経済解析室では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べています。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査しています。
今回は、6月初旬に調査した6月と7月の生産計画の状況と、6月初旬での企業の生産マインドについて解説をします。
6月の生産は低下、7月の生産は上昇の計画
6月初旬に実施した、6月と7月における企業の生産予測調査の結果です。
6月の生産計画では、前月比4.8%の低下を見込んでいます。この計画どおりに生産されれば、6月の鉱工業生産の実績は、2か月ぶりの低下が見込まれます。
ただし、生産計画は、生産実績よりも上振れする傾向があります。そこで、6月の生産計画について、生産実績との間で生じるズレを統計的に補正すると、6月の生産実績の見通しは、前月比6.0%の低下見込みです。
なお、7月の生産計画については、6月の計画から3.6%の上昇見込みです。

6月と7月の2か月を通じた生産計画
6月と7月の2か月の生産計画による業種ごとの生産予測の伸び率を通してみると、以下の図のようになります。
6月の生産計画では、全体11業種のうち、9業種が前月比低下、2業種が前月比上昇、7月の生産計画では、8業種が前月比上昇、3業種が前月比低下の計画となっています。製造工業全体の生産は、6月は低下、7月は上昇する見込みです。

6月の生産計画は、生産用機械工業が、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置の生産低下を見込むなど、全体としては低下する見込みです。

7月の生産計画は、生産用機械工業の半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置や、化学工業の洗剤・化粧品に加えて、電子部品・デバイス工業が集積回路の生産上昇を見込むなど、全体としては上昇する見通しです。

6月の生産計画の強気と弱気
次に企業の生産マインドについてみていきます。
企業の生産マインドは、5月当初に調べた6月の生産計画が、6月当初に再度調べ直した計画と比べ、どの程度変動したか(予測修正率)をみることで確認することができます。
6月の生産計画における予測修正率はマイナス0.9%と、39か月連続で下方修正となっているものの、低下幅は縮小傾向にあります。
この背景には、輸送機械工業における工場稼働再開の影響などが考えられます。

生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値をみることで、企業の生産マインドを推し量ることができます。
この数値の推移と、これまでの景気循環を重ねると、月々の上下動をならしたトレンドが、概ねマイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いという傾向がみられます。
6月の生産計画では、この数値の単月の値は0.0、月々の上下動をならしたトレンドはマイナス0.3と、単月とトレンドのいずれもマイナス5を上回り、改善傾向が続いています。

生産計画からみる今後の見通し
生産計画は、6月は前月比低下、7月は前月比上昇と、先行きは一進一退の推移が見込まれるものの、予測修正率等からみる企業の生産マインドは、輸送機械工業における工場稼働再開の影響などにより、改善傾向にあります。
なお、引き続き、海外景気の下振れ等の影響について注視する必要があります。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-202405s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html