商品別、地域別にみた百貨店販売額の動向 ~資産効果と外国人観光客の恩恵を受けるがその効果は限定的~ 2015.7.2
百貨店販売額は、平成27年4月、5月と2か月連続で前年を上回りました。新聞やニュース等では、百貨店が好調であると報道されています。
百貨店では、どのような商品が、どこで売れているのでしょうか。また、その背景には何があるのでしょうか。
経済産業省の商業動態統計及び日本百貨店協会の統計で、百貨店販売額の動向を確認してみると、百貨店では「美術・宝飾・貴金属」が売れており、他と比較して回復の勢いが強くなっています。平成27年4月、5月の販売額の伸びには、美術、宝飾、貴金属等を含む「その他(その他の商品)」、ハンドバッグ等を含む「衣料品(身の回り品)」が大きく寄与しています。
高額品や高級ブランド品が含まれる「その他(その他の商品)」や「衣料品(身の回り品)」が回復している背景には、株価の上昇(資産効果)、外国人観光客の売上高の増加があることが推察されます。
百貨店販売額はスーパーと比べて株価との相関が強く、中でも「その他(その他の商品)」と「衣料品(身の回り品)」と株価との相関係数は0.7、「美術・宝飾・貴金属」は0.8となっています。
また、百貨店における外国人観光客による売上高は増加傾向で推移していますが、最も人気のある商品(売上高が大きい商品)は「ハイエンドブランド」品となっています。
しかし、百貨店販売額の動向を地域別に見てみると、東京、大阪は回復傾向で推移していますが、全国(除.東京、大阪)の回復の勢いは弱いです。
商品別に見てみると、「美術・宝飾・貴金属」は全国的に回復傾向で推移しており、大きな地域差は見られません。とはいうものの、そもそも百貨店の販売額全体に占める「美術・宝飾・貴金属」の割合は5%程度であり、大きくはありません。
同時に、百貨店販売額の約5割を占める「衣料品」 は、東京、大阪では回復傾向で推移していますが、全国(除.東京、大阪)では消費税増税前年の平成25年の水準を下回っています。株価効果やインバウンド効果を背景に、「衣料品」の中でも高級ブランド品が売れており、それら商品を多く取り扱う東京、大阪は売上を伸ばしていますが、高級ブランド品以外の商品は伸び悩んでおり、それら商品を核としている全国(除.東京、大阪)の回復が遅れていることが推察されます。
最後に、百貨店販売額(全国)の動向を見てみると、足下では消費税率引上げ前年の平成25年の水準を上回っていますが、上昇幅は僅かとなっています。物価変動要因を除いた実質ベースで確認してみると、百貨店販売額全体は、足下でも平成25年の水準を下回っています。地域別に見てみると、東京、大阪は足下で平成25年の水準を上回っていますが、全国(除.東京、大阪)は平成25年の水準を下回っています。
百貨店では、資産効果やインバウンド効果を背景に、一部高額品、高級ブランド品は回復していますが、広く全体には及んでおらず、東京、大阪と全国(除.東京、大阪)の回復度合いには差が生じています。今後、賃金の上昇等に伴って、商品全般、地域全般が回復していくことが期待されます。
各種のグラフや内容をまとめたスライド資料をこちらにアップしておりますので、ご活用ください。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini025j.pdf
平成27年7月2日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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