■北米の取り組み事例 |
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●基本的な考え方 |
○廃棄物管理について |
米国においては、1960年の中頃から環境問題や健康問題に対する関心が高まり、連邦政府も廃棄物問題に積極的に取り組むようになった。1965年、議会は固体廃棄物処理法(Solid Waste Disposal Act)を、初めて固体廃棄物処理方法を改良することに焦点を当てた法として制定した。固体廃棄物処理法は固体廃棄物管理に関連するプロジェクトを計画し、訓練し、研究し、デモンストレーションを推進することで州に経済的インセンティヴを制定している。その後この固体廃棄物処理法に修正を加え、1976年に資源保護回復法(RCRA)が制定された。RCRAによって国家の固体廃棄物管理システムを実質的に改造し、現在の有害廃棄物管理プログラムの基本枠組みが計画された。 1976年以来数回にわたって修正された法令は、変化する廃棄物管理ニーズを反映して議会が内容を変更する度に変化を続けている。法令は有害・固体廃棄物改正法(HSWA)により1984年11月8日に大きく修正され、RCRAが規定する範囲と要求が拡大された。HSWAは有害廃棄物処理、特に野積み対策として生み出された。議会は1992年にも連邦設備責任法(Federal Facility Compliance Act)が通過したことによりRCRAを修正し、これによって連邦設備でのRCRAの強制力が強化されることとなった。また、1996年の融通埋立て処分プログラム(Land Disposal Program Flexibility Act)により特定廃棄物の埋立て処分に関してRCRAが修正された。 |
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1. |
資源保護回復法(RCRA) |
(1) |
資源保護回復法(RCRA)の目的 |
RCRAの目的は以下のとおりとされている。
- 廃棄物の廃棄による悪影響から国民の健康と環境を保護する
- 廃棄物のリサイクルと回収によりエネルギーと天然資源を保全する
- 可能な限り迅速に、有害廃棄物を含めて、発生する廃棄物量を削減あるいはなくすこと
- 国民の健康と環境を保護する方法で廃棄物管理を行うことを明らかにする
以上の目標を達成するため、10のサブタイトル(A~J)から構成されるRCRAにおいて以下のとおり関連する3つのプログラムを確立している。 サブタイトルDは、固体廃棄物プログラムであり、非有害産業廃棄物および都市ごみを管理する包括的計画を州が策定することを促進し、都市ごみの埋立て、その他固体廃棄物処理施設に関する考え方を設定し、固体廃棄物の野積みを禁止する内容となっている。 サブタイトルCは、有害廃棄物に関するプログラムとなっており、有害廃棄物の発生から最終処理に至るまで―つまり、ゆりかごから墓場まで―の管理システムを定めている。 サブタイトルIでは、地下貯蔵タンクに関するプログラムとなっており、有害性物質と石油製品の地下貯蔵タンクについて規定している。 RCRAは有害および非有害の固体廃棄物を適正に管理する枠組みを形成しているが、不適切あるいは放棄地で発見される有害廃棄物、あるいはそれらの有害廃棄物から漏洩している緊急対策が必要な有害物質の問題に対する記述はない。これらの問題は、一般的にスーパーファンド法と呼ばれている1980年に制定された包括的環境対処・補償・責任法(CERCLA)で触れられている。 |
(2) |
資源保護回復法(RCRA)の構成 |
法令は10のサブタイトルから構成されている。サブタイトルA, B, E, F, G, HおよびJの概要は、以下のとおりとなっている。
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サブタイトルA :総記
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サブタイトルB :廃棄物行政庁;EPA長官と関連機関調整委員会の権限
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サブタイトルC :有害廃棄物管理
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サブタイトルD :州及び地域の廃棄物管理計画
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サブタイトルE :資源及び回収に関する商務長官の義務
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サブタイトルF :連邦政府の責任
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サブタイトルG :その他の条項
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サブタイトルH :研究開発、実証及び情報
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サブタイトルI :地下貯蔵タンクの規制
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サブタイトルJ :医療廃棄物の規制
RCRAの下には、固体廃棄物、有害廃棄物そして地下貯蔵タンクという3つのプログラムが設けられている。 ○ サブタイトルD-固体廃棄物 RCRAのサブタイトルDは、家庭ごみや非有害固体産業廃棄物のような非有害廃棄物を管理するための計画、規制、実行する主体として州や地方政府に焦点を当てている。EPAは、州や規制対象団体が廃棄物問題に対してよりよい決断ができるよう助力し、資源削減と固体廃棄物のリサイクルによる環境および経済に関する恩恵を得て、環境に悪影響を及ぼす処理施設の改修あるいは閉鎖をを行うために、これらの州および地方機関に対し、情報、ガイダンス、政策および規則をワークショップや出版物を通して提供している。固体廃棄物処理に関わるより安全な施設使用を推進するために、EPAは都市ごみ埋立処分場およびその他固体廃棄物処理施設の適正な設計や運用について連邦基準を作成した。多くの州では自身の固体廃棄物プログラムの中にこれらの基準を適用している。 ○ サブタイトルC-有害廃棄物 RCRAサブタイトルCは、有害廃棄物のゆりかごから墓場までを管理する連邦プログラムを制定している。サブタイトルCには発生、輸送、処理、貯蔵あるいは処分に関する規則があり、有害廃棄物に関わる多数の関係者が規制されている。1999時点においてEPAは処理、貯蔵、処分に関する1,575施設、17,000輸送車、20,000以上の発生者の記録を所蔵している。 サブタイトルCプログラムはEPAがこれまでに作成した規則の中で最も包括的なものといえる。規則ではまず固体廃棄物と有害廃棄物の定義を行い、発生者、輸送者、処理施設といった有害廃棄物に関する3カテゴリの取扱者に対して様々な要求事項を制定している。また、サブタイトルCでは処理施設の設計そして安全な運用についての技術基準も備えている。これらの基準は環境中への有害廃棄物の排出が最小になるように設計されている。 ○ サブタイトルI-地下貯蔵タンク サブタイトルIは石油や有害廃棄物(CERCLAに定義されている)を地下に貯蔵するタンクを規制している。サブタイトルIの主な目的はタンクからの漏洩がないようにし、漏洩したものについては浄化することである。サブタイトルIの下では、新設タンクの性能基準、既存タンクの改善事項そして全ての地価貯蔵タンクでの漏洩の回避、検知、浄化に関する規則をEPAが開発することとなっている。 |
(3) |
法令(The Act)と規則(regulations) |
RCRAとはResource Conservation and Recovery Actの頭文字であるが、しばしば法律(laws)、規制(regulations)、そしてEPAの方針あるいは指針(guidance)を参照する際に代替的に利用される。この手引きでは混乱を防ぐため、「制定法(the Acts)」は議会を通過した法令を参照するものとする。「規制(regulations)」は法令を履行するためにEPAが作成するルールを意味し、標準(standard)あるいは規則(regulatory requirements)と互換できるものとする。 ○ 法令(The Act) 議会が制定する廃棄物管理プログラムを記述する法律。また、法令によりプログラムを実行する権威をEPAの管理者に授与される。 ○規則(regulations) 法令は議会がEPAに対して包括的規則体系の開発を指令できる権限を含んでいる。規則あるいはルール化は法令の一般的な命令を機関や規制される団体に対する個々の要求事項として定められるものであり、EPAのような機関がこれを発行することとしている。 規則が公式に提案される場合には、EPAが新たな規則を定めるあるいは既存の内容を修正するつもりであることを知らせるために、Ferderal Registerと呼ばれる公式な政府書類で公開される。 EPAは規制予定のある団体を含む国民に対して、コメントを提出する機会を設けている。コメント募集期間終了後、EPAは内部検討とパブリックコメントの両方に基づき規則案を修正する。 最終規則は連邦規則(Federal Register)に公開あるいは発布される。最終規則は1年ごとにまとめられ規則の項目に従って、高度に構造化されたフォーマットに従ってCFRに組み込まれる。 |
(4) |
廃棄物の定義 |
廃棄物は、大きく分けて「非有害廃棄物」と「有害廃棄物」に分類される。このうち「有害廃棄物」としては、人体あるいは環境に対して重大な影響を及ぼすものという考え方に基づき、EPAが定めるリストに記載されているか、あるいはEPAが定めた有害廃棄物の特性基準のいずれかに合致するものとされている。一方、家庭から発生するいわゆる都市ごみや肥料として地中にもどされる農業廃棄物などは「非有害廃棄物」に分類されている。 |
(5) |
連邦政府と州の役割 |
有害廃棄物については、連邦政府により定められた枠組みに基づき管理されることとなっているが、具体的なプログラムの策定および実施については、州政府に委任することが認められている。 都市ごみについては、連邦法によると、「廃棄物の収集、処分は基本的には州政府や地方団体に責任がある」とされており、具体的な廃棄物管理は各州あるいは地方団体に任されている。一方、連邦政府は、「国家としてのごみ処理に対する方針に沿って、ごみ削減や適切なごみ処理、経済的なごみ処理を行うための処理方法・処理プロセスの改善、調査研究、システム導入のための財政的、技術的援助という観点から州政府や地方団体を支援する必要がある。」とされている。 |
(6) |
RCRAの規制対象者 |
RCRAプログラムは多くの人々、組織がそれぞれの役割で関係する。議会と大統領は法令の修正を通じてRCRAプログラムに関する全体的な国家指令を設定する。EPAは固体廃棄物と緊急対策課を通じてEPAはこのような指令について規則、ガイダンスそして政策を開発することにより運用プログラムへと展開していく。 RCRAプログラムの特定場所での実行はEPA地方局や州の責任となっている。サブタイトルC,D,Iに示されている有害廃棄物、固体廃棄物そして地下貯蔵タンクに関するプログラムは州がキープログラムの責任を行使することができることができる。連邦政府の責任はプログラムごとに異なる。 サブタイトルD下では、EPAは都市ごみ埋立処分場に関する最低限の基準を制定し、州のプログラムが最低限の連邦基準に確実に適合することが必要となっている。 サブタイトルC下では、EPAは州の有害廃棄物プログラムを検証し、連邦プログラムより厳しい内容となっている場合には、連邦プログラムの代わりに州独自プログラムの実施を認めることとなっている。 サブタイトルI下では、EPAは州の地下貯蔵タンクプログラムが少なくとも連邦プログラムと同じくらい厳しいものであれば、連邦プログラムの代わりに州独自プログラムを実施することを認める。 RCRAを理解し遵守しなければならない規制対象のコミュニティは多く、多岐に渡っている。メーカーのように有害廃棄物発生者だけでなく、少量の有害溶液を排出するドライクリーニング店や地下石油タンクを備えるガソリンスタンドのような小規模な事業も対象となる。 一般の人々はルール作成に参加したり廃棄物処理施設に関するコメントを通じて、プログラムの開発と実施のほぼ全ての段階で重要な役割を演じる。 |
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2. |
廃棄物最小化 |
EPAはこれまで汚染が発生した後に処理し浄化することに注力してきたが、EPAは廃棄物が発生する前に廃棄物を削減することに環境的、経済的なインセンティヴがあるということを認識するようになった。結果的にRCRAの固体廃棄物と有害廃棄物プログラムは廃棄物発生抑制となる要素を取り入れている。EPAでは、固体廃棄物と有害廃棄物をできる限り削減することを意味する言葉として”waste minimization”を使用している。 いずれのプログラムも発生抑制(廃棄物発生前に発生段階で削減する)および環境に適合したリサイクルを強調している。 HSWAでは議会が有害廃棄物の発生段階で削減あるいはなくすということがRCRA有害廃棄物プログラムの第一優先事項とすべき、と宣言している。有害廃棄物の最小化を国家的に促進するためにEPAは有害廃棄物最小化国家計画(Waste Minimization)を作成した。これにより、以下のとおり国家的な有害廃棄物の発生削減に向けた主要な目標、目的および行動が提示された。
- 2005年までに有害廃棄物のうち残留性、生物への蓄積度そして毒性が最も高い(PBT)化学品の50%を削減すること。
- 廃棄物削減と処理や廃棄する場合の環境に適合したリサイクルを強化すること。
- 排出された化学物質がある媒体(大気、水、土壌)から他の媒体へ移動しないようにすること。
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3. |
EPAのリサイクルへの取り組み |
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都市ごみ処理の優先順位 |
EPAでは最も環境に適応した都市ごみ対策を順位付けしており、その内容としては、発生削減(リユースを含む)、リサイクルおよび堆肥化、そして最後に焼却と埋立てとなっている。 |
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リサイクル支援 |
EPAでは長期計画の中で2005年までに8,300万トン以上の資源ごみをリサイクルするという目標を立てており、この目標を達成するためにいくつかのリサイクル支援プログラムを実施している。 ○ 取組み1-The Job Through Recycling Program(JTR program) 企業などが再生品やリサイクル品をしようすることを奨励することによってリサイクル市場を刺激し、開発していくことを目指した取組みとなっている。 ○ 取組み2-Comprehensive Procurement Guideline program 政府が再生品やリサイクル品の購入を率先して実施する再生品の購入プログラムとなっており、この取組みもリサイクルの市場を刺激する観点からアプローチする取組みとなっている。 |
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