製造工業の生産計画では、12月、1月ともに前月比上昇の計画となり、生産の先行きに改善の兆しがみられる。一方で、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響は縮小しているものの引き続き残っており、企業の生産マインドも弱気を脱していない点に注意が必要。

    経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。

    今回は、12月初旬に調査した12月と2022年1月の生産計画の状況と、12月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。

    12月、1月ともに生産は上昇の計画

    12月上旬に実施した、12月と1月における企業の生産予測調査の結果です。

    12月の生産計画では、前月比1.6%の上昇見込みです。この計画どおりに生産されれば、12月の鉱工業生産の実績は、3か月連続で前月比上昇が見込まれます。

    ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、12月の生産計画について、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に補正すると、12月の生産実績の見通しは、前月比マイナス1.3%と低下になります。

    12月は、国内自動車メーカーから、東南アジアからの部品供給不足等を理由に生産調整が発表されており、生産計画よりも下振れするリスクを抱えています。

    なお、1月の生産計画については、12月の計画から5.0%の上昇が見込まれており、12月が低下する懸念はあるものの、全体的な方向としては、回復基調にあると考えられます。

    図表01

    12月と1月の2か月を通じた生産計画

    12月と1月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。

    12月の生産計画では、全体11業種のうち、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下、1月の生産計画では、8業種が前月比上昇、3業種が前月比低下の計画となっており、製造工業全体の生産は、12月、1月を通して上昇する見込みです。

    図表02

    12月については、半導体不足やアジアでの感染症拡大に伴う部品供給不足といった供給面での制約が解消の方向に進むことが期待されたことにより、生産計画は上昇となっています。ただし、先でも述べたとおり、12月は、国内自動車メーカーによる生産調整が発表されるなど、供給制約が依然として残っていることによる下振れリスクの懸念があります。

    図表03

    1月についても、12月同様、全体としては増産の計画となっており、12月以上の上昇見込みとなっています。1月は、生産用機械工業が牽引する計画となっており、半導体需要の引き続きの好調から、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置等の増産が見込まれています。

    図表04

    12月の生産計画の強気と弱気

    次に企業の生産マインドについてみていきます。

    企業の生産マインドは、11月当初に調べた12月の生産計画が、12月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。

    12月の生産計画における予測修正率はマイナス2.6%となっており、9か月連続で下方修正となっています。

    12月の生産計画は、前月比で上昇が見込まれるものの、先に述べた通り、供給制約が残ることによる下振れリスクが懸念されます。

    このような状況にあるため、企業の生産マインドは、弱気であると考えられます。

    図表05

    また、生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。

    この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。

    12月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス5.5、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス17.4となっています。単月、トレンド両方の数値がマイナス5を下回っていることからも、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。

    他方で、12月の企業の生産マインドに関する値(マイナス5.5)は、前月(マイナス10.2)から改善しており、生産の先行きは改善する兆しがみられます。

    図表06

    生産計画からみる今後の見通し

    12月、1月を通して、生産は上昇する計画であり、先行きの改善が期待されます。他方で、半導体不足などサプライチェーンを通じた影響などは小さくなっているものの、引き続き、その影響による下振れリスクは残っていると考えられ、生産の先行きは不透明感が残っています。

    また、現在の企業の生産マインドも弱気から脱していないことから、引き続き、企業の生産動向には注意を払う必要があります。

    結果概要のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
    参考図表集
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202111s.html
    マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html

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