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第3節 APECを通じた地域経済統合の推進と経済成長の促進

2019年はチリがAPECの議長を務め、全体テーマ「人々をつなぎ、未来を構築(Connecting People, Building the Future)」の下、(1)デジタル社会(Digital Society)、(2)統合4.0(Integration 4.0)、(3)女性、中小企業及び包摂的成長(Women, SMEs and Inclusive Growth)、(4)持続可能な成長(Sustainable Growth)の4つの優先課題を掲げ、各種取組を行った。

同年5月のAPEC貿易担当大臣会合では、WTO支持、地域経済統合の推進、デジタル時代における包摂的かつ持続可能な成長の強化等について議論が行われ、2015年以来4年ぶりに共同声明が発出されるなど、前向きな成果を出した(第Ⅲ-1-3-1図)。

第Ⅲ-1-3-1図 APEC貿易担当大臣会合

なお、同年11月にサンティアゴで開催される予定であった首脳会議は、チリの治安等国内情勢を理由に開催中止となった。首脳会議の中止はAPEC設立以降、初の事態であったが、同年12月7日にシンガポールにて最終高級実務者会合(CSOM)が開催され、2019年の成果として、3つのロードマップ(女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ、違法・無報告・無規制(IUU)漁業と戦うためのロードマップ、海洋ごみロードマップ)が承認された。また同日、議長チリが「APECホストエコノミー首脳(注:チリ大統領)による声明」を発出した。

2020年のAPECでは、マレーシアが議長を務め、全体テーマ「共有された繁栄の未来に向けた人間の潜在能力の最適化(Optimizing Human Potential Towards a Future of Shared Prosperity)」の下、(1)貿易・投資の説明方法(ナラティブ)の改善(Improving the Narrative of Trade and Investment)、(2)デジタル経済と技術を通じた包摂的な経済参画(Inclusive Economic Participation through Digital Economy and Technology)、(3)革新的な持続可能性の推進(Driving Innovative Sustainability)の3つの優先課題に取り組んでいる。

我が国としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぐとの方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとするアジア太平洋地域の経済統合の実現、質の高いインフラ開発・投資の促進、持続可能かつ包摂的な経済成長実現及び女性による経済活動への一層の参画を促進するための取組の実施などを通じ、この地域の力強い成長力を取り込みつつ、我が国の経済に豊かさと活力をもたらすことを目指す。また、WTO発足時には貿易投資ルールの対象として想定されていなかったデジタル貿易・電子商取引分野に関する具体的な取組を進めていくとともに、市場歪曲措置の是正やレベル・プレイング・フィールドの確保にも取り組む。さらに、「ボゴール目標」の最終期限である2020年以降の新たなAPECビジョンの形成に積極的に関与していく。

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