2021年10月は、国内向け出荷は前月比で上昇したものの、輸出向け出荷は前月比で低下した。国内向け出荷では生産財、耐久消費財等が上昇に寄与し、輸出向け出荷では生産財、非耐久消費財が低下に寄与した。

    国内向け出荷は4か月ぶりの前月比上昇

    2021年10月の鉱工業出荷は、季節調整済指数で88.3、前月比2.0%と4か月ぶりの上昇となりました。内需(国内向け出荷)は前月比3.1%と4か月ぶりの上昇、外需(輸出向け出荷)は前月比マイナス1.3%と3か月連続の低下となり、内需が出荷全体の上昇に寄与しました。

    出荷水準をみると、まず国内向け出荷指数については、2021年10月の指数値は86.3で、9月の83.7に引き続き、2021年では2番目の低水準となりました。

    他方、輸出向け出荷指数については、2021年10月の指数値は95.9となり、2021年に入ってから最も低い水準にはなりましたが、鉱工業出荷の水準を7.6ポイント上回っています。

    10月は、9月に大きく低下した自動車で反動増があったものの、引き続き、供給制約の影響による生産の弱さが残り、挽回生産までは伸びず、鉱工業出荷は微増に留まりました。

    図表01

    業種別の動き

    10月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、5業種で前月比上昇となりました。輸送機械工業が9月に自動車産業における供給制約の影響による減産により、前月比マイナス35.1%と大きく低下した反動で、10月は前月比29.7%の上昇となり、特に上昇寄与が大きくなりました。なかでも乗用車、車体・自動車部品等が上昇していました。次いで上昇寄与が大きかったのは石油・石炭製品工業でした。なかでも石油製品、石炭製品が上昇していました。

    図表02

    10月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、7業種で前月比低下となりました。特に低下寄与が大きかったのは輸送機械工業となりました。なかでも船舶・同機関、車体・自動車部品等が低下していました。ただし、供給制約の緩和により自動車産業の輸出は増加しており、輸送機械工業の中でも、乗用車、トラック等の完成車の輸出向け出荷は上昇しています。次いで低下寄与が大きかったのは化学工業(除.医薬品)でした。なかでも環式中間物、無機化学工業製品等が低下していました。

    図表03

    需要先用途別の動き

    10月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみます。

    国内向け出荷で上昇寄与が大きかった財別分類は、製造業の中間投入となる生産財で、次いで耐久消費財、非耐久消費財と続き、資本財、建設財が低下となりました。

    輸出向け出荷では、生産財の低下寄与が最も大きく、次いで非耐久消費財が低下、資本財、耐久消費財、建設財が上昇となりました。

    供給制約の緩和により、国内においては自動車産業を中心に生産が回復に転じたため、生産財の国内出荷は上昇したものと考えられます。他方で、輸出向け出荷については、無機・有機化学の設備トラブル等で生産財の輸出向け出荷は低調となりました。

    図表04
    図表05

    輸出仕向け先別の動向

    10月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、米国向け、欧州向け等は上昇したものの、ASEAN向け等は低下となりました。

    図表06

    米国向けは、日本から米国への自動車輸出の割合が高いことから、9月は自動車減産の影響が如実に表れて10%を超える低下となりましたが、10月は反動増もあり、大幅上昇になりました。欧州向けも同様に前月大幅低下の影響もあり、大幅上昇となりました。

    ASEAN向けは2020年5月以降、上昇低下を繰り返しながら回復傾向にあり、2か月ぶりの低下となっています。

    全般的に輸出は回復傾向となっているものの、足下では主要仕向地以外の回復力が弱くなっているので、11月以降の輸出向け出荷の動向が注目されます。

    図表07
    図表08

    輸入品、総供給の動向

    一方、輸入の動向をみると、10月は、季節調整済指数で97.5、前月比マイナス7.6%と2か月連続の低下となりました。輸入は2020年8月以降、上昇傾向で推移しており、2021年3月に95.8と、一旦大幅に低下した以降も再び上昇に転じ、100を上回る指数水準であったものの、2021年3月に次ぐ水準に低下しました。

    業種別の動向をみると、13業種中、9業種が前月比低下、4業種が上昇となり、鉱業、化学工業(除.医薬品)等が低下に寄与し、汎用・業務用機械工業、石油・石炭製品工業等が上昇していました。

    国産は前月比3.0%と4か月ぶりの上昇となり、鉱工業総供給は、前月比0.0%の横ばいとなりました。

    図表09

    2021年10月の出荷は、輸出向け出荷はマイナスとなったものの、国内向け出荷はプラスとなり、4か月ぶりの上昇となりました。

    10月は、自動車産業における供給制約による減産が輸出向け出荷、国内向け出荷の双方に大きな影響を与えた9月の反動が出た結果となりました。

    先行きについては、東南アジアでの感染症拡大に伴い発生している部品供給不足が解消されつつあることや、内外経済の回復に伴い、出荷も中期的には回復が続くことが予想されるため、輸出向け出荷、国内向け出荷がともに上向くことも期待されます。ただし、足下では、新型コロナウイルス感染症の新変異株の発生や、世界的な半導体不足などサプライチェーンの状況がもたらす影響にも十分注意する必要があります。11月以降、出荷が国内向け・輸出向けそれぞれどのように推移していくかについても、十分注意して見ていきたいと考えます。

    結果概要のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result-1.html
    参考図表集
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result/slide/result-utiwake-sanko-202110.html
    鉱工業出荷内訳表、総供給(いわゆるバランス表)をちょっとながめてみました
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20160511iip_bl_gaiyou.html

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