製造工業の生産計画では、10月、11月ともに前月比上昇の計画となり、生産の先行きに改善の兆しがみられるが、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響は引き続きの懸念材料。また、現在の企業の生産マインドは弱気である点にも注意が必要。

    経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。

    今回は、10月初旬に調査した10月と11月の生産計画の状況と、10月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。

    10月、11月ともに生産は上昇の計画

    10月上旬に実施した、10月と11月における企業の生産予測調査の結果です。

    10月の生産計画では、前月比6.4%の上昇となる見込みです。この計画どおりに生産されれば、10月の鉱工業生産の実績は、4か月ぶりに前月比上昇が見込まれます。

    ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、10月の生産計画について、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に補正すると、10月の生産実績の見通しは、前月比2.4%の上昇となります。

    また、11月の生産計画については、10月の計画から5.7%の上昇が見込まれており、10月、11月ともに生産は上昇の見込みです。

    ただし、特に10月については、引き続き、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響による下振れリスクが懸念されるため、10月の生産は計画ほどには上昇しない可能性があります。

    図表01

    10月と11月の2か月を通じた生産計画

    10月と11月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。

    10月の生産計画では、全体11業種のうち、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下、11月の生産計画では、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下の計画となっており、製造工業全体の生産は、10月、11月を通して上昇する見込みです。

    図表02

    10月については、引き続き、半導体不足に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたアジア各国での経済活動制限等による部材調達不足の影響があるものの、9月よりはその影響が小さくなると考えられます。そのため、輸送機械工業などで乗用車等の増産が見込まれ、全体では、前月比6.4%の上昇見込みです。

    図表03

    11月については、輸送機械工業などで、これまでの生産減を取り戻す計画となっており、10月同様、乗用車等の生産増が見込まれています。その結果、全体としても、前月比5.7%の上昇見込みとなっています。

    ただし、前述のとおり、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響による下振れリスクは引き続き残るため、10月、11月の生産計画が下振れする可能性には注意が必要です。

    図表04

    10月の生産計画の強気と弱気

    次に企業の生産マインドについてみていきます。

    企業の生産マインドは、9月当初に調べた10月の生産計画が、10月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。

    10月の生産計画における予測修正率はマイナス4.0%となっており、7か月連続で下方修正となっています。

    2020年7月以降、生産計画は上方修正される傾向が続いていましたが、2021年に入ってからは、下方修正される月が多くなっています。

    この結果から、企業の生産マインドは、弱気であると考えられます。

    図表05

    また、生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。

    この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。

    10月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス13.0、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス13.5となっています。単月、トレンド両方の数値がマイナス5を下回っていることからも、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。

    他方で、10月の企業の生産マインドに関する値(マイナス13.0)は、前月(マイナス15.2)よりは改善しており、生産の先行きは改善する兆しもみられます。

    図表06

    生産計画から見る今後の見通し

    10月、11月を通して、生産は上昇する計画であり、先行きの改善も期待される一方で、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響や内外感染症の動向による下振れリスクは引き続き懸念され、生産の先行きには不透明感が残ります。

    また、現在の企業の生産マインドも弱気となっていることから、引き続き、企業の生産動向には注意を払う必要があります。

    結果概要のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
    参考図表集
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202109s.html
    マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html

    お問合せ先

    問合せ先が表示されない場合はこちらのページからご確認ください