製造工業の生産計画では、7月は前月比低下、8月は前月比上昇の計画となり、生産は持ち直し傾向が続くことが期待される。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や世界的な半導体不足の影響などに留意する必要がある。

    7月の生産は低下、8月の生産は上昇の計画

    7月上旬に実施した、7月と8月における企業の生産予測調査の結果です。

    7月の生産計画では、前月比1.1%の低下を見込むという結果となっています。

    ただ、この生産計画には上方バイアスが含まれており、この上方バイアスを過去の傾向に基づき補正し、7月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比2.2%程度の低下、90%の確率で収まる範囲は前月比マイナス4.0%~マイナス0.4%の間、という計算結果となります。

    また、8月の生産計画は、補正前の7月計画値から前月比1.7%上昇する計画となっています。

    図表01

    7月計画では、5業種で低下、6業種で上昇の計画

    7月の生産計画では、全体11業種のうち、5業種が前月比低下、6業種が前月比上昇の計画となっています。

    特に、低下寄与の高かった業種が化学工業であり、上昇寄与の高かった業種は電子部品・デバイス工業や輸送機械工業となっています。

    これは、電子部品・デバイス工業や輸送機械工業などでは、半導体不足の影響がある中でも増産する計画となっているものの、化学工業が、その他の化学製品などで減産する計画となっていることが、背景として考えられます。

    図表02

    8月計画では、5業種で上昇、6業種で低下の計画

    8月の生産計画では、全体11業種のうち、5業種が前月比上昇、6業種が前月比低下の計画となっています。

    特に、上昇寄与の高かった業種が化学工業やその他であり、低下寄与の高かった業種が生産用機械工業となっています。

    これは、上昇寄与の高かった化学工業やガラス・陶磁器等製品などを含むその他では、7月からの反動増などでの増産を予定していることが背景として考えられます。

    他方で、低下寄与の高かった生産用機械工業については、7月からの反動減などでの減産を予定していることが背景として考えられます。

    ただし、現調査時点が7月上旬であったため、最新の新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や長びく半導体不足の影響などは十分に反映されていない可能性があり、その点も注意しておく必要があると考えています。

    図表03

    7月と8月の計画を通してみると

    7月と8月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。

    8月までみると、生産用機械工業での反動減による影響はあるものの、石油製品工業などが上昇を予定していることなどから、製造工業の生産は6月比で上昇する見込みとなっています。

    このため、世界的な需要回復などから、製造工業の生産全体では、均してみると、持ち直しが続くことが期待される計画となっています。

    しかしながら、調査時点の影響から、8月の生産計画については、最新の新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や長びく半導体不足の影響が十分に反映されていない可能性があり、次回の調査時点では、この下振れリスクがより顕在化してくることも想定しておく必要があります。

    図表04

    なお、仮に企業の生産計画通りの前月比で生産が行われると、7月の鉱工業生産の指数値は98.2、8月の指数値は99.9となります。

    一方、7月計画に含まれる上方バイアスを過去の傾向に基づき補正すると、最頻値で前月比2.2%の低下となり、その場合の指数値は97.1となります。

    生産計画には、通常、上方バイアスが含まれていることなどを考えると、8月に計画値ほどの高水準には至らない可能性が高いものの、2021年4月(指数値100.0)を除くと、2019年9月(指数値102.4)以来の生産水準となる可能性もあると考えられます。

    生産の先行きについては、上下の振れはあるものの、持ち直しが続くことが期待されます。ただし、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や半導体不足による経済活動への影響については、引き続き十分注意しておく必要があります。

    図表05
    結果概要のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
    参考図表集
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202106s.html
    マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html

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