経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、1月初旬に調査した1月と2月の生産計画の状況と、1月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。
1月、2月ともに生産は上昇の計画
1月上旬に実施した、1月と2月における企業の生産予測調査の結果です。
1月の生産計画では、前月比5.2%の上昇見込みです。この計画どおりに生産されれば、1月の鉱工業生産の実績は、2か月ぶりに前月比上昇が見込まれます。
ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、1月の生産計画について、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に補正すると、1月の生産実績の見通しは、前月比0.6%の上昇となります。
2月の生産計画については、1月の計画から2.2%の上昇が見込まれており、全体的な方向としては、回復基調にあると考えられます。

1月と2月の2か月を通じた生産計画
1月と2月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
1月の生産計画では、全体11業種のうち、9業種が前月比上昇、2業種が前月比低下、2月の生産計画では、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下の計画となっており、製造工業全体の生産は、1月、2月を通して上昇する見込みです。

1月については、前月12月が多くの業種で、半導体不足やアジアからの部品供給不足等の影響で減産となったことから、その挽回のため、生産増加が見込まれています。また、半導体需要の引き続きの好調から、集積回路等の増産も見込まれています。

2月についても、半導体不足等の供給制約の解消が進むことを期待し、多くの業種で1月同様、生産増加が見込まれています。
また、1月同様、半導体需要の好調を受け、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置の増産が見込まれています。

1月の生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきます。
企業の生産マインドは、2021年12月当初に調べた1月の生産計画が、1月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。
1月の生産計画における予測修正率はマイナス2.4%となっており、10か月連続で下方修正となっています。
1月の生産計画は、前月比で上昇が見込まれるものの、これまでの予測修正率の推移をみると、生産計画は下方修正される傾向が続いています。
半導体不足等の供給制約が続いていることが、生産計画が下方修正される要因の一つであり、現在、供給制約が完全に解消されていないため、そのことが予測修正率にも表れていると考えられます。
予測修正率の状況からみると、企業の生産マインドは、弱気であると考えられます。

また、生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。
この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。
1月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス12.6、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス12.5となっています。単月、トレンド両方の数値がマイナス5を下回っており、さらに、単月値も前月(マイナス5.5)から低下しているため、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。

生産計画からみる今後の見通し
1月、2月を通して、生産は上昇する計画であり、先行きの改善が期待されます。他方で、予測修正率等からみる企業の生産マインドは弱気となっており、半導体不足などの供給制約による影響が、生産の先行きに不透明感を与えていると考えられます。
企業の生産マインドが弱気を脱していない現状においては、引き続き、企業の生産動向には注意を払う必要があります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202112s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html