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ADnewsletter 2023年2月号(諸外国の貿易救済措置発動状況/各国の貿易政策)

CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.日本のアンチダンピング調査事例 『中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長決定』
3.各国の貿易政策の状況
① カナダが米国に対しカナダ産針葉樹材のAD/CVD第4次行政審査結果について不服表明
② 米国がWTO裁定に対して声明発表・上訴(通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税措置)
③ 米国通商代表部が、中国からの医療品の関税(301条関税)に係る適用除外の延長について意見募集中
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2023年1月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)/補助金相殺関税(CVD)

2023年1月は米国がAD/CVDの両方において、錫めっき製品に関して、中国、ドイツ、カナダ、オランダ、韓国、台湾、トルコ及び英国に対して調査を開始しました。

 
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2.日本のアンチダンピング措置事例『中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長決定』

 中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートについては、平成29年12月28日から令和4年12月27日までを課税期間として、不当廉売関税(税率:39.8%~53.0%)が課税されていました。
 令和3年12月に国内生産者から不当廉売関税の課税期間の延長申請が行われたことを受けて、令和4年2月に調査を開始し、調査により、ダンピング輸入及び当該輸入による国内産業への損害が課税期間の満了後に再発するおそれがあると認定されたことから、5年間(令和10年2月2日まで)課税期間が延長となりました。

▷高重合度ポリエチレンテレフタレートに関する調査の詳細はこちら

 
【参考】今年度発動したアンチダンピング措置
 
大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税決定

 韓国産・中国産溶融亜鉛めっき鉄線について、国内生産者からの申請を受け、2021年6月にアンチダンピング調査を開始しました。
 調査により、韓国産・中国産溶融亜鉛めっき鉄線について、ダンピング輸入の事実及びダンピング輸入による国内産業への損害の事実が認定されたことから、5年間(令和4年12月8日~令和9年12月7日)不当廉売関税(税率:9.8%~41.7%)が課されることになりました。

▷溶融亜鉛めっき鉄線に関する調査の詳細はこちら
 
 

3.各国の貿易政策の状況

①カナダが米国に対しカナダ産針葉樹材のAD/CVD第4次行政審査結果について不服表明

 2023年1月24日、米国商務省はカナダ産の特定の針葉樹材製品に対するアンチダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)1に関する第4次行政審査2の予備評価を発表しました。この結果に対し、カナダのメアリー・エング国際貿易・輸出促進・中小企業・経済開発相は、評価の結果を不服とする声明を出しました3

 声明では、カナダは長い間、米国市場にとって不可欠な木材供給国であるが、この不当な関税はインフレが急伸している中にあって建築コストを上昇させるなど、米国の消費者に対する税金として作用し続けている、と指摘しています。
 その上で、カナダ産木材に対する米国の関税は、カナダ全土の木材分野の企業、労働者、地域社会に悪影響を及ぼし、WTO協定にも違反していると判断されているとし、産業界等とも緊密に連携し、NAFTA、カナダ・米国・メキシコ協定、WTOにおける提訴など、あらゆる手段でカナダの利益を守るとしています。

 米国商務省は、2023年夏にカナダ産針葉樹材のAD/CVD第4次行政審査に関する最終結果を発表する予定です。

 

1.米国政府によるカナダ産針葉樹材への関税は2017年から課されています。
2.https://public-inspection.federalregister.gov/2023-01715.pdf
https://public-inspection.federalregister.gov/2023-01719.pdf
3.https://www.canada.ca/en/global-affairs/news/2023/01/statement-by-minister-ng-on-us-preliminary-duty-rates-on-canadian-softwood-lumber.html

 

②米国がWTO裁定に対して声明発表・上訴(通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税措置)

 米国は、中国、ノルウェー、スイス、トルコが関税及び貿易に関する一般協定(GATT)違反としてWTO紛争解決機関に提訴していた訴訟「通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税措置」に関するパネルの報告書(2022年12月9日に公表された米国による追加関税はWTO協定違反とする報告書)に対し不服を示す声明を発表し、上訴する決定を2023年1月26日付で紛争解決機関に通知4しました。

 この通知において米国は、
・ 国家安全保障の問題は政治的な問題であり、WTOの紛争解決手続では対応できず対象外の問題である
・ WTO加盟国は、自国の本質的な安全保障上の利益を保護するために必要であると考える措置を自ら決定する権限を有しているとし、GATT第21条における安全保障例外に該当するとして正当である
・ 国家安全保障の問題をWTOで扱うのは、貿易機関であるWTOの目的に反しており、目指す方向性とも合致しない上に、議論と交渉の場としてのWTOにおけるWTO加盟国の共通の利益を促進するものでもない
などと主張しています。

 今後、当該紛争解決には、その上の委員会に当たる上級委員会に委ねられることになります。しかし、上級委員会については、トランプ前政権が委員任命に反対したことから、2019年12月以降、上級委員は全て空席となっており、機能不全に陥っています5

 

4.https://www.wto.org/english/news_e/news23_e/ds544_552_556_564apl_30jan23_e.htm
5.https://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/appellate_body_e.htm


 

③米国通商代表部が、中国からの医療品の関税(301条関税)に係る適用除外の延長について意見募集中

 米国通商代表部(USTR)は2023年2月2日、1974年通商法301条に基づき発動済みの対中追加関税について、81品目の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関係する医療品に係る適用除外の最大6か月間の延長の是非について、意見を募集することを発表しました。

 これらの医療品についての適用除外は、2020年12月に開始され(開始時は99品目)、その後数度の延長を経て、2023年2月28日に期限切れになる予定でしたが、意見募集の検討を可能にするために、2023 年 5 月 15 日まで適用除外の期間を暫定的に75 日間延長することも発表されています6

 USTRは各品目の適用除外をケースバイケースで評価するとしています。この評価では、COVID-19の変異株などの状況や、特定の製品の国内生産の増加、入手容易性などの変化を踏まえ、特定の製品を301条追加関税から除外することが引き続き適切かどうか、また、これらの除外が301条追加関税の調査全体にどのような影響を与えるのかを考慮に入れて検討されることとされています7
 

 

6.https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2023/february/ustr-requests-comments-extending-covid-exclusions-china-section-301-tariffs
7.https://ustr.gov/sites/default/files/2023-01/COVID%20Extensions%20Comments%20FRN.pdf



 

 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 
<相談窓口>

 経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2023年12月8日