CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.日本のアンチダンピング調査事例『中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税
 の課税に関する調査について、仮の決定を実施』

3.各国の貿易政策の状況
①韓国が日本産、中国産の鉄鋼製品に対するアンチダンピング関税の調査を開始
②中国が米国産のカットオフ波長シフトシングルモード光ファイバーに対する迂回防
 止調査を開始
③韓国が通商防御機能を強化するため、貿易委員会の拡大・改編を実施。第3国迂回に
 対する制度改正も検討
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2025年1月~2月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

2025年1月~2月は、以下の調査が開始されました。

 


補助金相殺関税(CVD)

2025年1月~2月は、以下の調査が開始されました。

 

2.日本のアンチダンピング調査事例『中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税に関する調査について、仮の決定を実施』

 
 経済産業省及び財務省は、令和6年4月24日より、中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税に関し、不当廉売関税の課税の可否に関する調査を実施してきました。調査の結果、不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実を推定するに至ったことから、令和7年2月28日付で仮の決定をしました。 
  今後は、仮の決定に対する利害関係者からの証拠の提出、意見の表明の機会を設けるとともに、WTO 協定に定められた国際ルール及び関係国内法令に基づいて引き続き調査を行います。これらを踏まえ、不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実の有無についての認定を行った上で、不当廉売関税の課税の要否を政府として判断することとなります。
   

 

3.各国の貿易政策の状況

①韓国が日本産、中国産の鉄鋼製品に対するアンチダンピング関税の調査を開始

 2025年3月4日、韓国貿易委員会が日本及び中国から韓国へ輸入される鉄鋼製品(炭素鋼または合金鋼の熱間圧延製品)に対するアンチダンピング関税の課税調査を開始したと発表 1しました。
 この調査は、2024年12月19日に現代製鉄から提出された申請書に基づくもので、ダンピングの事実に関する調査期間は2023年7月1日から2024年6月30日まで、国内産業の損害に関する調査期間は2021年1月1日から2024年12月31日までとなっています。
 貿易委員会により公開された調査開始決定書2によると、申請者から提出された資料において、ダンピング輸入の事実(日本産は28.7%、中国産は33.1%と示されている)及び国内産業の実質的損害の事実(生産、販売、在庫、損益、製造原価、設備投資及び研究開発、雇用、賃金)が示されたとしています。

貿易委員会は、これらの資料は申請者において合理的に入手が可能な範囲で入手されたものであり、かつ、調査開始を判断するために十分な証拠の提出があったものと認められることから、調査を開始することが適当であると判断したとしています。

1. https://www.ktc.go.kr/noticeList.do
2. https://www.ktc.go.kr/proInvestList.do

②中国が米国産のカットオフ波長シフトシングルモード光ファイバーに対する迂回防止調査を開始

 2025年3月4日、中国商務省は、米国から中国へ輸入される「カットオフ波長シフトシングルモード光ファイバー」(Certain Cut-off Shifted Single-mode Optical Fiber)に対する迂回防止調査を開始したと発表3しました。
 この調査は、2025年2月10日に長飛光ファイバー・ケーブル有限公司から提出された申請書に基づくものです。商務省により公開された調査開始決定書4によると、申請者から提出された証拠において、米国産「非分散シフトシングルモード光ファイバー」(ULL G.652)に対するアンチダンピング措置の適用期間中、米国の光ファイバー生産者及び輸出業者が、関連する「カットオフ波長シフトシングルモード光ファイバー」(G.654.C)の名称で中国に輸出し、アンチダンピング対象製品とは異なる関税分類番号により輸入したとのことです。G.654.CとULL G.652は互換性があり、米国の生産者等はこの特徴を利用して、G.654.Cとして輸入した製品を、中国国内でULL G.652として流通させることで、アンチダンピング関税を回避したとしています。
   迂回防止調査開始の発表の当日、商務省は、「中国での初めての迂回防止調査となった。調査当局は法に従って調査を実施し、すべての利害関係者の権利を十分に保護し、調査結果に基づいて客観的かつ公正に決定を下すことになる。」との談話を発表5しています。

3. https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_d94b0155ebb547609e748b23a94b8139.html
4. https://www.mofcom.gov.cn/cms_files/filemanager/1511035453/attach/20252/22c48425eef646b39473a6621eabb7fe.pdf?fileName=%E5%AF%B9%E7%BE%8E%E5%9B%BD%E7%9B%B8%E5%85%B3%E6%88%AA%E6%AD%A2%E6%B3%A2%E9%95%BF%E4%BD%8D%E7%A7%BB%E5%8D%95%E6%A8%A1%E5%85%89%E7%BA%A4%E5%BC%80%E5%B1%95%E5%8F%8D%E8%A7%84%E9%81%BF%E8%B0%83%E6%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%B3%E8%AF%B7%E4%B9%A6%EF%BC%88%E5%85%AC%E5%BC%80%E6%96%87%E6%9C%AC%EF%BC%89.pdf
5. https://www.mofcom.gov.cn/xwfb/xwfyrth/art/2025/art_14c616765ddb4cd3869ee007f30e4244.html

③韓国が通商防御機能を強化するため、貿易委員会の拡大・改編を実施

 韓国通商資源部は2025年3月11日、貿易委員会を拡大・改編するための「貿易委員会の職制に関する改正案」が国務会議で議決され、同年3月18日から施行されると発表6しました。発表資料によると、当該組織改変は、グローバルな供給過剰によりもたらされる低価格製品の韓国への流入から国内産業を保護し、通商防御機能を大幅に強化することを目的とするとしています。
 当該組織改編により、貿易委員会に「ダンピング調査支援部」と「判定支援部」が新設され、人員はこれまでの4部43人から6部59人に増員されます。なお、高度な専門知識を必要とする業務に積極的に対応するために、国際法、会計、特許の専門知識を持つ民間の専門家の採用を3か月以内に加速するとしています。
 また、貿易救済措置に関する調査能力の強化策として、PMS(Particular Market Situation)、AFA(Adverse Facts Available)といった調査技法の高度化への対応、迂回ダンピング防止制度の確立、補助金調査と相殺関税課税の基盤構築等について、今回の組織改編を通じて推進するとしています。
 さらに、3月19日の報道発表7によると、「今年1月から施行された迂回ダンピング防止制度は、従来のダンピング調査制度に比べて迂回ダンピングに対する職権調査、手続き短縮など一歩進んだ成果があった一方、供給国内での軽微な変更を通じてダンピング防止関税を回避する行為だけを迂回ダンピング対象と規定し、第3国での軽微な変更を通じた迂回行為に対応するのに限界があったため、政府は、第三国経由での迂回ダンピングも含まれるよう関税法令の改正に早急に着手し、より多様なタイプの迂回ダンピング行為に対処していく計画」とのことです。

6. https://www.motie.go.kr/kor/article/ATCL3f49a5a8c/170257/viewmno=&pageIndex=3&rowPageC=0&displayAuthor=&searchCategory=0&schClear=on&startDtD=&endDtD=&searchCondition=1&searchKeyword=
7. https://www.motie.go.kr/kor/article/ATCL3f49a5a8c/170298/view?mno=&pageIndex=2&rowPageC=0&displayAuthor=&searchCategory=0&schClear=on&startDtD=&endDtD=&searchCondition=1&searchKeyword=

 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。
  申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 また、「日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合」の御相談は、経済産業省国際経済紛争対策室まで御連絡ください。
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピングの申請を検討している場合>
 経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-1511(内線3256)
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合、日弁連セミナー>
 経済産業省 通商政策局 国際経済部 国際経済紛争対策室 
TEL:03-3501-1511(内線 3056)
E-mail:bzl-wto-soudan@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2025年3月24日