経済産業省
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第2節 地域ごとの進捗と今後の方針

 次に、上記の新興国グループ別に戦略の進捗状況と今後の方針について示す。

1.第1グループ「中国・ASEAN」

〈進捗状況〉

 まず、既進出分野において更に競争力を強化するための施策が講じられた。例えば、ミャンマーにおいては、「ティラワ経済特区開発」について、開発を狙う日ミャンマー共同事業体を2013年10月に設立、同年11月には起工式典を開催した。2015年の開業にむけ、周辺インフラ整備、ワンストップ・サービス構築支援に官民一体で取り組んでいる。また、インドネシアでは、インフラ整備を含む投資環境改善を図るMPA(ジャカルタ首都圏投資促進特別地域)構想を両国官民で進めてきた。2014年10月の新政権発足後、2015年3月に開催された首脳会談において、官民による新たな閣僚級対話の枠組みの下で、ビジネス・投資環境整備やインフラ整備、経済産業協力等を両国間で進めて行くことで一致した。更に、中国においては、2014年11月に約2年半ぶりとなる日中首脳会談が北京で行われ、これに先駆けて行われた宮沢経済産業大臣及び高虎城商務部長との会談において、双方向での貿易投資の拡大、そのための様々なチャネルでの交流強化等を進めることで認識が一致した。

 こうした成果も踏まえ、12月には北京にて高木経済産業副大臣、解振華国家発展改革委員会副主任及び高燕商務部副部長が参加した上で、「第8回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が2年ぶりに開催され、省エネ・環境分野の両国の協力や投資促進等に資する41件の協力案件に対する合意や、6つの分科会が行われた。

 また、幅広い産業における市場を獲得するため、ASEAN地域における販売金融の制度整備やクール・ジャパンにおける取組みを強化した。

〈今後の方針〉

 まず、既進出分野に関して、今後さらにインフラ・サプライチェーンをはじめ、競争力強化を図ることが必要である。例えば、インドネシアにおけるビジネス・投資環境整備に向けたインフラ整備や制度の透明性向上、ミャンマーにおけるダウェー経済特別区開発に関する検討、またベトナムにおける重点分野を明らかにした工業化戦略支援の協力といった各国別の取組と、ASEAN全体においてERIAを通じた災害に強いインフラ・サプライチェーンの構築支援が挙げられる。

 また、幅広い産業における市場獲得が必要である。具体的には、ASEANにおける医療、物流、食品分野の開拓、省エネの制度整備による競争環境の整備が挙げられる。

2.第2グループ「南西アジア、中東、ロシア・CIS、中南米」

〈進捗状況〉

 有望分野への本格進出を図るため、各国と政府間文書が作成されたり、官民での経済交流が行われた。インドは、2014年5月に政権交代によりモディ政権が誕生。同年9月にはインド周辺国を除いた初外遊先としてモディ首相が訪日。今後5年以内に日本の対印直接投資とインドに進出する日系企業数を倍増する等、さらなる日印協力強化に資する事項につき合意がなされた。さらに、日本からの投資を促進するために、インド政府内に日本企業専門のインド進出支援組織として「Japan Plus」を設置。経済産業省からも職員を派遣し日本企業のインド進出を支援。2014年3月末時点で120社からの相談に対応している。さらに、州政府との協力について、アンドラプラデシュ州、グジャラート州、カルナタカ州、ラジャスタン州と経済産業省の間で協力に係る覚書を署名した。当該覚書において設置された政策対話等を通じ、インドにおけるさらなる投資環境整備、「日本工業団地」の開発促進に向けて州レベルでの協力も強化していく。

 また、ロシアとは、2014年3月、日露投資フォーラムが東京で開催され、日本側、ロシア側の民間を中心に、過去最高となる1,000人超の参加を得て、「ロシアの投資環境の改善と日露投資協力の新分野の開拓」をテーマとしたパネルディスカッションを実施すると共に、個別分野毎に議論が行われた。

 さらに、カザフスタン共和国とは、2014年8月、茂木経済産業大臣が日本カザフスタン経済委員会を中心とした経済ミッションの同行を得て訪問した際、「日本国経済産業省とカザフスタン共和国投資・発展省の互恵的経済協力関係の更なる発展に向けた共同発表」に署名するとともに、2014年10月に開催された日本カザフスタン経済官民合同協議会において、両国経済関係における新たな発展段階に向けて、投資、ハイテク・イノベーション、環境・エネルギー等の幅広い分野において協力を進めることに合意した。

 さらに、安倍総理は、2014年7月~8月、総理大臣として10年ぶりに中南米を公式訪問し、メキシコでは、ペニャ・ニエト大統領と会談を行い、石油・天然ガス上流開発への日本企業の参画を含むエネルギー関連の協力、原子力協定交渉の推進、インフラ整備及び中小企業・裾野産業支援の推進が確認され、これらを踏まえた共同プレスリリースが発表された。気候変動分野において、これまでの協力を踏まえ、二国間クレジット制度が発足したことを歓迎した。また、温室効果ガス排出削減に向け、高効率石炭火力発電技術を活用することの重要性を確認した。ブラジルでは、ルセーフ大統領と会談において、造船、インフラ整備、石油・天然ガス開発、医療等の分野での両国経済関係の拡大と深化について意見交換を実施し、「日伯戦略的グローバルパートナーシップ構築に関する共同声明」を公表した。

 2014年9月、第2回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会を開催し、安倍総理の訪伯のフォローアップ、ブラジルにおけるビジネス環境の改善及び両国の発展のための産業協力について意見交換を行い、同委員会の継続的な開催が重要であることが確認された。また、前回会合においてブラジル側から要請を受けたスマートコミュニティ分野に係る両国の協力について議論するスマートコミュニティ小委員会を設置することに合意し、第1回小委員会を開催。また、新興国市場開拓等事業費補助金(ロビイング活動支援事業)にて、在ブラジル日本商工会議所に機能強化委員会が設立され、両国経済の繁栄のためのブラジル側への政策提言が纏められた。

 中東諸国との間でも、経済関係の強化に向けて頻繁な往来がなされた。2014年5月には、イスラエル・ネタニヤフ首相が訪日し、産業R&Dに関する関係機関での協力の推進等について一致した。この流れを受け、同年7月には茂木経済産業大臣がイスラエル、パレスチナ及びトルコを訪問し、イスラエルとの間での産業R&D分野での協力に関する覚書の締結や日本・イスラエル・ビジネスフォーラムの開催をはじめとして、各国との経済協力の促進を図った。トルコに対しては、同訪問中に開催した第2回日トルコ貿易・投資閣僚会合や、同年10月のゼイベキチ経済大臣訪日時の小渕経済産業大臣との会談を通じ、インフラプロジェクトへの日本企業の更なる参画に向けた働きかけ等を行った。更に、2015年1月には安倍総理がエジプト、ヨルダン、イスラエル及びパレスチナを訪問し、首脳会談や各覚書の締結等を通じて我が国企業の更なる海外展開を強力に後押しした。

 加えて、エネルギーの安定供給に向けたやりとりも活発に行われた。2014年5月には茂木経済産業大臣がサウジアラビアを訪問し、日本・サウジアラビア・ビジネスフォーラムの開催や主要閣僚との会談を通じて両国の関係強化を確認した。カタールとの間では、同年11月のアル・サダ・エネルギー工業大臣訪日時に開催されたLNG産消会議2014や日・カタール合同経済委員会、更には、2015年2月のタミーム首長訪日時の安倍総理との首脳会談といった場を通じて、我が国への天然ガスの安定供給をはじめとする経済関係の更なる強化に向けた意見交換が行われた。また、同年1月には、宮沢経済産業大臣がUAEを訪問し、教育及び医療分野における関係強化に関する覚書の締結に立ち会うなど、エネルギーの安定供給にとどまらない幅広い協力を進めることで一致した。加えて、クウェートからは2014年10月にサビーフ計画開発担当大臣が、イラクからは2015年1月にガドバーン首相顧問会議議長、3月にアンサーリー地方自治公共事業大臣が相次いで訪日し、インフラプロジェクトへの日本企業の更なる参画に向けた働きかけ等を行う貴重な機会となった。

 2014年7月、チリを公式訪問した安倍総理とバチェレ大統領との間において、鉱業分野における二国間関係強化を含む共同声明が発出されるとともに、総理訪智にあわせ経済産業省とチリ鉱業省の協力覚書の署名や日本企業100%出資のカセロネス銅鉱山の開山式などが行われ、鉱業分野の協力が進展した。

〈今後の方針〉

 有望分野の本格進出については、昨年作成した政府間文書に基づき、各国の重点分野における見本市への出展やミッションの派遣を通じてプレゼンスを強化する。

 さらに、南西アジアにおいては、インドにおける「日本工業団地」開発、アンドラプラデシュ州新州都開発、デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)やチェンナイ・バンガロール産業大動脈(CBIC)の開発等を通じた産業集積、インフラ輸出の推進を強化していく。さらに、日印のIT分野における人材協力を強化し、IoTやビッグデータといった最先端のIT分野における日本企業の競争力を強化していく。さらに、インドは州政府の権限が強いことを踏まえ、日系企業の集積する戦略州との連携を強化していく。さらに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や環インド洋経済圏における連携を通じ、南西アジア地域及び周辺地域の連携強化を推進し、メキシコをはじめとする太平洋同盟加盟国におけるインフラの強化、またデリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)やチェンナイ・バンガロール産業大動脈(CBIC)の開発によるコネクティビティ強化が挙げられる。

 さらに、資源国との関係強化・安定的なエネルギー供給源確保のため、資源国の産業多角化や人材育成に資する日本企業による現地進出・投資を含めた産業協力に加え、教育、医療、文化、食品といった分野での協力関係も深め、重層的関係を構築していく。

3.第3グループ「アフリカ」

〈進捗状況〉

 2013年6月のTICADⅤにおいて表明した、日本がアフリカの「信頼できるビジネスパートナー」として更なる発展貢献していくための施策のうち、今後5年間のアフリカにおけるJETRO事務所の倍増(5か所→10か所)に関しては、モロッコの新規事務所が開設された。

 2014年9月には、JETROを通じて、初の「アフリカ投資誘致機関フォーラム」を開催。本フォーラムには、アフリカ7か国(コートジボワール、エジプト、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカ、タンザニア)の投資誘致機関のトップを招聘し、日本企業向けの投資セミナーや、招聘7か国の投資誘致機関の連携を深めるための会合、並びに日本企業視察等を実施した。

 2015年1月には、NEXIが「アフリカ投融資促進特別保険」を創設。これにより、全アフリカ諸国向けの貿易代金貸付保険、海外事業資金貸付保険及び海外投資保険の非常危険付保率が100%に引き上げられた(通常の付保率は最大97.5%)。今後5年間に内諾または保険契約を締結する案件に適用する方針。

〈今後の方針〉

 一つでも多くの成功事例を創出するための国際見本市への出展支援、投資環境整備を目的とした投資的協定の促進など、官民一体となって市場開拓に取り組む。さらに、治安情勢や危機管理を含めた形でのリスクへの対応として、在外公館との連携をさらに強化し、安全対策に関するセミナーを開催する。

 資源・インフラ関連のプロジェクト獲得のため、2015年5月に開催する第2回日アフリカ資源大臣会合等を通じてアフリカ資源国との更なる関係深化を図る。また、国・分野を絞ったミッション派遣等の施策を集中的に投入するとともに、資源インフラ案件のホスト国に対する人材育成支援・金融支援等の実施を検討していく。

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