- 5月生産は3か月ぶりの前月比低下
- 13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇
- 出荷は3か月ぶりの低下
- 在庫は2か月連続の低下
- 在庫率は2か月ぶりの上昇
- 5月の生産の基調判断は、「持ち直している」に据え置き
5月生産は3か月ぶりの前月比低下
2021年5月の鉱工業生産は、季節調整済指数94.1、前月比マイナス5.9%と、3か月ぶりの低下となりました。
これまでの生産については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年2月から5月まで大幅に低下した後、6月以降は一転、回復基調が続いています。2021年2月は一時的に低下しましたが、3月と4月は2か月連続での上昇となり、5月は再び低下となりました。
その結果、2021年5月の生産水準は、感染症拡大前の2020年1月(指数値99.1)の水準を下回りました。

13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇
5月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇という結果でした。
5月は、生産用機械工業等が先月からの反動減などにより低下したことに加えて、半導体不足の影響などを受けた自動車工業等が低下したことなどから、全体として、2020年5月(マイナス10.5%)以来の大幅な低下となりました。

主な低下寄与業種についてみると、まず、低下寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比19.4%の大幅な低下で、2020年6月(指数値:59.9)以来の水準である指数値80.0となりました。乗用車や車体・自動車部品等が主な低下要因となっています。世界的な半導体不足の影響を受けて、大幅な生産減になったと考えられます。
低下寄与2位の生産用機械工業は、前月比5.9%の低下で、2か月ぶりの低下となりました。半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置や金属加工機械等が低下要因となっています。先月の生産増からの反動減などが背景にあったと考えられます。
出荷は3か月ぶりの低下
5月の鉱工業出荷は、季節調整済指数93.1、前月比マイナス4.7%と、3か月ぶりの低下となりました。

業種別にみると、全体15業種のうち、13業種が低下、2業種が上昇となりました。
低下寄与業種の中では、特に、自動車工業の低下寄与が大きくなっています。
乗用車や車体・自動車部品等が主な低下要因となっており、生産と概ね同様の動きとなっています。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比5.6%の低下であったことに加え、耐久消費財が前月比7.9%の低下、資本財(除.輸送機械)が前月比3.0%の低下、非耐久消費財が前月比2.4%の低下と、建設財を除き低下となりました。

在庫は2か月連続の低下
5月の鉱工業在庫は、季節調整済指数93.1、前月比マイナス1.7%と、2か月連続の低下となりました。今基準内(2013年1月以降)で最も低い水準となっています。
業種別にみると、15業種のうち、6業種が低下、9業種が上昇となりました。
低下寄与業種の中では、特に、自動車工業の低下寄与が大きくなっています。
自動車工業の生産水準が大幅に低下したことを受けて、出荷水準も併せて低下しているものの、その一部に対して在庫の減少により対応したことがうかがえます。

在庫率は2か月ぶりの上昇
5月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数107.7、前月比0.3%と、2か月ぶりの上昇となりました。上昇はしたものの、先月を除くと、2019年5月(指数値:107.0)以来の低い水準となっています。
業種別にみると、15業種のうち、9業種が上昇、5業種が低下、1業種が横ばいとなりました。
特に、鉄鋼・非鉄金属工業が、上昇に大きく寄与しています。

在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、景況感の改善を眺めつつ、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に向かう動きにあると考えられます。
ただし、生産前年同期比(横軸)については、2020年の生産水準が、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく低下していることから、その点には留意が必要と考えています。

5月の生産の基調判断は、「持ち直している」に据え置き
5月の鉱工業生産は、前月比5.9%の低下となりました。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いています。2021年2月は一時的に低下したものの、3月と4月は2か月連続での上昇となり、5月は再び低下となりました。
この背景には、5月の生産は、前月からの反動減などにより、生産用機械工業等で低下したことに加えて、世界的な半導体不足の影響から、自動車工業等で大幅に低下したことがあると考えられます。
一方、先行きに関しては、企業の生産計画では、6月は上昇、7月が低下となっています。生産は、上下の振れはありつつも、均してみれば引き続き回復傾向にあると考えています。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の5月の基調判断については、「生産は持ち直している」に据え置きます。
他方、先行きは、半導体不足による経済活動への影響や、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響について、引き続き注視していく必要があります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202105s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html