CONTENTS
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.国内セミナーのご報告
3.各国の貿易政策の状況
①米国商務省、AD手続においてロシアの市場経済国認定を取消し ―米国の製造業に損害を与える不公正な貿易慣行に対処―
②WTOでAD委員会 会合 開催 ―2022年1月~6月期―
③WTOが貿易救済措置ポータルサイトを立ち上げ
4.相談窓口
5.FAQ
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2022年10月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。実施状況詳細
アンチダンピング(AD)
2022年10月1は、インド、米国がアンチダンピング措置の調査を開始しました。調査対象国は中国、オマーン、韓国、インド、ベトナムでした。 補助金相殺関税(CVD)
2022年10月は、該当する事案はありませんでした。1.官報やHPに掲載された日をベースとして一覧表を作成しているため、調査開始日が9月の案件も一部含まれています。
2.国内セミナーのご報告<AD申請者による経験共有>
~ 会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ ~ のご報告
経済産業省特殊関税等調査室では、貿易救済措置に係る普及啓発を目的とし、今年度は、申請に向けて有用な情報を提供することに力を入れ、『令和4年度 貿易救済セミナー ~会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ~』を、9月1日(木)14時~16時にオンラインにて開催しました。
本年度は、アンチダンピング措置の制度を実際に利用した企業として、大八化学工業株式会社とAGC株式会社の2社のご担当者にセミナーへご登壇いただきました。
今月号では、外部からの支援や連携体制に関する《AGC株式会社》のコメントを掲載します。
質問1:AD申請において、外部(経済産業省、法律事務所等)からの支援や連携体制で重要だったことは何ですか?
▶AD申請のためのデータを揃えるには、通常の業務では見慣れない書類を短期間で継続的に提出する必要があります。また、これらのデータには、外国の状況に関する情報を含めなければならないため、特殊関税等調査室(経済産業省)の方々のサポートやアドバイスは非常に役に立ちました。分からない点があれば直接質問をし、とにかく密にやり取りをさせていただきました。経済産業省から様々なアドバイスが無ければゴールまで行けなかったと思います。▶弁護士については、ウェブ検索などでAD申請に詳しく実績のある弁護士事務所を探しました。その他に、経済産業省に相談を行い、通商関係に詳しい弁護士事務所をいくつか紹介をしてもらいました。
質問2:AD申請において、経済産業省と弁護士事務所等の外部の専門家の使い分けはどのようにしましたか?
▶全体的な管理は、『作業』という面で慣れている弁護士事務所のアドバイスを聞きながら進めました。▶具体的な書類の作成や書き方、まとめ方は本当に細かい点に至るまで経済産業省に質問させていただき、都度確認しながら進めました。
来月号では、外部からの支援や連携体制について《大八化学工業株式会社》のコメントを掲載する予定です。
■貿易救済セミナーまとめ
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/seminar/index.html
■問い合わせ先
qqfcbk@meti.go.jp (経済産業省 特殊関税等調査室)
3.各国の貿易政策の状況
①米国商務省、AD手続においてロシアの市場経済国認定を取消し ―米国の製造業に損害を与える不公正な貿易慣行に対処―
米国商務省は5月2から、米国が定めた『市場経済国』の基準をロシアが満たさない可能性があるため、ロシアの市場経済国としての立場の見直しに着手していました。その後、11月10日、アンチダンピング(AD)税の手続において、ロシアの市場経済国としての立場を取り消すと発表3しました。これにより今後ロシアは『非市場経済国4』として扱われます。米国商務省は以下の点を検証し、AD又は相殺関税(CVD)の対象国が「市場経済国」か否かを判断しています。
(1)当該国の通貨が他国の通貨と交換可能か(2)労使間の自由な交渉により賃金が決められているか(3)外国企業による合弁事業やその他の投資が認められているか(4)政府が生産手段をどの程度管理しているか(5)政府が資源配分や価格・生産量に関する企業の決定をどの程度管理しているか(6)管轄当局が適切と考えるその他の要素。
今回のロシアの非市場経済国認定により、今後、ロシアからの輸入品に対するAD措置に関するダンピングマージンの計算には、同等の商品を生産し経済発展度合いが同程度の国(代替国)の市場価格等を適用することが可能になります。米国商務省は、この措置により、ロシアの不公正な貿易慣行に効果的に対応できるようになるとしています。
2.https://www.federalregister.gov/documents/2022/05/13/2022-10330/urea-ammonium-nitrate-solutions-from-the-russian-federation-initiation-of-antidumping-duty-changed
3.https://www.trade.gov/press-release/us-department-commerce-revokes-russias-market-economy-status-antidumping-proceedings
4.米国商務省が現在「非市場経済国」と認定しているのは、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、中国、ジョージア、キルギス、モルドバ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナムです。今回はこれにロシアが加わり計12カ国になりました。https://www.trade.gov/nme-countries-list
②WTOでAD委員会 会合 開催 ―2022年1月~6月期ー
WTOのAD委員会は2022年10月26日に会合5を開き、AD措置に関する加盟国の報告について審議6しました。この会合には、日本からも特殊関税等調査室が参加しました。会合では、2022年1月1日から6月30日までの半期に、45カ国においてAD措置が実施されたこと、16カ国で新たなAD措置の適用がなかったことが報告されました。また、53カ国はアンチダンピングに関する調査機関を持っておらず、AD措置を適用していないとの報告がなされました。
各国からの報告においては、ウクライナから、ロシアの占領地域にウクライナの生産者もいることから半期報告の調査に参加できていないことについて言及がありました。このウクライナからの報告に関しては7加盟国が議場に立ち、この報告への取組に賛同しウクライナにおけるロシアの行動を非難しました。これに対しロシアは、ウクライナの説明と当該加盟国の発言は今回のAD委員会の論点から外れているとして異議を唱えました。
また、委員長は加盟国が半期報告を提出するために新しい貿易救済措置ポータルサイトを活用しており、WTO事務局が同日、当ポータルサイトについてプレゼンテーションを行ったことを加盟国に紹介しました。
次回のAD委員会は、2023 年 5 月 1 日の週に開催される予定です。
5.https://www.wto.org/english/news_e/news22_e/anti_26oct22_e.htm
6.委員会では通常、調査の開始、暫定的及び最終的なAD措置の適用、既存のAD措置の見直しを含めたAD措置に関する半期報告における加盟国の実施状況について審議を行います。
③WTOが貿易救済措置ポータルサイトを立ち上げ
WTOは、2022年11月1日、加盟国のAD/CVD措置に関する情報を参照することができるオンラインツールである『貿易救済措置ポータルサイト7』を立ち上げ8ました。これまで、加盟国が届出を行ったデータについては紙ベースの報告書しか閲覧できませんでしたが、今回のシステム公開により、オンラインでアクセスすることができるようになりました。この新しいポータルサイトでは、WTO加盟国が通知した全てのAD/CVD措置に関する情報へアクセスでき、検索や表・グラフのカスタマイズ等が可能なサイトとなっています。
現在、貿易救済措置ポータルサイトには、2020年1月1日以降に行われたAD/CVD措置に関する情報が掲載されていますが、これに加えて、WTO事務局は、現在、加盟国とともに、2020年以前に失効した貿易救済措置に関する過去のデータの掲載準備を進めており、2023年初頭にはこれらのデータをポータルサイトにアップロードすることを目指しています。
このポータルサイトは、一般の方も利用可能ですので、御活用してみてはいかがでしょうか。
7.貿易救済措置ポータルサイトhttps://trade-remedies.wto.org/en
8.https://www.wto.org/english/news_e/news22_e/rese_01nov22_e.htm
4.相談窓口
経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
5.FAQ
最終更新日:2023年12月8日