経済産業省
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第1章 国際協調による新たなルールベースの国際通商システムの構築に向けて

第1節 G7/G20

1.G20貿易・デジタル経済大臣会合(2019年6月)

日本が議長国となり、2019年6月に茨城県つくば市において開催されたG20貿易・デジタル経済大臣会合は、G20として初めて、貿易大臣とデジタル経済大臣が一堂に会する会合となった。

貿易分野では、貿易摩擦が激化し、世界貿易を取り巻く情勢が極めて厳しくなる中、貿易摩擦の問題に取り組む必要性をG20全体で確認した。

また、三極貿易大臣会合で議論してきた通報制度改革や通常委員会の活性化といったWTO改革の具体的内容をG20として初めて位置づけるとともに、WTOの紛争解決制度についての行動の必要性にも初めて合意した。

加えて、同じく三極貿易大臣会合で議論してきた産業補助金ルール強化の必要性についてG20で初めて言及すると共に、日本がリードしているWTO電子商取引の有志国によるルール作りについて、G20として初めて盛り込んだ。

また、貿易摩擦の緩和のための措置がWTO整合的であるべきこと及び大半のメンバーが鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの延長に賛成したことが議長声明で明記された。

デジタル分野では、「データ・フリーフロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」というコンセプトにG20全体で合意した。データの国際的な流通が経済成長につながること、人々や企業間の信頼がデータの自由な流通を加速すること、信頼につながる各国の法的枠組みは相互に接続可能なものであるべきことを確認した。さらに、政策や規制そのものをデジタル化し、機動的で柔軟なものとしていく必要があること、またステークホルダーが参加して政策をつくること、すなわちガバナンス・イノベーションが必要であることについて確認した。

2.G20大阪サミット(2019年6月)

2019年6月にG20大阪・サミットが開催された。日本が初めて議長国を務めたG20サミットでは、G20メンバー国に加えて、8つの招待国、9つの国際機関の代表が参加し、国内で開催した史上最大規模の首脳会議となった。主要国のリーダーたちが一堂に会する中、今般のサミットでは、互いの共通点を見出し、主要な世界経済の課題に団結して取り組んでいく姿を打ち出した。また、グローバル化による変化への不安や不満の声があがる中で、議長国としてリーダーシップを発揮し、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献等、多くの分野でG20としての力強い意志を「大阪首脳宣言」を通じて世界に発信した。

「大阪首脳宣言」において、貿易分野では、つくばで開かれたG20貿易・デジタル経済大臣会合の閣僚声明を首脳として歓迎し、自由、公正、無差別な貿易及び投資環境を実現し、開かれた市場を維持するため努力をすることで一致した。また、WTO改革については、閣僚会合での合意も踏まえ、WTO第12回閣僚会合(MC12)に向けた取組を含め、必要なWTO改革を支持していくことを確認し、WTOの紛争解決制度の機能に関し、行動が必要であることに合意した。鉄鋼グローバル・フォーラムについては、担当閣僚に対し、フォーラムの取組を更に進めるための方策を探求し、2019年秋までにコンセンサスに至るよう求めることで一致した。

また、デジタル分野においては、プライバシーやデータ保護、知財、セキュリティといった課題に引き続き対処することにより、データの自由な流通をさらに促進するとともに、消費者及びビジネスの信頼を強化することができることを確認した。このため、国内及び国際の両面において法的枠組みが尊重されることの必要性についても認識を共有した。このように、データ・フリーフロー・ウィズ・トラスト(DFFT:信頼性のある自由なデータ流通)は、デジタル経済の好機を活かすものであり、電子商取引に関する共同声明イニシアティブに基づき進行中の議論に留意することとともに首脳間で一致した。

デジタル経済に関しては、大阪サミットの機会に首脳特別イベントを主催し、27か国の首脳の参加の下、データ流通、電子商取引に関する国際的なルール作りを行う「大阪トラック」の立ち上げを宣言した「デジタル経済に関する大阪宣言」を発出し、WTOでの有志国による電子商取引に関するルール作りについて、MC12までに実質的な進捗を達成するために更に努力することを表明した。その後、「大阪トラック」の下で、OECDや世界経済フォーラム(WEF)等の国際フォーラムも活用しながら、データ・フリーフロー・ウィズ・トラストの実現に向けた、マルチステークホルダーによる具体的な議論が進められている。

加えてインフラ分野に関しては、新興ドナー国を含むG20メンバー国が今後の質の高いインフラ投資に関する共通の戦略的方向性と高い志を示すものとして、国際社会と協力し、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性といった要素を含む、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が承認された。

参考 G20首脳宣言 抜粋(仮訳)

強固な世界経済の成長の醸成
貿易と投資

8.我々は、G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明を歓迎する。我々は、自由、公正、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の開かれた市場を維持するよう努力する。国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発の重要なエンジンである。我々は、世界貿易機関(WTO)の機能を改善するため、必要なWTO改革への支持を再確認する。我々は、第12回WTO閣僚会議に向けた取組を含め、他のWTO加盟国と建設的に取り組んでいく。我々は、WTO加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要であることに合意する。さらに、我々は、WTO協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。我々は、ビジネスを可能とする環境を醸成するため、公平な競争条件を確保するよう取り組む。

過剰生産能力

9.我々は、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)におけるこれまでの進展に留意しつつ、GFSECメンバーの関係閣僚に対し、2019年の秋までに、フォーラムの取組を更に進めるための方法について、探究し、コンセンサスに至るよう求める。

11.データ、情報、アイデア及び知識の越境流通は、生産性の向上、イノベーションの増大及びより良い持続的開発をもたらす一方で、プライバシー、データ保護、知的財産権及びセキュリティに関する課題を提起する。これらの課題に引き続き対処することにより、我々は、データの自由な流通を更に促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することができる。この点において、国内的及び国際的な法的枠組みの双方が尊重されるべきことが必要である。このようなデータフリーフローウィズトラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は、デジタル経済の機会を活かすものである。我々は、異なる枠組みの相互運用性を促進するために協力し、開発に果たすデータの役割を確認する。我々はまた、貿易とデジタル経済の接点の重要性を再確認し、電子商取引に関する共同声明イニシアティブの下で進行中の議論に留意し、WTOにおける電子商取引に関する作業計画の重要性を再確認する。

3.G7ビアリッツ・サミット(2019年8月)

2019年8月に行われたG7ビアリッツ・サミットでは、「不平等との闘い」のテーマの下、世界経済・貿易や外交・安全保障のほか、アフリカ、環境、デジタル化等について議論が行われた。議論の成果として、G7首脳が合意した事項を簡潔にまとめた「G7ビアリッツ首脳宣言」等が発出された。

貿易分野では、不公正な貿易・投資慣行への対応やWTO改革の推進にG7が結束して取り組んでいくことが確認された。特に、WTOのルールを時代に合ったものにすべく、必要な改革を推進していくことを確認するとともに、産業補助金等の市場歪曲的な措置に対するより強固な国際ルールの構築に向けて、これら諸課題に結束して取り組むことを確認した。G7ビアリッツ首脳宣言においても、「開かれた公正な世界貿易及び世界経済の安定にコミットしている」旨が盛り込まれたほか、「不公正な貿易慣行を除去するために、WTOを徹底的に改めることを期待する」等に言及されている。

また、デジタル分野では、G20大阪サミットで合意されたDFFTの考え方等について、G7首脳間で再確認された。

4.鉄鋼グローバル・フォーラム閣僚会合(2019年10月)

10月26日、33の国・地域の参加を得て、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム閣僚会合を東京にて開催した。会合では、梶山経済産業大臣が議長、牧原経済産業副大臣が議長代理を務め、議長声明及び議長報告書を発出した。

鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムは、2016年のG20杭州サミットで設立が合意されたものであり、議論の中では、鉄鋼業の世界経済にとっての重要性について、全ての国が改めて認識を共有するとともに、フォーラムの3年間の活動について高く評価することについて一致した。

大多数のメンバーは、鉄鋼グローバル・フォーラムの次のステップに関する記述を含む閣僚報告書の草案について、コンセンサスに加わる意思を表明したが、「鉄鋼グローバル・フォーラムはその目的を達成しており、終了すべきである」との意見がある中で、完全なコンセンサスには至らなかった。

日本は議長として、大多数のメンバーがこれまでの進め方を基礎に鉄鋼の過剰生産能力問題に関する取組を継続することに合意したことに留意し、今後は、各国が個別に、又は協力して取組を継続していくことについて期待を述べた。

5.G7首脳テレビ会議(2020年3、4月)

3月16日、フランスからの提案を受けて、本年のG7議長国の米国の呼びかけにより、G7首脳間では初めてのテレビ会議が行われた。

会合後には、首脳宣言が発出され、G7として、①人々を守るための必要な衛生上の手段の調整、②市場の信認及び成長の回復、雇用の保護、③国際貿易及び投資の支援、④科学、研究及び技術協力の促進に取り組むことで一致した。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者

日:安倍総理、米:トランプ大統領、独:メルケル首相、加:トルドー首相、伊:コンテ首相、英:ジョンソン首相、仏:マクロン大統領、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

また、4月16日にもG7首脳テレビ会議が行われ、参加したG7首脳は、新型コロナウイルス感染症に関し、各国内の経済状況や感染拡大防止策について意見交換を行った。

各国首脳から、先月のテレビ会議以降の各国の取組の進捗が紹介されたほか、官民を挙げた国際的な連携を通じたワクチン開発の重要性、アフリカや東南アジア、島嶼国への支援の重要性などの意見が一致した。また、事態の収束後、各国の経済活動を安全な形で再開するための準備が重要との点についても一致した。

新型コロナウイルス感染症への対応に、国際社会が一丸となった取組が求められる中、今回の会議を通じ、G7としての一致した姿勢を示した。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者

日:安倍総理、米:トランプ大統領、独:メルケル首相、加:トルドー首相、伊:コンテ首相、英:ラーブ外相(代理出席)、仏:マクロン大統領、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

6.G20首脳テレビ会議(2020年3月)

3月26日、本年のG20議長国サウジアラビアの呼びかけにより、G20首脳間では初めてのテレビ会議が行われた。参加したG20首脳は、新型コロナウイルス感染症に関し、各国内の経済状況や感染拡大防止策について議論を行った。

また、会合後には、首脳宣言が発出され、貿易に関しては、「国際的な交通及び貿易に対する不必要な介入を避ける形で国際貿易を円滑化し、対応を調整するために引き続き協働すること」等が確認された。

【参考】G20メンバー・招待国・国際機関

(G20メンバー)

サウジアラビア(議長国)、日本、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、EU

(招待国)

スペイン、ヨルダン、シンガポール、スイス、ベトナム(ASEAN議長国)、アラブ首長国連邦(湾岸協力理事会(GCC)議長国)、ルワンダ(アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)議長国)

(国際機関)

国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)

7.G20貿易・投資大臣会合(テレビ会議)(2020年3、5月)

3月30日にG20貿易・投資大臣会合がテレビ会議形式で開催され、梶山経済産業大臣、若宮外務副大臣が参加した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について各国との連携を確認し、共同声明を採択した。

今回の貿易・投資大臣会合では、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、貿易に対する不必要な介入を避け、国際貿易を円滑化するべく、対応についての議論を行った。本年のG20議長国であるサウジアラビアの呼びかけで開催された。

会合では、新型コロナウイルス感染症の拡大によってサプライチェーンの途絶や消費活動の減退が深刻であること、人の移動が制限される中で、モノ・サービスの自由な流通を確保し、経済活動を維持していくため、G20として貿易面でも連携を強化していくことを確認した。

また、共同声明では、主に以下の内容について合意した。

・新型コロナウイルス感染症に対処するための緊急的な措置は、例えそれが必要と見なされる場合においても、的を絞った、均衡がとれた、透明性のあるかつ一時的なものでなければならず、WTO整合的であるべきこと。

・物流ネットワークが円滑かつ継続的に稼働するよう約束。空路、海上・陸上輸送による物流ネットワークが開かれたものであるよう方策を検証すること。

・国際機関に対して、新型コロナウイルス感染症が貿易投資やグローバル・サプライチェーンに及ぼす影響について詳細な分析を提供するよう要請。また、G20貿易・投資作業部会に対して、新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響を緩和するための措置、及びグローバル・サプライチェーンの維持と迅速な経済回復のための長期的な措置を特定するよう指示。

また、5月14日にも、G20貿易・投資大臣会合が臨時にテレビ会議形式で開催され、梶山経済産業大臣、若宮外務副大臣が参加した。

今回の貿易・投資大臣会合では、前回会合(3月)を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済への影響を抑えるため、貿易投資政策の観点から、G20が連携して短期的・長期的に取り組む具体的なアクションについて議論した。

会合では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界経済が大きな影響を受けている現状を踏まえ、自由貿易の促進やデジタル技術の活用等による経済活動の維持を図るため、G20としての具体的な方策を議論し、連携して行動することの重要性を確認した。

共同声明では、主に以下の内容に合意した。

・新型コロナウイルス感染症が貿易・投資に与える影響を緩和し、力強く、持続可能でバランスのとれた包括的成長に基づいたグローバルな経済回復の基盤を築くため、協力と連携することの決意を再確認。

・G20貿易投資作業部会が準備した「新型コロナウイルスに対する世界の貿易・投資を支えるためのG20の行動」を支持し、短期的な行動は新型コロナウイルス感染症の影響を緩和し、長期的な行動はWTO及び多角的貿易体制に必要な改革を支え、グローバル・サプライチェーンを強靱にし、国際投資を強化。

・新型コロナウイルス感染症が国際貿易・投資及びグローバル・サプライチェーンに及ぼす影響について、整理された詳細な分析を提供するために国際機関が行った共同作業を歓迎し、引き続き、投資を促進し、必須のモノやサービスの流通を図るため、各国際機関と権限の範囲内で協業していくこと。

・引き続き、状況を綿密に監視し、パンデミックによる貿易への影響を精査し、必要に応じて再び会合を開催。G20貿易投資作業部会に対し、これらのアクションに最大限留意するとともに、合意したアクションの実施に関して、状況をアップデートするよう指示。

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