製造工業の生産計画は、5月、6月を通して回復基調にあるものの、部品供給不足の影響等が生産の先行きに不透明感を与えていることから、企業の生産マインドは弱気が続いていると考えられる。引き続き、供給制約等の影響を注視する必要がある。

    経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。

    今回は、5月初旬に調査した5月と6月の生産計画の状況と、5月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。

    5月、6月の生産はともに上昇の計画

    5月初旬に実施した、5月と6月における企業の生産予測調査の結果です。

    5月の生産計画では、前月比4.8%の上昇見込みです。この計画どおりに生産されれば、5月の鉱工業生産の実績は、2か月ぶりに前月比上昇が見込まれます。

    ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、5月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、5月の生産実績の見通しは、前月比マイナス0.5%と低下の見込みです。

    なお、6月の生産計画については、5月の計画から8.9%の上昇見込みです。

    図表01

    5月と6月の2か月を通じた生産計画

    5月と6月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。

    5月の生産計画では、全体11業種のうち、9業種が前月比上昇、2業種が前月比低下、6月の生産計画では、7業種が前月比上昇、4業種が前月比低下の計画となっています。製造工業全体の生産は、5月、6月を通して大幅に上昇する見込みであり、先行きの全体的な方向としては、回復基調と考えられます。

    図表02

    4月の鉱工業生産は、海外向けの減少で電子部品・デバイス工業が低下したほか、中国・上海市のロックダウンの影響等から生産用機械工業や自動車工業が低下し、全体の生産も低下となりました。

    一方、5月の生産計画は、「半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置」が含まれる生産用機械工業が、旺盛な半導体需要を背景に生産計画を伸ばすとともに、自動車産業を中心とした輸送機械工業の回復生産が全体を牽引する見込みです。

    ただし、4月に引き続き中国・上海市のロックダウンの影響が、自動車メーカーを中心に続いていることから、生産が下振れするリスクがあると考えられます。

    図表03

    6月の生産計画については、自動車産業を中心とした輸送機械工業の回復生産が続くととともに、半導体需要の好調を背景とした電子部品・デバイス工業の生産が伸びる見通しであり、全体としても非常に高い上昇が期待されています。

    5月、6月の計画を通してみても、製造工業全体が回復基調で推移すると考えられます。

    図表04

    5月の生産計画の強気と弱気

    次に企業の生産マインドについてみていきます。

    企業の生産マインドは、4月当初に調べた5月の生産計画が、5月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。

    5月の生産計画における予測修正率はマイナス3.7%となっており、14か月連続で下方修正となっています。

    生産計画が下方修正される状況が長期間続いている背景には、半導体不足等の供給制約の影響が及んでいることが考えられます。

    特に2022年に入ってから、計画は高いものの、実績は計画をかなり下回る状況が続いており、更に、生産計画も下方修正が続いていることから、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。半導体不足をはじめ、様々な供給制約の発生が企業の生産マインドに影響を与えているものと考えられます。

    図表05

    生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。

    この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。

    5月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス12.1、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス10.7となっています。単月、トレンド両方の数値がマイナス5を下回っており、企業の生産マインドは弱気となっています。

    ここからも、様々な供給制約の発生が企業の生産マインドに影響を与えていることが考えられます。

    図表06

    生産計画からみる今後の見通し

    生産計画は、5月、6月を通して、回復基調にあると考えられますが、一方で、予測修正率等からみる企業の生産マインドは弱気が続いており、部品供給不足の影響等が、生産の先行きに不透明感を与えていると考えられます。

    特に、2022年に入ってからは、生産計画に対し実績がかなり下振れる傾向が続いており、計画と実績の乖離にも注意が必要です。

    今後の生産の動向については、供給制約等が、企業の生産マインドに与える影響を注視する必要があると考えます。

    結果概要のページ
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
    参考図表集
    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202204s.html
    マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
    https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html

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