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いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?

2021年7月に、「ウッドショック」の影響というテーマでひと言解説をお届けしましたが、今回は、その続編として、その後の価格高騰の状況を統計で詳細に確認してみます。

輸入価格の動向

まず、輸入価格の動向について、日本銀行の企業物価指数(輸入価格指数)を使って確認してみます。すると、木材・木製品・林産物全体の輸入価格は、2021年9月には、前年末比で69%上昇していることが分かります。加工前の丸太は、相対的に上昇幅は小さかったのですが、それでも、前年末比23%の上昇となっていました。また、合板と集成材は、前年末比でそれぞれ49%と149%(2.49倍)の大幅な上昇となっていますが、足下では、集成材の上昇幅の方が非常に大きくなっています。さらに、製材の輸入価格は、前年末比2.37倍の水準となり、足下の価格高騰も非常に大きいものとなっていることから、今後その影響が本格化してくることが懸念されます。

次に、価格高騰が著しい製材の輸入価格の動きについて着目してみると、米国からの輸入価格が、2021年9月には、前年末比2.75倍に達しており、製材の輸入価格全体を大きく押し上げていることがうかがえます。また、ロシア(北洋)からの輸入価格も、前年末比で96%も高騰していることから、世界的な規模での木材の上昇が生じていることが分かります。欧州からの輸入価格は、8月までは、上昇幅が42%と米ロより相対的に小さかったものの、9月は前月比40%の急騰となり、概ね北洋輸入材と同程度の上昇幅となりました。引き続き、世界市場の動向からは目が離せない状況となっています。

長期化する? 国内木材価格の高騰 -丸太の場合-

次に、国内市場に目を向けてみます。

最初に、丸太の国内価格(企業間の取引価格)について確認します。先述したとおり、丸太の輸入価格が、前年末比23%の上昇であったところ、国内価格は、35%の上昇となっています。このことから、これまで輸入材の丸太を使用していた企業が国産材での調達を検討し、可能な材については切り替えつつあることがうかがえ、次第に国産材の丸太への需要が高まってきているものと考えられます。

特に、ひのき材の丸太に対する需要が高くなっており、9月には、前年末比76%の大幅な価格上昇となっています。ウッドショックの長期化や木材価格の高止まりが継続することを見込んで、来年度以降の加工材の安定的な供給量を確保するため、既に国産材の調達が本格化しているのではないかと思われます。なお、杉材の丸太に対する需要も堅調であり、前年末比29%の価格上昇となっています。

国内における人材やインフラなどに課題を抱えており、国内生産を短期間で大幅に増加させることには、相当の困難さを伴うことから、今後の丸太の国内価格の動向にも引き続き注視していく必要があります。

長期化する? 国内木材価格の高騰 -製材などの場合-

また、木材・木製品の国内価格(企業間の取引価格)についてみると、2021年9月には、前年末比で47%上昇していることが分かります。

合板は、相対的に落ち着いた動きとなっていたものの、製材の国内価格は、前年末比62%の大幅な上昇となっており、製材の輸入価格が前年末比2.37倍の急騰を記録していたことから、国内価格にも一定程度影響を与えたものと考えられます。しかしながら、製材を使用する企業が、自らの利益を一時的に圧縮したことに加えて、代替可能なその需要の一部について、急騰していた輸入材から、相対的に安価な国産材へと調達をシフトさせたことがうかがえ、輸入材価格急騰のショックの一部を一時的に吸収したものと思われます。

他方で、集成材については、先述したとおり、輸入価格は、前年末比2.49倍の上昇となっていたところ、国内価格は、2.27倍の上昇となっています。このことから、集成材については、国際競争力などの観点から、国内での生産体制面での課題もあって、短期的な需要を満たすことが難しく、輸入価格上昇の影響を大きく受けたものと考えられます。また、8月から9月にかけて、集成材の輸入価格は、1ヶ月間で63%の上昇となっているのに対して、集成材の同期間における国内価格は11%の上昇に留まっていることから、今後の国内価格への影響が強く懸念されます。

今回は、輸入価格と国内価格の動向について、利用可能な価格指数のデータを用いながら、最新の状況を確認してきました。その結果、詳細にみてみると、品目によって上昇幅などが異なる状態にあると考えられますが、2021年9月分のデータまでで確認できる範囲では、全体として、足下の丸太を除き、輸入価格も国内価格も引き続き上昇基調を継続していると思われます。したがって、日本国内では、当面は、いわゆるウッドショックといわれる状況が継続する蓋然性が高く、今後の動向を引き続き注視していく必要があると考えています。

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電話: 03-3501-1511(代表)(内線2851)、03-3501-1644(直通)
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最終更新日:2021年10月22日(2022年5月2日グラフの標記等を一部修正)
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