CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.日本のアンチダンピング調査事例『中華人民共和国産黒鉛電極に対する暫定的な不当
 廉売関税の課税及び調査期間の延長』

3.各国の貿易政策の状況
①欧州委員会がEU鉄鋼産業の保護のためセーフガード措置を強化
②豪州アンチダンピング委員会がAD・CVD申請に関するガイドラインを公表
③韓国が中国産及び日本産の産業用ロボットに対するアンチダンピング関税の調査を
 開始

④WTOでAD委員会 会合 開催 ―2024年7月~12月期―
4.相談窓口
5.FAQ

 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2025年3月~4月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

2025年3月~4月は、以下の調査が開始されました。

 


補助金相殺関税(CVD)

2025年3月~4月は、以下の調査が開始されました。

 

2.日本のアンチダンピング調査事例『中華人民共和国産黒鉛電極に対する暫定的な不当廉売関税の課税の決定及び調査期間の延長』

 
 経済産業省及び財務省は、令和6年4月24日より、当廉売関税の課税の要否に関する両省合同の調査を実施してまいりました。調査の結果、本年2月28日に、不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入の本邦産業に与える実質的な損害等の事実を推定する仮の決定を行っています。さらに、本年3月12日、関税・外国為替等審議会(関税分科会特殊関税部会)から、調査で判明した事実等を踏まえ、中国産黒鉛電極に対しては、不当廉売関税を暫定的に課することが適当である旨の答申が提出されました。
 本年3月28日に政令が公布され、同年3月29日から同年7月28日までの間、中国産黒鉛電極に対して、暫定的な不当廉売関税(95.2%)が課されています。
 また、不当廉売関税の課税に関する調査については、調査の透明性を確保しつつ、利害関係者から提出された証拠等の更なる検討を行うため、当該調査の期間を3か月延長して、令和7年7月23日までとすることとしています。
   

 

3.各国の貿易政策の状況

①欧州委員会がEU鉄鋼産業の保護のためセーフガード措置を強化

  2025年3月25日、欧州委員会は、EUの鉄鋼・金属業界を輸入急増から保護するため、鉄鋼セーフガード措置を強化したことを公表 1しました。この措置は、2019年に導入され、二度にわたる延長・見直しを経て、2026年6月30日までを適用期限とされているものです。
 改正に関する実施規則2によると、自由化率(毎年の関税割当数量(TRQ)の増加率)が1%から0.1%に引き下げられ、無関税で輸入できる数量が制限されることとなりました。また、ロシアやベラルーシに対する制裁によって輸入されなくなった数量を含む、他国の未使用の割当量を再配分する運用に関して、一部のカテゴリーについては廃止され、その他のカテゴリーについては再配分の数量を制限しています。

  未使用の割当量を次の四半期に繰り越すことを可能とする「キャリーオーバーメカニズム」についても、輸入圧力が高く消費が低いカテゴリーについて廃止されました。
  改正後のTRQの数量等は、改正に関する実施規則の付属書Ⅱに記載されています。
  欧州委員会によると、今回の措置の強化により、EUの鉄鋼生産者における生産を増加させ、失った市場シェアを取り戻すための余力を生み出すことになるとし、グリーンスチール生産における雇用と投資を増加させることも目指しているとしています。

1. https://policy.trade.ec.europa.eu/news/commission-strengthens-protection-eu-steel-industry-2025-03-25_en
2. https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:L_202500612

②豪州アンチダンピング委員会がAD・CVD申請に関するガイドラインを公表

 2025年5月1日、豪州アンチダンピング委員会は、AD・CVDの課税申請を検討している当事者に対する申請前サービスに関するガイドラインを発表3しました。
 申請前サービスは、申請者と行政の双方に明確な枠組みを提供し、アンチダンピング制度の法令要件等を踏まえつつアクセスと理解を促進することとしています。これにより、より円滑かつ効率的な申請及び調査プロセスに繋げることを通じて、オーストラリアの国内産業を支援することを目的としています。
  申請前サービスに関するガイドライン4においては、アンチダンピング委員会の職員が、AD・CVD課税申請に係る書類の完全性について、申請前の協議及び行政審査を行う際の指針を提供しています。具体的には、委員会は、正式な申請書が提出されたときに追加情報の要求が最小限に抑えられるように、提供される情報を改善できるかどうかについて、申請者に提案を行うこととしています。情報が欠落、または不明であることについて、改善すべき事項を明記した回答書のフォーマットも示されています。

3. https://www.industry.gov.au/sites/default/files/adc/public-record/2025-05/pre-application_service_adn_2025_036_1.pdf
4. https://www.industry.gov.au/sites/default/files/2025-04/adc-pre-application-service-guidelines-april-2025.pdf

③韓国が中国産及び日本産の産業用ロボットに対するアンチダンピング関税の調査を開始

 韓国は、日本及び中国産の「4軸以上の垂直多関節型」産業用ロボットに対するダンピングの事実及び国内産業への被害の有無の調査を開始5しました。
 この調査は、2025年3月11日にHD現代ロボティクスから提出された申請書に基づくもので、ダンピングの事実に関する調査期間を2024年1月1日から2024年12月31日まで、国内産業の損害に関する調査期間を2021年1月1日から2024年12月31日までとしています。
 貿易委員会により公開された調査開始決定書によると、申請者から提出された資料において、ダンピング輸入の事実(日本産は36.7%、中国産は43.6%と示されている。なお、通常価格は企業間取引であることから申請者において入手ができず、合理的に入手可能な資料により算定したとしている。)及び国内産業の実質的損害の事実(生産量、稼働率、国内販売量、在庫率、損益状況、製造原価、設備投資及び研究開発、雇用、賃金、主要原材料の価格等)が示されたとしています。
 貿易委員会は、これらの資料は申請者において合理的に入手が可能な範囲で入手されたものであり、かつ、調査開始を判断するために十分な証拠の提出があったものと認められること、さらに、調査申請の却下事由に該当しないことから、調査を開始することが適当であると判断したとしています。

5. https://www.ktc.go.kr/proInvestList.do

④WTOでAD委員会 会合 開催 ―2024年7月~12月期―

 WTOのAD委員会が2025年4月30日に開催されました6。AD委員会は半年に一度開催され、新規、改正または再検討が行われた法令及び規制に関する加盟国からの最新の通知と、AD措置に関する報告について議論されます。
   会合では、2025年7月1日から12月31日までの期間を対象とする半期報告に関して、45の加盟国がこの期間に実施したAD措置を委員会に報告し、17の加盟国は同期間に新たなAD措置は実施されなかったことを報告しました。さらに、50の加盟国は調査を実施する権限のある当局を設置しておらず、現在までAD措置を講じていない旨の報告を行いました。
   また、委員会は2023年10月に合意されたe-Agendaプラットフォームの試験的運用に関する定期レビューを実施しました。このプラットフォームは、代表団の声明をアップロードできるようにすることを通じて会議手続きの効率化を図るためのものです。委員会は試用期間をさらに2年間延長することに合意しました。正式なレビューは、2027年春の会合で行われる予定です。
   議長は、秋に予定される会合を、2025年10月27日の週に開催することを決定しています。

6. https://www.wto.org/english/news_e/news25_e/anti_30apr25_e.htm

 
 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。
  申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 また、「日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合」の御相談は、経済産業省国際経済紛争対策室まで御連絡ください。
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピングの申請を検討している場合>
 経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-1511(内線3256)
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 
 
<相談窓口:日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合、日弁連セミナー>
 経済産業省 通商政策局 国際経済部 国際経済紛争対策室 
TEL:03-3501-1511(内線 3056)
E-mail:bzl-wto-soudan@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2025年5月27日