日6月19日付けで公表されたパネル最終報告書は、本AD措置は、損害・因果関係の認定や手続の透明性に問題があり、アンチ・ダンピング協定に整合しないとし、中国に対し本AD措置の是正を勧告しました。
2.パネル報告書の判断内容
パネル報告書においては、以下(1)から(6)のとおり、本AD措置はアンチ・ダンピング協定に違反すると認定され、中国に対して措置をアンチ・ダンピング協定に適合させるよう勧告しました。
- 中国による本AD措置の決定は、対象輸出による中国国内製品の価格に与える影響(価格効果)の認定が不適切で、アンチ・ダンピング協定第3.1条及び第3.2条に整合しない。
(ア) 価格効果を認定する前提として、対象輸入品と国内産品が競合・代替関係にあるか(価格の比較に意味があるか)を確認すべき義務があるにもかかわらず、これを怠った。(イ) 対象輸入品(ステンレススラブ、ステンレス熱延コイル、ステンレス熱延鋼板)は、価格帯、形状、用途、顧客等に違いがあるにもかかわらず、これらの要素について適切に分析しなかった。(ウ) 対象輸入品は化学成分に基づく製品区分(成分系統)も多様であるところ、成分系統ごとの分析も適切とはいえない。(エ) 以上より、「ダンピングにより中国の同種産品の国内価格が押し下げられた」という認定全体が客観的な分析に基づくものではない。
- 中国は、国内産業へのダンピングの影響の検討において、対象輸入品及び国内産品の販売価格・市場シェア、国内産業の設備稼働率・在庫、等の要素を十分に分析せず、アンチ・ダンピング協定第3.1条・3.4条に整合しない。
- 中国は、一部の対象輸入品の原料となるニッケル価格の調査期間中の変動の影響を考慮しない等、ダンピングと国内産業の損害との因果関係について、適切に確認しておらず、アンチ・ダンピング協定第3.1条・3.5条に整合しない。
- 中国は、国内業者の生産高を確認する際、その検証を十分に行わずに特殊な計算法を採用したため、国内産業を適切に定義できておらず、アンチ・ダンピング協定第4.1条に整合しない。
- 本件措置は、手続面でも、情報開示に不備があり、アンチ・ダンピング協定第6.9条に整合しない。
- 他方、以下の日本の主張については、認められないか、「紛争解決上判断する必要がない」という理由で判断されなかった。
-
(ア) 中国が各国からの対象輸入の影響を一括評価(累積評価)したことが関連条文に規律される要件を充足しない(アンチ・ダンピング協定第3.1条・3.3条)(イ) 中国による秘密情報の取り扱いが不適切(アンチ・ダンピング協定第6.5条、6.5.1条)(ウ) 中国による最終決定公告の内容が不十分(アンチ・ダンピング協定第12.2条、12.2.2条)
3.今後の予定
本パネル報告書は、60日以内に開催されるWTO紛争解決機関(DSB)会合で採択される見込みです。採択されれば中国は、パネル勧告に沿って措置を是正する義務を負います。
日本としては、本件がWTOのルールに従って適切に解決されるよう、今後の手続を進めていく予定です。
4.参考
(参考1)WTO協定に基づく紛争解決手続
政府間の協議によって問題解決に至らない場合、パネル(第1審)という準司法的な第三者機関が、WTO加盟国の要請により、問題となっている措置のWTO協定整合性について審理・判断し、違反が認められる場合にはその是正を勧告します。パネルに不服のある当事国は、上級委員会(第2審)に上訴することができます。ただし、上級委員会は現在機能停止中であるため、その機能を暫定的に代替すべく、 MPIA(多国間暫定上訴仲裁アレンジメント)と呼ばれる仲裁手続が2020年4月に発効し、日本は本年3月に参加しました(日本、中国を含む53カ国・地域が参加)。MPIA参加国は、パネル判断を不服とする場合にも機能停止中の上級委員会に「空上訴」せず、MPIAに基づく仲裁手続(DSU25条に基づく合意による仲裁の一種)による解決をはかる旨合意しています。(参考2)ステンレス製品とは(対象製品)
(参考3)アンチ・ダンピング措置とは
(参考4)本件対象製品の対中国輸出額について
(参考5)関連資料
(参考6)過去のニュースリリース
本件措置について
MPIAについて
担当
WTO紛争処理全般について
WTO紛争処理全般について
通商政策局 通商機構部
国際経済紛争対策室長 寺西
担当者:西村、平澤、立和田
電話:03-3501-1511(内線3056)
メール:bzl-s-kikobu-kokusaifunso★meti.go.jp
※ [★]を[@]に置き換えてください。ステンレス産業について
製造産業局 金属課長 松野
担当者:高橋、浅野
電話:03-3501-1511(内線 3661)
メール:bzl-s-seizo-kinzoku★meti.go.jp
※ [★]を[@]に置き換えてください。
日中経済関係について
通商政策局 北東アジア課長 大川
担当者:柏原、安部、大橋
電話:03-3501-1511(内線 3016)
メール:bzl-s-tsusei-hokutoasia★meti.go.jp
※ [★]を[@]に置き換えてください。