8月の生産は上昇、9月の生産は上昇の計画
8月上旬に実施した、8月と9月における企業の生産予測調査の結果です。
8月の生産計画では、前月比3.4%の上昇を見込むという結果となっています。
ただ、この生産計画には上方バイアスが含まれており、この上方バイアスを過去の傾向に基づき補正し、8月の鉱工業生産の実績を推計試算してみると、最頻値では前月比0.1%程度の上昇、90%の確率で収まる範囲は前月比マイナス1.7%~プラス1.9%の間、という計算結果となります。
また、9月の生産計画は、補正前の8月計画値から前月比1.0%上昇する計画となっています。

8月計画では、8業種で上昇、3業種で低下の計画
8月の生産計画では、全体11業種のうち、8業種が前月比上昇、3業種が前月比低下の計画となっています。
特に、上昇寄与の高かった業種が生産用機械工業であり、低下寄与の高かった業種は輸送機械工業となっています。
これは、輸送機械工業などでは、長引く半導体不足に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたアジア各国での経済活動制限等により、部材調達不足の影響などで減産する計画となっているものの、生産用機械工業は、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置などで増産する計画となっていることが、背景として考えられます。

9月計画では、7業種で上昇、4業種で低下の計画
9月の生産計画では、全体11業種のうち、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下の計画となっています。
特に、上昇寄与の高かった業種が化学工業と輸送機械工業であり、低下寄与の高かった業種が電子部品・デバイス工業となっています。
これは、上昇寄与の高かった化学工業では、全般的に増産する予定であることや、輸送機械工業では、8月からの反動増などでの増産を予定していることが背景として考えられます。
他方で、低下寄与の高かった電子部品・デバイスについては、8月からの反動減などでの減産を予定していることが背景として考えられます。
ただし、現調査時点が8月上旬であったため、最新の新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や半導体不足などの部材調達の困難化などの影響は十分に反映されていない可能性があり、その点も注意しておく必要があると考えています。

8月と9月の計画を通してみると
8月と9月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
9月までみると、多くの業種で上昇を予定していることなどから、製造工業の生産は7月比で上昇する見込みとなっています。
このため、世界的な需要回復などから、製造工業の生産全体では、均してみると、持ち直しが続くことが期待される計画となっています。
しかしながら、調査時点の影響から、9月の生産計画については、最新の新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や半導体不足などの部材調達の困難化などの影響が十分に反映されていない可能性があり、次回の調査時点では、この下振れリスクがより顕在化してくることも想定しておく必要があります。

なお、仮に企業の生産計画通りの前月比で生産が行われると、8月の鉱工業生産の指数値は101.4、9月の指数値は102.4となります。
一方、8月計画に含まれる上方バイアスを過去の傾向に基づき補正すると、最頻値で前月比0.1%の上昇となり、その場合の指数値は98.2となります。
生産計画には、通常、上方バイアスが含まれていることなどを考えると、9月に計画値ほどの高水準には至らない可能性が高いものの、2021年4月(指数値100.0)を除くと、2019年9月(指数値102.4)以来の生産水準となる可能性もあると考えられます。
生産の先行きについては、上下の振れはあるものの、持ち直しが続くことが期待されます。ただし、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や半導体不足などの部材調達の困難化などの影響については、引き続き十分注意しておく必要があります。

- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202107s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html