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新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、現在も厳しい状況となっている業種がある一方で、急速に回復した業種もあり、そのひとつに「新築戸建住宅売買業」があります。ただし、「新築戸建住宅売買業」は2020年半ばまでは急速に回復したものの、その後反転して減少となっています(末尾のグラフ参照。)。これは木材価格の高騰によるものと言われています。

現在起こっている木材価格の高騰は、「ウッドショック」と呼ばれ、建築用木材の供給が需要に追いつかないことに起因しており、1970年代に発生した「オイルショック」になぞらえてこのように呼ばれています。木材の輸入量が不足することも見込まれており、木材関連の価格の高騰によって現状の想定価格では住宅建設できなくなる可能性が出てきていますが、この状況を統計でみていきたいと思います。

新型コロナがアメリカの新築住宅需要増をもたらし、その影響が木材の価格に

2020年、新型コロナウイルス感染症による影響により、アメリカでは住宅建設が一時期落ち込みましたが、2020年5月のロックダウン解除後から、住宅建築需要が増加し、7月頃からその動きは顕著になり、2021年2月に低下はしたものの、住宅建築許可件数は前年より高い水準を維持しています。

膨大な財政出動と低金利政策が取られた結果、アメリカではリモートワークで自宅にこもるようになった市民が住宅を郊外に新しく購入したり、リフォームを行ったりする流れが進んでいたと言われ、ここ数年、アメリカの住宅建築需要が伸びており、特に2020年後半には例年の水準を大きく上回る需要がみられます。

もともと、虫害や山火事等で原料が不足しており、コロナで製材所の休業を余儀なくされた中にその動きが加わり、世界では建築用木材需要増の結果、木材価格高騰が引き起こされています。そして現在、その影響が我が国にも及んでいます。

国内の木材流通価格にも影響

アメリカの住宅建設需要増等に影響され、世界的に木材の需給が逼迫していることが原因で、世界的にも木材の価格が上昇しています。 それにより、国内でも2021年に入ってからは、住宅建築などに使用される丸太や製材の輸入価格は、上昇しており、この動きに引っ張られ、国内の丸太や製材価格も上昇しています。

※公表時の「丸太価格の推移」、「製材価格の推移」のグラフの一部に誤りがありましたので、グラフを修正いたしました(2021年7月26日)。

木材価格高騰による新築戸建住宅販売への影響

新築戸建住宅売買業を含む不動産業全体の動きは、感染症拡大の影響が大きかった2020年においても、多少の落ち込みは見られたものの、2020年全体を通してみると、例年と大きく変わらない水準で推移しました。

新築戸建住宅売買業については、不動産業とは異なる動きとなっており、感染症拡大の影響で2020年4月に大きく落ち込んだ後、8月まで大きく回復し、その結果、2020年は前年を上回る水準となりました。

ただし、月単位での動きを見ると、新築戸建住宅売買業は2020年8月をピークに大きく低下しており、輸入材の価格上昇と連動するように低下しています。

コロナショックで落ち込んだ新築戸建住宅販売がようやく回復してきた矢先に、「ウッドショック」で足止めされた格好となっています。

住宅の建築等に使われる木材の7割弱が輸入材であることから、輸入材価格高騰をきっかけに、国産材へ切り替えを進めていくべきとの意見もあります。しかし、国内林業は労働力不足、市場価格が維持できないなどの構造的な問題や国産材の性能では代替できないなど、簡単に国産材の供給を増やすことが難しいという課題を抱えています。

今回のウッドショックは、一時的な現象との見方もありますが、海外依存度が高い日本のサプライチェーンの脆弱性をあらためて浮き彫りにしたものであり、国産材に注目が集まっている好機をどのように活かすのか、今後、国産材の活用を含め、サプライチェーンの強化に向け対策を講じていくことが必要と考えられます。

ウッドショックの続稿は、ひきつづき下記より確認できます。その後の価格高騰の状況を統計で詳細に解説していますので合わせてご覧ください。

  _ いつまで続くウッドショック (2021年10月22日公表)

  _ どうなったウッドショック (2022年5月2日公表)

問合せ先

経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
電話: 03-3501-1511(代表)(内線2851)、03-3501-1644(直通)
FAX : 03-3501-7775
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最終更新日:2021年7月19日
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