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国際産業連関表
1990年日・米・EU・アジア多国間国際産業連関表
トピックス-3. 日米の経済成長の変化がアジア経済に及ぼす影響
1990年世界表から導出される付加価値誘発係数を使って、例えば日本に1億ドルの最終需要の変動(GDEの増加又は減少)があった場合、生産波及を通じて日本はもちろんのこと日本以外の各3か国・地域、例えばアジア地域(8か国全体)に対してどれくらいの付加価値額(ほぼGDPに対応)を誘発するか(注)がわかる。
そこで、仮に日本及び米国の1997年の名目国内総生産(GDP)(日本:4.2兆ドル、米国:8.1兆ドル)をベースに、それぞれ1%減少したならば(日本:▲419億ドル、米国:▲811億ドル)、この減少額に冒頭述べた付加価値誘発係数(日本のアジア地域に対する付加価値誘発係数:0.0139、米国のアジア地域に対する付加価値誘発係数:0.0102)を乗ずることによってアジア経済に及ぼす影響がどのくらいになるのかを試算してみる。
(注)ここでの分析は、国際産業連関モデルによる各国間の貿易を通じた付加価値誘発額を計測したものであり、所得波及を通じた乗数効果を計測したものではない。
(1) 日米のアジア経済への影響比較
この計算結果から(図表13)、日本のGDPの1%減少はアジア地域のGDPを▲5.8億ドル、同じく米国のGDPの1%減少はアジア地域のGDPを▲8.3億ドル引き下げる効果があることがわかる。
アジア経済に及ぼす影響については日米間で2.5億ドルの差があり、米国の方が日本よりも大きい(米国の影響は日本の約1.4倍)ことがわかる。これは付加価値誘発係数いわゆる最終需要1単位当たりでみたアジア地域のGDPへの影響が、日本の方が米国の約1.4倍効果が大きいものの、GDP規模では米国の方が日本よりも約1.9倍大きく、この規模効果の影響の方が大きいことによる。
(2) 日米の相手国経済への影響との比較
次に、日本のGDP1%減少は米国のGDPを▲6.0億ドル引き下げる効果があり、これはアジア経済に及ぼす影響とほぼ同程度の規模である。これに対して、米国のGDP1%減少は日本のGDPを▲11.4億ドル引き下げる効果があり、アジア地域の経済に及ぼす影響に比べ、日本経済に及ぼす影響の方が3.1億ドル大きいことがわかる。
日本 | 米国 | アジア | ||
---|---|---|---|---|
97年名目GDP(億ドル) | 41,902 | 81,109 | 22,733 | |
日本 | 1%減少額(億ドル) 付加価値誘発係数 付加価値誘発額 (90年対米ドルレート) 90年GDP比(%) |
(▲419) - - - |
0.0142 ▲6.0 ▲0.007 |
0.0139 ▲5.8 ▲0.026 |
米国 | 1%減少額(億ドル) 付加価値誘発係数 付加価値誘発額 (90年対米ドルレート) 90年GDP比(%) |
0.0141 ▲11.4 ▲0.027 |
(▲811) - - - |
0.0102 ▲8.3 ▲0.036 |
(3) 日米経済成長率が同時に低下した場合の影響
さらに、日米経済が同時に成長率を1%引き下げた場合、アジア経済に及ぼす影響は全体で▲14.1億ドルとなる(図表13中の▲5.8と▲8.3を合算)。これは1997年のアジア地域の名目GDP(2.3兆ドル)と比べると、▲0.06%に相当する。
このように日本及び米国経済の成長率の低下は、貿易を通じてアジア地域の生産誘発を減少させ、それに伴って経済成長率が低下することわかる。
(4) 日本の98年の経済成長率の低下の影響
また、日本の1998年の経済成長率が1997年の名目GDPに対して▲1.8%(754ドル)のマイナスであるとの政府経済見通しが出ているが、今まで述べたのと同じ方法によって、この日本の経済成長率の低下が生産波及を通してアジア経済に及ぼす影響を計算すると、▲10.5億ドルとなり(図表13中の▲5.8×1.8)、この日本経済のマイナス成長の影響は、アジア地域の1997年のGDPの▲0.05%に相当することがわかる。
なお、緊急経済対策の経済再生の道筋にもあるように「1999年度は、はっきりとしたプラス成長へ変換し、回復基盤を固める年とする」ことが実現すれば、日本の経済がプラスに転換することから、アジア地域のGDPを0.05%以上押し上げる効果を持つことになる。