被災地の全10兆円の製造品出荷をけん引する輸送用機械工業 ~業種別に見る被災地製造業の動向~ 2015.6.22
東日本大震災から4年が経過し、復興が進みつつありますが、今回はその中でも製造業にスポットを当て、被災地の製造業について、震災前と震災後を業種別に比較してみたいと思います。具体的には、岩手・宮城・福島の3県の工業統計を用いて、業種別の製造品出荷額の変化を確認し、被災地鉱工業指数を用いて、最近までの生産動向を確認したいと思います。また、各業種の事業所数・従業者数の変化についてもみていきます。
まず、被災3県の製造業全体の製造品出荷額を確認すると、最新の平成25年が10.8兆円と、震災前とほぼ同じ水準となりました。
また、生産水準をみると、平成23年3月に震災前の7割程度まで低下しました。
最近では、平成26年4月の増税以降、被災地域以外よりも大きく落ち込み、以降もやや弱く推移しています。
次に、震災前と震災後の被災3県の製造品出荷額の変化を業種別に確認すると、平成25年の輸送用機械器具が、22年比+4,326億円(+44.0%)と製造業全体を上に押し上げており、業種構成比も拡大しました。石油・石炭製品も、震災前の出荷額を上回るなど好調でした。
一方電子部品・デバイス・電子回路、情報通信機械器具は、ともに22年比で大きく落ち込み、業種構成比も縮小しました。
これらの4業種について、最近の生産動向を、被災地鉱工業指数を利用して確認すると、輸送機械工業は、26年4月の増税後、特に8月以降は生産水準が低下していましたが、27年に入り再び24、25年の高水準まで戻しています。
石油・石炭製品工業も、増税後一時的に落ち込みましたが、それ以降は水準を戻しています。
電子部品・デバイス工業は、震災後は震災前の水準の7-8割程度に留まっており、低調に推移していましたが、26年10月頃から生産水準が上昇傾向にあります。
情報通信機械工業も総じて低調で、特に26年後半は震災前のおよそ半分ほどまで水準が低下しています。
最後に、各業種の事業所数・従業者数の変化を確認すると、事業所数は、全業種減少か横ばいで、電子部品・デバイス・電子回路、情報通信機械器具といった不調業種の落ち込み幅が特に大きくなっています。
従業者数は、好調な2業種である輸送用機械器具、石油・石炭製品のどちらも増加、不調な2業種である電子部品・デバイス・電子回路、情報通信機械器具はどちらも減少でした。
1事業所あたりの出荷額・1従業員あたりの出荷額を計算すると、好調業種の輸送用機械器具は、それぞれ+47.6%、+36.5%と大幅に上昇しており、事業所の生産性・労働生産性が大きく向上したことがわかります。石油・石炭製品も両者とも、輸送用機械器具ほどではないですが、上昇しております。
逆に、不調業種は両業種とも、1事業所・1従業員あたりの出荷額とも、どちらも低下しており、事業所の生産性・労働生産性がともに低下しています。
 
これらの内容について、各種のグラフをまとめたスライド資料をこちらにアップしておりますので、ご活用ください。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini024j.pdf
(Youtubeにスライドショーもアップしています。
https://www.youtube.com/watch?v=jE-HP8h05KM )
平成27年6月22日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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