- 5月の第3次産業活動指数は、前月比低下
- 業種ごとの動向
- 『対個人/対事業所サービス』の動向
- 『製造業/非製造業依存型事業所向けサービス』の動向
- 『非選択的/し好的個人向けサービス』の動向
- 5月時点の基調判断は、「足踏みのなかに弱さがみられる」へ引き下げ
5月の第3次産業活動指数は、前月比低下
5月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値95.3、前月比マイナス2.7%と2か月連続の低下となりました。
サービス産業活動は、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、2020年4月には1回目の緊急事態宣言が発出され、2020年5月まで大幅な低下が続いていました。その後、1回目の緊急事態宣言の解除等もあり、2020年6月以降、5か月連続で上昇が続きましたが、感染再拡大による需要喚起策の停止や2回目の緊急事態宣言の発出等もあり、2020年12月から2021年2月まで、再び低下しました。
その後、2021年3月には、2回目の緊急事態宣言の対象区域の縮小を伴う段階的な解除等を受けて、それまでの低下の反動などによって上昇に転じましたが、4月、5月と、まん延防止等重点措置、3回目の緊急事態宣言の発出及びこれらの対象区域の拡大などを受けて、2か月連続で低下しました。
なお、サービス産業の活動水準については、昨年の底であった2020年5月の指数値86.7と比べれば高いものの、感染拡大防止のためのスポーツ・文化イベントの延期などが本格化する前の2020年2月の指数値101.4を大きく下回る水準であり、これまでの活動水準からみれば依然低い水準にとどまっています。

業種ごとの動向
5月の業種別の動きをみると、11業種中、8業種が前月比低下、2業種が前月比上昇、1業種が横ばいという結果となりました。
5月は、事業者向け関連サービスや不動産業が上昇したものの、「医療,福祉」や生活娯楽関連サービス、卸売業、情報通信業、「運輸業, 郵便業」などが低下したことにより、サービス産業全体としては低下することとなりました。

生活娯楽関連サービスは、前月比マイナス8.1%と、2か月連続の低下となりました。内訳業種では、「飲食店,飲食サービス業」や旅行業、冠婚葬祭業を含む「その他の生活関連サービス業」などが低下に寄与しています。5月は、緊急事態宣言の対象区域の拡大などを受けて、飲食関連での活動が低下したものと考えられます。
また、「卸売業」については、前月比マイナス4.0%と、2か月連続の低下となりました。内訳業種では、その他卸売業(機械器具を除く住関連卸売業)、飲食料品卸売業などが低下に寄与しました。緊急事態宣言の対象区域の拡大などを受けて、住関連や飲食関連の取引が減少したものと思われます。

『対個人/対事業所サービス』の動向
サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス(以下対個人サービス)」と「広義対事業所サービス(以下対事業所サービス)」に分けることができます。
5月の対事業所サービスは、指数値98.3、前月比マイナス2.7%と3か月ぶりに低下に転じるとともに、対個人サービスは、指数値91.7、前月比マイナス4.2%と2か月連続の低下でした。
対事業所サービスは、2020年6月以降2021年4月まで、後方3か月移動平均で均してみれば、上昇傾向が続いておりましたが、5月は足踏みが見られる結果となりました。これまで好調を継続している情報サービス業での反動減などに加えて、電気機械器具や自動車等の卸売業などでのサービス活動の低下が要因として考えられます。
また、対個人サービスは、緊急事態宣言の対象区域拡大などを受けて、飲食店関連を始めとしたサービス活動の低下が要因として考えられます。

『製造業/非製造業依存型事業所向けサービス』の動向
対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、「製造業依存型」と「非製造業依存型」に分けることができ、それぞれの指数を計算しています。
5月は、製造業依存型事業所向けサービスが前月比マイナス2.2%、非製造業依存型事業所向けサービスが前月比マイナス2.8%とともに低下しました。
特に、製造業依存型事業所向けサービスについては、2か月連続での低下となり、半導体不足などによる取引活動の低下の影響もあったと考えられます。

『非選択的/し好的個人向けサービス』の動向
対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる「非選択的サービス」と、選択性が高く所得環境や経済情勢等の影響を受けやすいと考えられる「し好的サービス」に分けられ、それぞれの指数も計算しています。
5月は、非選択的個人向けサービスが前月比マイナス2.9%と3か月ぶりの低下となるとともに、し好的個人向けサービスは前月比マイナス5.0%と2か月連続の低下となり、個人向けサービス全体ではマイナス4.2%と大幅な低下となりました。
特に、5月のし好的個人向けサービスについては、緊急事態宣言の対象区域の拡大などを受けて、需給が一定程度抑制され、サービス活動が低下したと考えられます。

5月時点の基調判断は、「足踏みのなかに弱さがみられる」へ引き下げ
5月のサービス産業活動指数は、前月比マイナス2.7%と、2か月連続の低下となりました。5月は、対事業所サービスがマイナス2.7%と低下に転じ、対個人サービスがマイナス4.2%と2か月連続で低下したことで、サービス産業活動全体としては大幅な低下となりました。低下幅としては、2020年4月(前月比マイナス8.6%)以来の水準であり、指数値95.3は、現行の基準(2013年1月以降)では、2020年4月から7月までの水準に次ぐ5番目に低い水準となります。
先行きについては、いわゆる第5波とも言われる感染再拡大を受けて、東京都は、まん延防止等重点措置から緊急事態宣言へ移行(沖縄県は継続)されるとともに、埼玉県、千葉県、神奈川県及び大阪府はまん延防止等重点措置が8月22日まで実施されることなどから、サービス産業活動は恒常的な水準回復には時間を要するものと思われます。
こうした状況を踏まえ、サービス産業活動指数の5月の基調判断については、「足踏みのなかに弱さがみられる」に引き下げることとします。
なお、今後の動向についても、引き続き注視してまいります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/result/reference/slide/result-sanzi-sanko-202105.html
- マンガ「就職にも使える!第3次産業活動指数」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20160405ita_manga2016.html