経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、８月初旬に調査した８月と９月の生産計画の状況と、８月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。
８月、９月の生産はともに上昇の計画
８月初旬に実施した、８月と９月における企業の生産予測調査の結果です。
８月の生産計画では、前月比２.６％の上昇を見込んでいます。この計画どおりに生産されれば、８月の鉱工業生産の実績は、２か月ぶりの上昇が見込まれます。
ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、８月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、８月の生産実績の見通しは、前月比マイナス１.４％と低下見込みです。
なお、９月の生産計画については、８月の計画から２.４％の上昇見込みです。
８月と９月の２か月を通じた生産計画
８月と９月の２か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
８月の生産計画では、全体１１業種のうち、７業種が前月比上昇、４業種が前月比低下、９月の生産計画では、７業種が前月比上昇、３業種が前月比低下、１業種が前月比横ばいの計画となっています。製造工業全体の生産は、８月、９月を通して上昇する見込みです。
８月の生産計画は、電気・情報通信機械工業が、産業用電気機械や家電・空調・照明器具の増産見込み等により、生産の上昇を見込んでいることなどから、全体としては上昇の見込みです。
なお、海外景気の下振れ等により、生産計画は下方修正されるリスクもあり、先行きについては注視が必要です。
９月の生産計画も、電気・情報通信機械工業が、産業用電気機械の増産見込み等により、生産の上昇を見込んでいることなどから、全体としては上昇する見通しです。
８月の生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきます。
企業の生産マインドは、７月当初に調べた８月の生産計画が、８月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか（予測修正率）をみることで確認することができます。
８月の生産計画における予測修正率はマイナス１.７％となっており、２９か月連続で下方修正となっているものの、低下幅の縮小傾向がみられます。
この背景には、これまでの半導体不足などの供給制約の影響が足下で緩和していることが考えられますが、先行きについては海外景気の下振れ等の懸念が続いていることから、引き続き、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。
この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス５を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。
８月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス７.５、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス６.１と、単月、トレンド両方の数値がマイナス５を下回ったものの、前月より改善しています。企業の生産マインドは依然として弱気ではあるものの、ここ最近の動きは改善傾向にあります。
生産計画からみる今後の見通し
生産計画は、８月、９月を通してみれば、回復基調の継続が期待され、予測修正率等からみる企業の生産マインドも依然として弱気ではあるものの、改善傾向にあります。
なお、引き続き、海外景気の下振れ等の影響について注視する必要があります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202307s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える！鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html