中国向け出荷減少の背景には何があるのか? ~現地法人と電子部品を中心に~< 2015.12.8
中国向け出荷指数(2010年=100、季節調整済、数量ベース)は、2014年第4四半期をピークに、2015年第1四半期以降、第3四半期まで低下傾向で推移しています。原指数ベースで見ても、2014年第1四半期以降、伸び率が鈍化していき、2015年第3四半期は前年同期比▲2.4%のマイナスに転じています。金額ベースの中国向け輸出額についても、数量ベースの中国向け出荷指数とほぼ同様の動きを示しています。
このような中国向け出荷の減少の背景には何があるのでしょうか?今回の分析では、経済産業省の統計指標及び調査結果を中心に用いながら定量的な分析を行い、考察してみました。
まず、日本から中国への輸出額に占める、中国における日本の現地法人(以下「現地法人」という。)が日本から調達した金額の割合を確認してみると、2013年度は約5割となっています。現地法人の売上高(前年同期比)の動向を見てみると、中国国内向けを中心に、2014年第2四半期以降、伸び率が鈍化していき、第4四半期以降はマイナスが続いています。中国向け出荷は現地法人の当期及び1四半期後の売上高との相関が強くなっております。中国向け出荷減少の背景の一つには、現地法人の中国国内向けを中心とした売上高の減少があります。
次に、中国向け出荷の変動要因分解を行ってみると、中国向け出荷の低下には「生産財」が大きく寄与しており、「生産財」の中でも、「電子部品・デバイス工業」の低下寄与が大きくなっています。
中国の鉱工業生産指数の伸びは鈍化傾向にあります。また、中国のエレクトロニクス産業を代表する品目のうち、「携帯電話」、「電子コンピュータ」についてそれぞれの生産量の動向を見てみると、「携帯電話」は2015年3~9月まで、「電子コンピュータ」は2014年12月以降、累積値ベースで前年同月比マイナスとなっています。
産業連関表(2011年)を用いて、仮に中国向け輸出が▲10%減少した場合の日本の生産額に及ぼす影響を試算してみると、国内生産額の減少率が最も大きい部門は「電子部品」となります。試算結果によれば、中国向け輸出が▲10%減少した場合の「電子部品」に及ぼす影響(国内生産減少額 ▲3,220億円、国内生産減少率 ▲2.40%)は、米国向け輸出が▲10%減少した場合(国内生産減少額 ▲962億円、国内生産減少率 ▲0.72%)と比較して大きく出てきます。
中国向け出荷減少の背景のもう一つには、中国の生産活動の鈍化、特に日本の電子部品・デバイス工業に大きな影響を及ぼすエレクトロニクス産業の生産鈍化があることが考えられます。
中国の「携帯電話」の生産台数については10月に回復していますが、こうした傾向は今後も続くのか、中国経済は回復するのか、今後の動向を注視していきたいと思います。
分析結果の詳細について詳しくご覧になりたい方は、下記URLにアクセスしてみてください。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini037j.pdf
平成27年12月8日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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