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ADnewsletter 2022年12月号(諸外国の貿易救済措置発動状況/各国の貿易政策)

CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.国内セミナーのご報告
3.各国の貿易政策の状況
①EU域内市場を歪めるEU域外国からの補助金に対する規則を最終承認―2023年半ばから適用開始―
②米国がWTOの裁定を批判―WTOが232条に基づく鉄鋼・アルミ製品輸入に対する追加関税を協定違反とする裁定に対して―
③米国USTR、301条関税対象の医療関連製品から81品目について適用除外を延長―2023年2月末まで―
④米国商務省が中国産太陽光発電関連製品(太陽電池とモジュール)に対するAD/CVD課税の迂回について仮決定を発表
⑤迂回に関する貿易救済措置の執行強化―米国TPRより―
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2022年11月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

 202211月は、EUアンチダンピング措置の調査を開始しました。調査対象国は中国でした。 
 
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  補助金相殺関税(CVD)

 2022年11月は、該当する事案はありませんでした。
 
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2.国内セミナーのご報告<AD申請者による経験共有>

 
令和4年度 貿易救済セミナー
~ 会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ ~ のご報告


 経済産業省特殊関税等調査室では、貿易救済措置に係る普及啓発を目的とし、今年度は、申請に向けて有用な情報を提供することに力を入れ、『令和4年度 貿易救済セミナー ~会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ~』を、9月1日(木)にオンラインにて開催しました。

 本年度は、アンチダンピング措置の制度を実際に利用した企業として、大八化学工業株式会社とAGC株式会社の2社のご担当者にセミナーへご登壇いただきました。
今月号では、外部からの支援や連携体制に関する《大八化学工業株式会社》のコメントを掲載します。


 

質問1:AD申請において、外部(経済産業省、法律事務所等)からの支援や連携体制で重要だったことは何ですか?

▶税関と協議する機会があったことから、財務省関税局との連携が必要になりましたが、その際も経済産業省特殊関税等調査室のサポートによりスムーズに対応できました。さらにAD申請において、調査対象貨物に関する本邦の産業全体への影響を示す必要があったことから、特殊関税等調査室には産業を所管している経済産業省素材産業課との接点も設けていただきました。これらのような意見交換の機会を得ることができたのは非常に有意義でした。

▶法律事務所からも非常に精力的なサポートをいただくことができました。申請に必要な書類がかなり特殊なので、書類の作成や付随する根拠となるデータの準備、その加工などについては、豊富な経験と専門的な知識を有する法律事務所に手厚いサポートをいただきながら申請手続を進めました。

 

質問2:AD申請において、経済産業省と弁護士事務所等の外部の専門家の使い分けはどのようにしましたか?

▶経済産業省と弁護士事務所と弊社の三者が、役割に応じ連携してワンチームで申請作業を進めました。

▶今回AD措置申請対象となった製品(TCPP)を製造している工場を調査当局が事前に見学する際には弊社で関係各所との調整を行いました。実際の工場見学の際は、弁護士事務所からも担当弁護士に同行してもらいました。また、経済産業省には財務省関税局との打ち合わせなども調整してもらいました。各々が臨機応変に対応しながら申請に向けて対応できたと思います。



■貿易救済セミナーまとめ
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/seminar/index.html

■問い合わせ先
qqfcbk@meti.go.jp (経済産業省 特殊関税等調査室)  
 

3.各国の貿易政策の状況

①EU域内市場を歪めるEU域外国からの補助金に対する規則を最終承認―2023年半ばから適用開始―

 2022年11月28日、欧州理事会は、外国からの補助金に関する規則(FSR :Foreign Subsidies Regulation)案を最終承認1しました。本規則は、同年6月に欧州議会と暫定的な合意に達していたものです。

 EUでは、EU加盟国政府による特定企業への補助金を原則禁止しています。しかし、EU域外の補助金を受けた企業に対してこのルールは適用されないため、補助金を受けていないEU域内企業と、EU域外の補助金を受けた企業とで、不公平な競争が行われており、この是正が課題とされていました。

 本規則の承認により、非EU加盟国政府から補助金支援がなされている合併・買収や公共調達については、一定の要件を満たす場合、事前の届出が義務化されたほか、要件を満たさないような合併や公共調達であっても、一般的な市場調査を随時行うこととなりました。
なお、非EU加盟国政府から補助金を受けた事業者が、この届出義務を怠った場合は、罰金が科されることがあります。
また、欧州委員会は、非EU加盟国の補助金が、EU域内での競争を歪めていると判断した場合には、バランステストを行い、その結果に応じて合併・買収や公共調達への参加を拒否できることとなりました。

 本規則案は欧州議会議長と欧州理事会議長の署名後、EU官報掲載から20日後に発効し、発効から6カ月後に適用が開始されます。
 

 

1.https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2022/11/28/council-gives-final-approval-to-tackling-distortive-foreign-subsidies-on-the-internal-market/

 

②米国がWTOの裁定を批判―WTOが232条に基づく鉄鋼・アルミ製品輸入に対する追加関税を協定違反とする裁定に対して―

 2022年12月9日、米国通商代表部(USTR)は、米国が実施している鉄鋼・アルミ製品輸入に対する追加関税(232条関税)を、WTOの紛争解決小委員会(パネル)がWTO協定に違反しているとした裁定に対し批判の声明を公表2しました。

 WTO加盟国は原則として、他の加盟国からの輸入に対する関税については一律の最恵国税率を課すことになっています。しかしアメリカは、232条関税の適用除外などの一部の国以外からの輸入に対し、鉄鋼製品には25%、アルミ製品には10%の追加関税を課しています。

 今回、中国、ノルウェー、スイス及びトルコが米国の232条関税はこの原則に違反しているとして、WTOに提訴していました。これに対して米国は、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第21条で定められた「戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置」であり、正当であると主張していました。しかし、パネルは米国の主張を認めず、米国に是正をするよう提言3しました。

 USTRは声明において、国家安全保障の問題はWTOの紛争解決機関で審査できるものではなく、また、加盟国が安全保障上の様々な脅威に対処する事項に対して、WTOが意見することは越権行為であるとして、パネルの裁定を批判しました。さらに、WTOは中国をはじめとする国々が鉄鋼分野で過剰生産状態になることを止められなかったとし、WTOの紛争解決システムを根本的に改革する必要があると主張しました。
 加えて、バイデン政権は鉄鋼及びアルミニウム産業の長期・安定的な成長を確保することで、米国の国家安全保障を維持するとしており、今回の裁定を受けても232条関税を撤廃する考えはないとの声明を発表しています。
 

 

2.https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2022/december/statement-ustr-spokesperson-adam-hodge
3.https://www.wto.org/english/news_e/news22_e/544_552_556_564r_e.htm


 

③米国USTR、301条関税対象の医療関連製品から81品目について適用除外を延長―2023年2月末まで―

 USTRは2022年11月23日、1974年通商法301条に基づき発動済みの対中追加関税について、81品目の適用除外を3ヶ月間延長すると公表4しました。対象となる物品は、マスクや湿布、外科手術器具など、主に新型コロナウイルス対策を目的とした医療関連製品の一部に限定されます。

 この適用除外は、もともと11月30日が期限とされていましたが、今回の発表により、2023年2月28日まで延長され、中国からの輸入に本来課される最大25%の追加関税が免除されます。今回の延長についてUSTRは、本年5月の延長時と同様に、新型コロナウイルス感染症対策の継続的な取組を考慮して決定したとしています。また、必要に応じて更なる延長などを検討することとされています。
 

 

4.https://ustr.gov/sites/default/files/2022-11/COVID%20extensions%20FRN.pdf

 

④米国商務省が中国産太陽光発電関連製品(太陽電池とモジュール)に対するAD/CVD課税を回避する迂回貿易について仮決定を発表

 米国商務省は、2022年12月2日、中国産の太陽光発電関連製品が、米国のAD/CVD課税を回避して、東南アジアから迂回して輸入されているとされる問題について、仮決定を発表5しました。米国商務省は、太陽光発電関連製品を製造する太陽電池メーカー8社が、中国国内で部品を製造した後、これらの仕掛品をカンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムに送り、米国に輸出する前に軽微な加工を行っていると判定しました。この行為は、中国産の太陽光発電関連製品に対する既存のAD/CVD課税を回避するための行為に当たるとしています。この迂回に関する仮決定は、これらの国から、太陽光発電関連製品を輸入することを禁止するものではありません。

 次の段階として、米国商務省は実態調査を行い、さらに調査結果に対して意見を募集します。米国商務省はそれらを十分に検討した上で、2023年5月に最終決定を下すことになります。

 なお、米国商務省の最終決定とは別に、2022年6月6日に出された大統領公布6では、これらの4カ国からの太陽光発電関連製品の輸入について、2024年6月まで関税を課さないと定めています。これにより、米国の太陽光発電関連製品の輸入業者は、法に則った企業との取引関係を構築するための猶予期間を確保できます。
 

 

5.Department of Commerce Issues Preliminary Determination of Circumvention Inquiries of Solar Cells and Modules Produced in China | U.S. Department of Commerce
https://www.commerce.gov/news/press-releases/2022/12/department-commerce-issues-preliminary-determination-circumvention
6.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/06/06/declaration-of-emergency-and-authorization-for-temporary-extensions-of-time-and-duty-free-importation-of-solar-cells-and-modules-from-southeast-asia/


 

⑤迂回貿易に関する貿易救済措置の執行強化―米国TPRより―

 WTOでは、監視機能を担保するツールとして、加盟国が定期的に、自らの貿易政策等の現状を説明し、質疑応答を通じてその透明性を確保する制度である、貿易政策レビュー(TPR:Trade Policy Review)を実施しています。本年は米国のTPRが行われましたので、その内容を簡単に御紹介します。
 米国では2021年9月、アンチダンピング及び相殺関税法の管理及び執行を強化するための新規則が成立し、同時にWTOにも通知7されました8。同規則は、貿易救済措置の範囲、迂回貿易への対応、対象商品の照会などに関する新しい取り決めを盛り込んでおり、米国のAD/CVD法の管理や執行を厳格化する内容となっています9

 具体的には以下のような改正や条項追加10が行われています。
(1) AD/CVDの手続における意見提出の時期の修正
(2) 新規荷主の審査に関する規則の修正
(3) AD/CVD手続における範囲に関する規制の修正
(4) AD/CVDの迂回に関する新規則の導入
(5) 税関国境保護局から受領した対象商品の照会に関する新規則の導入
(6) 商品が AD/CVDの対象であるかどうかを確認するために、米商務省が利害関係者に証明書を要求することに関する新規則の導入
(7) 税関国境保護局に提出された輸入者の証明書に関する規則の修正
(8) サービスリスト、提出記録、AD/CVD手続における企業情報へのアクセスに関する輸入者提出要件に関する規則の修正

 迂回貿易に関する改正としては、AD/CVD課税を回避するための迂回貿易の防止に向けた調査(迂回調査)の手続強化が行われました11。これにより、米商務省は国内事業者の申請がなくても職権調査が可能であることが明確になりました12

 この他、改正規則では、調査期間中に米国に輸出を行っていなかった新規の輸出者のAD/CVDの税率は米国での適正な販売価格に基づかなければならないことを定めた条項が導入されました14。また、対象製品に対してはAD/CVD関税の遡及適用ができるよう、改正されました14

 加えて、改正規則においては、輸入品がAD/CVD関税の対象製品であるか否かを、輸入者等が証明することを求めており、15輸入者が証明書を提出できない場合、米国商務省は税関国境警備局に対して輸入者からAD/CVD関税を徴収するよう命令することができることとされています16

 なお、米国では、主に鉄鋼製品、化学製品、木材、紙製品等に関して迂回調査が実施されており、172018年1月1日から2022年1月31日の間18には27件の迂回決定を行っています19


 

 

7.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/tp534_e.htm
8.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P81 3.71
9.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P81 3.71
10.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P.84 3.82
11.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P84 3.81
12.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P84 3.81
13.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P86 3.84
14.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P86 3.85
15.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P86 3.86
16.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P86 3.86
17.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P89 3.98
18.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P89,90 Table 3.13 Anti-circumvention determinations made 1 January 2018-31 January 2022
19.https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s434_e.pdf P89 Table3.13



 

 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 
<相談窓口>

 経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2023年12月8日