経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、１１月初旬に調査した１１月と１２月の生産計画の状況と、１１月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。
１１月の生産は低下、１２月の生産は上昇の計画
１１月初旬に実施した、１１月と１２月における企業の生産予測調査の結果です。
１１月の生産計画では、前月比０.３％の低下を見込んでいます。この計画どおりに生産されれば、１１月の鉱工業生産の実績は、３か月ぶりの低下が見込まれます。
ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、１１月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、１１月の生産実績の見通しは、前月比１.９％の低下見込みです。
なお、１２月の生産計画については、１１月の計画から３.２％の上昇見込みです。
１１月と１２月の２か月を通じた生産計画
１１月と１２月の２か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
１１月の生産計画では、全体１１業種のうち、５業種が前月比低下、５業種が前月比上昇、１業種が横ばい、１２月の生産計画では、１１業種全てが前月比上昇の計画となっています。製造工業全体の生産は、１１月は低下、１２月は上昇する見込みであり、ならしてみれば、先行きの全体的な方向は回復基調と考えられます。
１１月の生産計画は、電子部品・デバイス工業が、集積回路の生産低下を見込むことなどから、全体としては低下の見込みです。
なお、海外景気の下振れ等により、生産計画は下方修正されるリスクもあり、先行きについては注視が必要です。
１２月の生産計画は、生産用機械工業が、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置が受注増を見込むことなど、全ての業種で上昇する見通しです。
１１月の生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきます。
企業の生産マインドは、１０月当初に調べた１１月の生産計画が、１１月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか（予測修正率）をみることで確認することができます。
１１月の生産計画における予測修正率はマイナス０.４％となっており、３２か月連続で下方修正となっているものの、低下幅の縮小傾向がみられます。
この背景には、これまでの半導体不足などの供給制約の影響が緩和していることが考えられますが、先行きについては海外景気の下振れ等の懸念が続いていることから、引き続き、企業の生産マインドは弱気であると考えられます。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。
この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス５を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。
１１月の生産計画では、この数値の単月の値はマイナス０.３、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス２.２と、単月とトレンドのいずれもマイナス５を上回り、改善傾向が続いています。企業の生産マインドは依然として弱気ではあるものの、ここ最近の動きは改善傾向にあります。
生産計画からみる今後の見通し
生産計画は、１１月、１２月を通してみれば、回復基調の継続が期待され、予測修正率等からみる企業の生産マインドも依然として弱気ではあるものの、改善傾向にあります。
なお、引き続き、海外景気の下振れ等の影響について注視する必要があります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202310s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える！鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html