1.産業標準化事業表彰 特別シンポジウム
経済産業省では、2023年6月に基本政策部会の取りまとめを公表し、「日本型標準加速化モデル」を提示しています。「日本型標準加速化モデル」の実現の契機とするため、産業標準化事業表彰式と併せて標準化をテーマとしたシンポジウムを2023年10月17日に開催しました。標準化が市場の創出及び国際競争力の強化に直結すること、標準化における我が国のプレゼンスの維持・向上に向けて企業やアカデミアの標準化活動が重要になることを発信しました。本シンポジウムでは、標準化に関する専門家による講演や、本年度の産業標準化事業表彰受賞者による講演を行うとともに、近年話題となっているAIを題材に、DX×標準化をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。
会場来場者89名、ライブ配信視聴者数379名の合計468名が視聴し、企業やアカデミア関係者等幅広い分野の方々に参加いただきました。

会場の様子
2.当日のハイライト
①基調講演「日本型標準加速化モデル」
経済産業省 産業技術環境局 畠山 陽二郎 局長
日本の標準化活動の在るべき姿や課題・取組事項の整理を行うため、本年6月20日に「日本産業標準調査会基本政策部会取りまとめ」として提示された「日本型標準加速化モデル」の概要等について紹介を行いました。 
基調講演「日本型標準加速化モデル」(アーカイブ動画)
○主なポイント
・自社の製品等を確実に市場に展開するためには、「価格」や「品質」に加えて、新たな価値軸が必要。価値軸を生み出し、それを市場
に繋げることこそが、今日的な意味での「市場創出戦略」
・戦略的・能動的に市場創出していくときに、標準化は有力な手法になるということを認識し、選択していくことが重要。
・標準化における「基盤的活動」は持続的に維持しなくてはならない。同時に新たな価値軸を生み出すための市場創出手段としての「戦
略的活動」をこれまで以上に拡大していく必要がある。
・縦横無尽に標準化手法が活用される環境を整備し、消費者が暮らしやすく、企業が成長できる日本を実現していく。
・自社の製品等を確実に市場に展開するためには、「価格」や「品質」に加えて、新たな価値軸が必要。価値軸を生み出し、それを市場
に繋げることこそが、今日的な意味での「市場創出戦略」
・戦略的・能動的に市場創出していくときに、標準化は有力な手法になるということを認識し、選択していくことが重要。
・標準化における「基盤的活動」は持続的に維持しなくてはならない。同時に新たな価値軸を生み出すための市場創出手段としての「戦
略的活動」をこれまで以上に拡大していく必要がある。
・縦横無尽に標準化手法が活用される環境を整備し、消費者が暮らしやすく、企業が成長できる日本を実現していく。
②特別講演Ⅰ「競争戦略の基盤論理」
一橋ビジネススクール教授 楠木 健
競争戦略の基盤論理として、自身の著書でも述べている「逆・タイムマシン経営論」に触れつつ、長期利益を維持し続けることの重要性、競合他社との違い・差別化を生み出すために何をしないかを決めることが戦略的意思決定であること等を論じるとともに、その中での標準化の位置づけについても言及がなされました。 
特別講演Ⅰ「競争戦略の基盤論理」(アーカイブ動画)
○主なポイント
・競争戦略のゴールは長期利益を出すこと。どうやったら長いこと儲かり続けるかがあらゆる経営判断の基準になっているべき。
・利益はWTP(お客様が支払いたくなる水準)からC(コスト)を引いた残り。標準化の効用にはWTPが増える効果もCを下げる効果も
ある。
・競争戦略の基本戦略は競合他社との違いをつくること。違いの作り方にはBetter(物差しがある違い)と、Different(物差しがない違
い)がある。戦略で違いを作ることは競争相手に対してDifferentであること。
・戦略というのはトレードオフをすること。いいことと悪いことの選択ではなく、いいことといいことのどちらを取るかに戦略的意思決
定がある。
・標準化で市場や様々なステークホルダーと繋がりながら、顧客から見たときにユニークな存在になることが戦略の目的であり、長期利
益をうみ社会貢献になる。
・競争戦略のゴールは長期利益を出すこと。どうやったら長いこと儲かり続けるかがあらゆる経営判断の基準になっているべき。
・利益はWTP(お客様が支払いたくなる水準)からC(コスト)を引いた残り。標準化の効用にはWTPが増える効果もCを下げる効果も
ある。
・競争戦略の基本戦略は競合他社との違いをつくること。違いの作り方にはBetter(物差しがある違い)と、Different(物差しがない違
い)がある。戦略で違いを作ることは競争相手に対してDifferentであること。
・戦略というのはトレードオフをすること。いいことと悪いことの選択ではなく、いいことといいことのどちらを取るかに戦略的意思決
定がある。
・標準化で市場や様々なステークホルダーと繋がりながら、顧客から見たときにユニークな存在になることが戦略の目的であり、長期利
益をうみ社会貢献になる。
③特別講演Ⅱ「これまでの標準化活動の経験と今後の標準化における期待」
内閣総理大臣表彰受賞者 東芝エネルギーシステム株式会社 林 秀樹
内閣総理大臣表彰受賞者より、IEC等標準化活動の経験の紹介とともに、標準化がビジネス戦略のツールであること、スピードが雌雄を決定すること、ものづくりの前から規格の提案合戦が始まっており、標準化を見越した戦略がマストであることや、人材育成の必要性などについて講演いただきました。 
特別講演Ⅱ「これまでの標準化活動の経験と今後の標準化における期待」(アーカイブ動画)
○主なポイント
・国際標準化自体も急速に変化してきている。範囲が広がっているだけでなく手法も変化している。もっと重要な点として、標準化活動
そのものの重要性と方向性も変化してきているのではないか。
・標準化はビジネス戦略のツール。何を決め、何を決めさせないかのビジネスモデルが必要。
・「技術で勝って、市場で負ける」これを防ぎたい。「技術で勝って、市場でも勝つ」そのための標準化。
・Speedが雌雄を決する。積極的に提案しなければならない。99点の標準を提案しても、その前に某国から50点の提案が出れば、その国
に先願権がある。
・物づくり前から提案合戦は始まっている。「標準化を見越した戦略」がmust、watchでは遅い、連動と思っていても方向性が違うため
駄目。
・積極的に参加し、発言する必要がある。
・国際標準化自体も急速に変化してきている。範囲が広がっているだけでなく手法も変化している。もっと重要な点として、標準化活動
そのものの重要性と方向性も変化してきているのではないか。
・標準化はビジネス戦略のツール。何を決め、何を決めさせないかのビジネスモデルが必要。
・「技術で勝って、市場で負ける」これを防ぎたい。「技術で勝って、市場でも勝つ」そのための標準化。
・Speedが雌雄を決する。積極的に提案しなければならない。99点の標準を提案しても、その前に某国から50点の提案が出れば、その国
に先願権がある。
・物づくり前から提案合戦は始まっている。「標準化を見越した戦略」がmust、watchでは遅い、連動と思っていても方向性が違うため
駄目。
・積極的に参加し、発言する必要がある。
④パネルディスカッション「豊かなデジタル社会の実現へ、日本の課題と標準化の可能性」
パネリスト :島根大学 津本 周作 教授
日本電気株式会社 遠藤 信博 特別顧問
株式会社エクサウィザーズ 大植 択真 常務取締役
モデレーター:日経BP総合研究所 菊池 隆裕 研究員
デジタル社会のあり方に見識を持つ3名のパネリストに登壇いただき、DXが進行する世界において、大きく変わる市場メカニズムの変化や、その中で日本が競争力を高めていくための方策について、AIを例としながら、標準化という手法の持つ可能性や必要性等について議論を行いました。 日本電気株式会社 遠藤 信博 特別顧問
株式会社エクサウィザーズ 大植 択真 常務取締役
モデレーター:日経BP総合研究所 菊池 隆裕 研究員


パネルディスカッション「豊かなデジタル社会の実現へ、日本の課題と標準化の可能性」①(アーカイブ動画)
○主なポイント
・データを直接、価値源泉とすることが可能となり、全体最適型のソリューションを作ることができるようになった。その際には標準化
を用いないと全体最適型のソリューションの価値を高めることができない。
・医療の現場では、放射線画像診断や内視鏡の画像診断ではAIの活用が進んできている。海外の事例としてインドではAIを活用したチャ
ットでのオンライン診療システムが運用されている。
・生成AIやその代表であるチャットGPTが出てきた結果、民間の浸透が一気に進んできた。
・生成AIが出てきてからシンギュラリティが10年~20年早まり、これまで人間が得意としていた分野でAIが超えるのが2030年と見立て
ている論文等が出てきている。
・大病院では電子カルテ化が進んでおり、近未来的には画像診断、脳波等の波形、血液診断等についてAIの活用が進む。治療について
は、ガイドライン等治療に関する標準化が進みつつあり、これをAIで治療支援に持って行くというのは実用段階になっていくだろう。
・リアルタイム性機能、リモート機能、ダイナミカルに価値を作ることができる、この3つがICTにより実現できるようになり、2017年
からAIが使われるようになった。これから先にAIが更に進化をしていくにはICTの進化が必要。
・少子化に向かっており、それを支えるにはロボットをアシストのツールとして使っていくことが必要。ロボットは無線でしか動けない
ため、レイテンシーを上げることができるか。オートマチックカーであっても様々な情報を搭載したコンピュータで処理するのであれ
ば良いが、基地局で処理を行いその情報を車に送るのであれば無線ネットワークの構築が必要。
・AIを進化させるには、良質のデータを集めることが必要。良質のデータを集めるためにはセンサーを開発する必要があり、今後開発競
争が重要な領域になる。
・標準化して価値を作り上げようとしたときに、10年後どんな価値を作ることが人間社会に役に立つかをみんなで作り上げることが必
要。標準化のフォロワーになってしまうと、新たな価値を積極的に作る立場になれない。標準化はリーダーシップをもって入り込んで
いき、KGIを共有化していく作業に入らなければフォロワーになってしまう。
・データを直接、価値源泉とすることが可能となり、全体最適型のソリューションを作ることができるようになった。その際には標準化
を用いないと全体最適型のソリューションの価値を高めることができない。
・医療の現場では、放射線画像診断や内視鏡の画像診断ではAIの活用が進んできている。海外の事例としてインドではAIを活用したチャ
ットでのオンライン診療システムが運用されている。
・生成AIやその代表であるチャットGPTが出てきた結果、民間の浸透が一気に進んできた。
・生成AIが出てきてからシンギュラリティが10年~20年早まり、これまで人間が得意としていた分野でAIが超えるのが2030年と見立て
ている論文等が出てきている。
・大病院では電子カルテ化が進んでおり、近未来的には画像診断、脳波等の波形、血液診断等についてAIの活用が進む。治療について
は、ガイドライン等治療に関する標準化が進みつつあり、これをAIで治療支援に持って行くというのは実用段階になっていくだろう。
・リアルタイム性機能、リモート機能、ダイナミカルに価値を作ることができる、この3つがICTにより実現できるようになり、2017年
からAIが使われるようになった。これから先にAIが更に進化をしていくにはICTの進化が必要。
・少子化に向かっており、それを支えるにはロボットをアシストのツールとして使っていくことが必要。ロボットは無線でしか動けない
ため、レイテンシーを上げることができるか。オートマチックカーであっても様々な情報を搭載したコンピュータで処理するのであれ
ば良いが、基地局で処理を行いその情報を車に送るのであれば無線ネットワークの構築が必要。
・AIを進化させるには、良質のデータを集めることが必要。良質のデータを集めるためにはセンサーを開発する必要があり、今後開発競
争が重要な領域になる。
・標準化して価値を作り上げようとしたときに、10年後どんな価値を作ることが人間社会に役に立つかをみんなで作り上げることが必
要。標準化のフォロワーになってしまうと、新たな価値を積極的に作る立場になれない。標準化はリーダーシップをもって入り込んで
いき、KGIを共有化していく作業に入らなければフォロワーになってしまう。
⑤閉会にあたって「標準化活動による市場の創出に向けて」
経済産業省 産業技術環境局 西川 奈緒 基準認証統括戦略官/国際標準課長
シンポジウム全体の振り返りを行い、戦略的な標準化の活用という観点でオープンクローズ戦略や、経営戦略の一つのツールとして標準活動を位置づけ市場創出に向けた道筋を描くことの重要性を説明するとともに、今後の経済産業省の基準認証政策の方向性について紹介を行いました。 
閉会にあたって「標準化活動による市場の創出に向けて」(アーカイブ動画)
○主なポイント
・標準化というツールを戦略的に活用頂くことで市場の創出が可能であることを共通の認識としたい。
・知的財産と標準化活動の提携、すなわち、オープン&クローズ戦略の考え方が重要。自社の強みや特許をクローズ部分として維持しつつ、それを標準化によるオープン部分と組み合わせて活用する戦略を持つことで、自社の特徴や優位性を浮かび上がらせ市場の創出・獲得の効果を更に高めることができる。
・様々な事業活動の側面と標準というツールを組み合わせて一体的に検討することが必要。標準というツールをどのように位置づけ活用していくかは経営戦略そのものになると思っている。企業の皆様には、経営戦略におけるツールの一つとして標準活動を位置づけ、市場創出に向けた道筋を描いて頂きたい。
・日本企業やアカデミア等の皆様に、自らルールを積極的に形成することで市場創出を実現していただくことを強く期待し、経済産業省としてもそれらを支える取組・施策を講じ、縦横無尽に標準化手法が活用される環境を整備していくことをお誓いする。
・標準化というツールを戦略的に活用頂くことで市場の創出が可能であることを共通の認識としたい。
・知的財産と標準化活動の提携、すなわち、オープン&クローズ戦略の考え方が重要。自社の強みや特許をクローズ部分として維持しつつ、それを標準化によるオープン部分と組み合わせて活用する戦略を持つことで、自社の特徴や優位性を浮かび上がらせ市場の創出・獲得の効果を更に高めることができる。
・様々な事業活動の側面と標準というツールを組み合わせて一体的に検討することが必要。標準というツールをどのように位置づけ活用していくかは経営戦略そのものになると思っている。企業の皆様には、経営戦略におけるツールの一つとして標準活動を位置づけ、市場創出に向けた道筋を描いて頂きたい。
・日本企業やアカデミア等の皆様に、自らルールを積極的に形成することで市場創出を実現していただくことを強く期待し、経済産業省としてもそれらを支える取組・施策を講じ、縦横無尽に標準化手法が活用される環境を整備していくことをお誓いする。
3.当日のプログラム
2023年10月17日(火) 14:30~17:40 【東京・永田町】都市センターホテル コスモスホールにて開催。ライブ配信も同時実施。講演テーマ | 登壇者 | ||
14:30 – 14:50 | 20分 | ①主催者挨拶及び基調講演「日本型標準加速化モデル」 | 経済産業省 産業技術環境局 畠山 陽二郞 局長 |
14:50 – 15:30 | 40分 | ②特別講演Ⅰ「競争戦略の基盤論理」 | 一橋大学 ビジネススクール 楠木 健 氏 |
15:30 – 16:00 | 30分 | ③特別講演Ⅱ(受賞者講演) 「これまでの標準化活動の経験と今後の標準化における期待」 |
内閣総理大臣表彰受賞者 東芝エネルギーシステム株式会社 林 秀樹 氏 |
16:00 – 16:10 | 10分 | 休憩 | |
16:10 – 17:30 | 80分 | ④パネル講演・質疑有 「豊かなデジタル社会の実現へ、日本の課題と標準化の可能性」 |
パネリスト 島根大学 津本 周作 教授 日本電気株式会社 遠藤 信博 特別顧問 株式会社エクサウィザーズ 大植 択真 常務取締役 モデレーター 日経BP総合研究所 菊池 隆裕 研究員 |
17:30-17:40 | 10分 | 閉会にあたって 「標準化活動による市場の創出に向けて」 |
経済産業省 産業技術環境局 西川 奈緒 基準認証統括戦略官/国際標準課長 |
【参考リンク】
- ・経済産業省HP「日本産業標準調査会基本政策部会「取りまとめ」(日本型標準加速化モデル)を公表しました。」
- ・経済産業省HP「産業標準化推進月間」(※過去に行った講演会については、こちらから)
- ・経済産業省HP「表彰制度」(※産業標準化事業表彰式の模様は、こちらから)
- ・経済産業省HP「過去の表彰受賞者インタビュー」(※産業標準化事業表彰受賞者の功績、皆様に向けたメッセージは、こちらから)
最終更新日:2023年12月20日