経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、7月初旬に調査した7月と8月の生産計画の状況と、7月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。
7月、8月の生産はともに上昇の計画
7月初旬に実施した、7月と8月における企業の生産予測調査の結果です。
7月の生産計画では、前月比3.8%の上昇見込みです。この計画どおりに生産されれば、7月の鉱工業生産の実績は、2か月連続の上昇が見込まれます。
ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、7月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、7月の生産実績の見通しは、前月比マイナス0.9%と低下の見込みです。
なお、8月の生産計画については、7月の計画から6.0%の上昇見込みです。

7月と8月の2か月を通じた生産計画
7月と8月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
7月の生産計画では、全体11業種のうち、5業種が前月比上昇、6業種が前月比低下、8月の生産計画では、10業種が前月比上昇、1業種が前月比低下の計画となっています。製造工業全体の生産は、7月、8月を通して上昇する見込みです。

6月の鉱工業生産は、中国でのロックダウンの影響等の緩和から自動車工業や電気・情報通信機械工業が上昇し、全体の生産も大きく上昇しました。
一方、7月の生産計画は、「半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置」が含まれる生産用機械工業が、堅調な半導体需要を背景に生産計画を伸ばすとともに、ロックダウン解除に伴う部材供給不足の緩和により、自動車産業を中心とした輸送機械工業の生産回復が全体を牽引する見込みです。
ただし、今後も部材供給不足の影響が完全に解消されていないことから、生産が下振れするリスクもあると考えられます。

8月の生産計画については、自動車産業を中心とした輸送機械工業の回復生産が続くとともに、堅調な半導体需要を背景とした生産用機械工業の生産が伸びる見通しです。
7月、8月の計画を通してみても、製造工業全体の上昇が期待されます。

7月の生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきます。
企業の生産マインドは、6月当初に調べた7月の生産計画が、7月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。
7月の生産計画における予測修正率はマイナス1.0%となっており、16か月連続で下方修正となっています。
生産計画が下方修正される状況が長期間続いている背景には、半導体不足等の供給制約の影響が及んでいることが考えられます。
特に2022年に入ってから、計画は高いものの、実績は計画をかなり下回る状況が続いており、更に、生産計画も下方修正が続いていることから、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。半導体不足や中国における経済活動の抑制など、様々な供給制約の発生が企業の生産マインドに影響を与えているものと考えられます。

生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。
この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。
7月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス8.5、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス9.6となっています。単月、トレンド両方の数値がマイナス5を下回っており、企業の生産マインドは弱気となっています。
ここからも、様々な供給制約の発生が企業の生産マインドに影響を与えていることが考えられます。

生産計画からみる今後の見通し
生産計画は、7月、8月を通して、上昇が期待されますが、一方で、予測修正率等からみる企業の生産マインドは弱気が続いており、部材供給不足の影響等が、生産の先行きに不透明感を与えていると考えられます。
特に、2022年に入ってからは、生産計画に対し実績がかなり下振れる傾向が続いており、計画と実績の乖離にも注意が必要です。
今後の生産の動向については、供給制約等が、企業の生産マインドに与える影響を引き続き注視する必要があると考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202206s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html