国内向け出荷は、3か月ぶりの前月比上昇
2022年11月の鉱工業出荷は、季節調整済指数93.0、前月比マイナス0.5%と、3か月連続の低下となりました。2022年度初めは中国でのロックダウンの影響などを受けて低下しましたが、ロックダウンの解除以降、6月からは部材供給不足の影響が緩和したこともあり、3か月連続で上昇していました。しかし、9月はこれまでの上昇の反動などから内需が弱く、さらに10月は外需も弱く、連続の低下となっておりましたが、11月も僅かに前月を下回り、3か月連続の前月比低下となりました。
しかし、内訳をみると、内需(国内向け出荷)は前月比0.7%と3か月ぶりの上昇、外需(輸出向け出荷)も同0.7%と2か月ぶりの上昇となりました。これは、それぞれの系列で季節指数を計算して季節調整を行っていることから生じた逆転現象であり、符号が微妙な状況であると言えるでしょう。
出荷水準をみると、2022年11月の指数値は、国内向けが90.6、輸出向けが106.5となりました。感染症が拡大する直前の2020年1月の指数値は、国内向け、輸出向けともに97.1でしたが、それらと比較すると、輸出向けについては、感染症拡大以前の水準を超えていますが、国内向けについては、いまだ低い出荷水準が続いています。

業種別の動き
11月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、5業種で前月比上昇となりました。輸送機械工業が前月比6.2%と上昇し、なかでも車体・自動車部品、航空機部品が上昇していました。次いで上昇寄与が大きかったのは電気・情報通信機械工業でした。なかでも無線通信機器、電池等が上昇していました。

11月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、6業種で前月比上昇となりました。上昇寄与が大きかったのはプラスチック製品工業で、なかでも工業用プラスチック製品、プラスチック製管・フィルム・シート・建材類等が上昇していました。次いで上昇寄与が大きかったのは生産用機械工業で、なかでも建設・鉱山機械、生活関連産業用機械等が上昇していました。

需要先用途別の動き
11月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみます。
国内向け出荷で上昇寄与が大きかった財別分類は、生産財で、次いで非耐久消費財が上昇となりました。
輸出向け出荷で上昇寄与が大きかった財別分類は耐久消費財で、次いで非耐久消費財等が上昇となりました。


輸出仕向け先別の動向
11月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、欧州向け、韓国向けは前月比上昇となりましたが、米国向け、ASEAN向け、中国向け等は前月比低下となりました。

上昇寄与がもっとも大きいのは欧州向けで、輸送機械工業、プラスチック製品工業等の大幅上昇により、前月比上昇となりました。韓国向けは電気・情報通信機械工業、生産用機械工業等により上昇となっています。
一方、米国向けは輸送機械工業等の低下により、3か月連続の低下となりました。

輸入品、総供給の動向
一方、輸入の動向をみると、10月をピークに続く円安の影響もあり、季節調整済指数で107.5、前月比マイナス8.8%と4か月ぶりの低下となりました。
業種別の動向をみると、13業種中、13業種全てが前月比低下となり、電気・情報通信機械工業、鉱業等が低下に寄与しています。
国産は前月比0.8%と3か月ぶりの上昇となり、その結果、鉱工業総供給は、前月比マイナス3.6%と2か月ぶりの低下となりました。

部材供給不足の影響緩和が継続していたことなどから、回復傾向を示してきていた鉱工業出荷ですが、11月は前月の反動等による汎用・業務用機械工業の低下等で全体では低下しました。しかし、これまで出荷全体を牽引していた輸出向けが、円安効果がラグを持って出てくると見込まれることから、回復傾向に向かうと考えられます。
ただ、中国では「ゼロコロナ政策」の終了で再び感染者拡大の影響や、世界的な半導体不足などサプライチェーンの状況がもたらす影響、物価上昇の影響や事実上の利上げに伴う為替の変動にも十分注意する必要があります。12月以降、出荷が国内向け・輸出向けそれぞれどのように推移していくかについても、十分注意して見ていきたいと考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result/slide/result-utiwake-sanko-202211.html
- 鉱工業出荷内訳表、総供給(いわゆるバランス表)をちょっとながめてみました
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20160511iip_bl_gaiyou.html