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ADnewsletter 2022年9月号(諸外国の貿易救済措置発動状況/各国の貿易政策)

CONTENTS


1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.国内セミナーのご報告
3.各国の貿易政策の状況
4.相談窓口
5.FAQ
 
 

1.諸外国における貿易救済措置の発動状況

 2022年8月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。

  実施状況詳細


  アンチダンピング(AD)

 2022年8月は、韓国がアンチダンピング措置の調査を開始しました。調査対象国はエジプトでした。
 
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  補助金相殺関税(CVD)

 2022年8月は、該当する事案はありませんでした。
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2.国内セミナーのご報告<AD申請者による経験共有>

 
令和4年度 貿易救済セミナー
~ 会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ ~ のご報告


 経済産業省特殊関税等調査室では、貿易救済措置に係る普及啓発を目的とし、今年度は、申請に向けて有用な情報を提供することに力を入れ、『令和4年度 貿易救済セミナー ~会社を守る”攻め“の一手!アンチダンピング制度活用のすすめ~』を、9月1日(木)14時~16時にオンラインにて開催しました。

 本年度は、アンチダンピング措置の制度を実際に利用した企業として、AGC株式会社と大八化学工業株式会社の2社のご担当者にセミナーへご登壇いただきました。
今月号では『AD申請者による経験共有』においてご紹介した、業界団体であるカリ電解工業会に加盟する一社として準備を行いAD申請を行った《AGC株式会社》のコメントを掲載します。


 

質問1:AD申請に踏み切ったきっかけは何ですか?

▶2010年頃から廉価な輸入品が非常に多く入ってくるようになり、販売量が落ちていました。

▶通関のデータや公に取れるデータは定期的にチェックをしており、不当廉売か正当な価格かについてマーケット動向を把握していたためすぐに気づきました。

▶廉価な輸入品に押され、国内メーカーが被害を受けている中で、貿易救済措置があるということを当時の担当者が知り、実際のアクションにつながりました。

 

質問2:AD申請の過程で苦労したことや、それに対して、どのように対応しましたか?

▶AD申請に当たっては、業界団体(カリ電解工業会)として申請を行ったため、同業他社が定期的に集まって意見をまとめることが必要でした。具体的には、申請に当たっては、製品のコストや収支といった情報が必要ですが、そのような内容を同業間で共有することはできません。そのため、カリ電解工業会や外部の弁護士に間に入ってもらいながら準備を進めました。他社との間では、役割分担を行い対応し、会議はひと月に1回、他に臨時でも開催した時もありました。経済産業省、外務省との調整、スケジュール調整、法律事務所との調整も必要でした。

▶ダンピングの事実を立証するために、不当廉売をしている外国の市場情報へのアクセスが難しかったです。レポート会社や取引のある総合商社にも話を聞きつつ、最終的には調査会社を利用して調査を行いました。また、経済産業省には頻繁に連絡や相談をしてアドバイスを得ながら進めました。

 

質問3:AD発動後、事業状況にどのような影響がありましたか。結果としてどのようなメリットを実感しましたか?

▶AD発動後は、廉価な輸入品が減る一方で、国産の販売量が増加しました。その結果、販売量に合わせて生産量が上昇、すなわち稼働率が上昇することによりコストも下がり収支が好転していきました。

▶AD申請のために法律事務所や調査会社等への費用がかかりましたが、事業の収支の改善を通して、十分にそれを補うだけの効果がありました。

 

質問4:AD申請を行うに際して、どのように関係者間での合意をプロセスとして得ましたか?

▶社内の合意という点において、課題は大きく2つありました。

▶1つはマンパワーです。AD申請に対する作業が通常の業務に追加で発生するため、人的な対応が必要でした。もう1つが、法律事務所や調査にかかる費用です。不当な価格の輸入品が増えていく中で、AD申請をして正当な価格で製品を販売し事業を継続するには人的、金銭的リソースを使う価値があります。そのために必要なアクションであるということを社内には訴えかけました。これにより、必要な作業をする人材を充ててもらえ、また、費用の支出に関しても合意を得ることができました。

 

質問5:外部の顧客との関係において、どのように理解を得られましたか?

▶実際に国内の顧客から、AD課税があった後に、いわゆる廉価な商品が買えなくなったという声があったということは聞いています。しかし、顧客に対しては、通常あるべき価格ではない価格で売られている(不当廉売)商品であり、それにより国内の供給者が被害を被っているということを真摯に説明しました。

▶不当廉売が続くと、国内の供給者の収支が厳しくなり、供給を継続することができなくなり、最終的には国内メーカーがなくなってしまいます。そうしたときに国内の需要者が大きな被害を受ける可能性があり、そうならないための措置であるという説明をし、納得をいただいた事例もありました。



来月号では、単独でAD申請を行った《大八化学工業株式会社》のコメントを掲載する予定です。



■貿易救済セミナーまとめ
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/seminar/index.html

■問い合わせ先
qqfcbk@meti.go.jp (経済産業省 特殊関税等調査室)  
 

3.各国の貿易政策の状況

米国でインフレ削減法に基づくEV税額控除のガイダンス発表

 米国のバイデン大統領は8月16日、連邦議会が可決した「インフレ削減法1」に署名しました。法律要旨2によると、気候変動対策やエネルギー安全保障、公的医療保険の延長などの分野で、税額控除や補助金などを通じて4,370億ドルの歳出を予定しています。この原資は最低法人税率の見直しや、処方箋薬価の引き下げ等のメディケア改革の実施、内国歳入庁の税務執行強化などによる7,370億ドルの歳入とされており、今後10年間で3,000億ドル以上の財政赤字削減効果があるとしています。

 インフレ削減法には、EV車両の購入に際し、1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が受けられるとの内容が盛り込まれています。EV優遇措置の要件を満たすには3、対象となる車両の最終組み立ては北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること、北米での車載用電池生産が行われていること、となっています。
一方で、経済安全保障の要件から、2024年以降、懸念される海外の事業体(中国政府やロシア政府などの管轄・指導下にある企業など)が車載用電池の部品を製造等した場合は税控除が不可となります。
そのため、ドイツ、日本、韓国等の自動車メーカーでは同法への対応として、合弁会社の設立や工場の新設・追加投資などの検討が急務となっています。

 EV税額控除に必要となる最終組み立て地に関する要件は、インフレ削減法発効に伴って2022年8月17日以降有効となっています。
   

 

1.https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/08/15/by-the-numbers-the-inflation-reduction-act/
2.https://www.democrats.senate.gov/inflation-reduction-act-of-2022
3.https://www.irs.gov/credits-deductions/individuals/plug-in-electric-drive-vehicle-credit-section-30d

 

米国USTR、中国からの輸入品に対する1974年通商法301条に基づく追加関税の継続を公表 見直し作業に着手

 米国通商代表部(USTR)は9月2日、2018年7月から中国原産の輸入品に課している追加関税(301条関税)4について継続すると発表しました。
この課税は1974年通商法301条に基づいて実施されています。この措置は、発動から4年間効力を有することとされており、措置満了前の60日間に国内産業界から継続要望がなければ措置は終了することになっています。


 今回、USTRが継続要望に関する意見募集を行った結果、301条関税から恩恵を受ける国内産業界から継続要望を受理したため、関税は終了せず、見直しに着手することになりました。

 USTRは、トランプ前政権時の2018年7月以降、中国からの輸入に対しリスト1からリスト4までの4回に分けて301条関税を発動しています。今回、リスト1、リスト2として最大25%の関税を上乗せしていた輸入品に対して継続が決定しました。
   

 

4.https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2022/september/ustr-receives-requests-continuation-china-301-tariffs
 

米国商務省、500億ドルのCHIPSプログラムの実施戦略を発表(2023年2月までに申請受け付け開始)

 米国商務省は9月6日、半導体産業向け資金援助プログラム(CHIPSプログラム)の実施戦略5を発表しました。この戦略は、8月に成立した「the CHIPS and Science Act (CHIPSプラス法)」に基づくものです。実施戦略では、CHIPSプログラムにおける取組や戦略目標、補助金を受給する企業に課される制約を説明しています。

 実施戦略では、CHIPSプログラムの主な取り組みとして、以下の3つをサポートしています。
● 最先端半導体の製造プロセスに対応する国内製造クラスターへの大規模投資(約280億ドル)
● 成熟および新世代の半導体における新しい特殊技術、半導体サプライヤーの安定供給のための製造能力の拡大(約100億ドル)
● 研究開発における米国のリーダーシップを強化・推進させるための取り組み(約110億円)

 実施戦略では、補助金プログラムへの申請を評価するに当たり、考慮する戦略目標が盛り込まれました。また、CHIPSプラス法で新たに規定された、補助金受給企業による一定の海外投資の制限に関しても、安全保障上の観点から明記してあります。

 商務省は、CHIPSプログラムへの申請に関するガイダンスを2023年2月初旬までに公表する予定としています。
   

 

5.https://www.nist.gov/system/files/documents/2022/09/13/CHIPS-for-America-Strategy%20%28Sept%206%2C%202022%29.pdf

 

4.相談窓口

 経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。 申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
 
<相談窓口>

 経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室 
TEL:03-3501-3462
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
 

5.FAQ

 以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
  よくある質問

 

最終更新日:2023年12月8日