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- 概要 I 世界経済の動向
I 世界経済の動向
世界経済危機後の世界経済の動向
- 世界経済は、この5年間で、世界経済危機、欧州債務危機という2度に及ぶ深刻な危機に陥った。この間、先進国経済は大きく落ち込んだが、2013年には堅調さを示した。一方、中国をはじめ新興国はリーマン・ショック後の世界経済の成長をけん引してきたが、2011年以降、経済成長に陰りが見られ、2013年は全般的に景気減速が目立った。こうした状況から、2013年の世界経済は全体的に緩やかな成長にとどまった。
- 2013年の特徴的な動きとして、米国における金融緩和の縮小観測に伴う金融市場の動揺が挙げられる。世界経済危機後、新興国は、主要国の大規模な景気刺激策から生じた余剰資金の流入に支えられ、高い経済成長を遂げたが、その一方、いくつかの新興国では経常赤字が大幅に拡大した。2013年5月、米国の量的金融緩和縮小観測が高まったことをきっかけに、資金流出が加速した。5月下旬から6月末にかけて新興国の金融市場は大きく動揺したが、その後、経常収支、外貨準備、インフレ率等の状況に応じて投資家による国の選別の動きが表れた。
- 2014年1月から、米国において量的金融緩和の縮小が開始された。今後、経常収支の赤字国を始め一部の新興国において短期的な動揺が生じる可能性はあるが、過去の危機時と比べて新興国がリスクへの耐性を強めてきていること等に鑑みて、大きな混乱に至る可能性は低いと見られている。
- ・今後のリスク要因としては、量的金融緩和の縮小過程において金融環境が急激に変化した場合における金融のタイト化や地政学的なリスク等がある。
我が国の貿易・投資動向
- 2013年の我が国の貿易収支は、輸出額は2012年末からの円安方向の動きに伴い3年ぶりに増加したものの、火力発電用の化石燃料の輸入額増や好調な内需等を背景に輸入額が4年連続で増加し過去最大となったことにより、過去最大の赤字となった。
- ・2013年の貿易赤字の最大の要因は輸入価格の上昇であり、次いで、輸出数量の減少、輸入数量の増加となっている。しかし、輸出数量に関しては弱めの動きではあるものの第3四半期以降緩やかに増加してきている。
- 主要品目別の貿易収支を2005年、2010年、2013年で比較すると、鉱物性燃料の赤字幅が拡大する一方で、電気機器や一般機械の黒字幅が縮小してきている。また我が国の主要輸出品目に関して貿易特化係数等を各国と比較することにより輸出競争力を見ると、自動車、鉄鋼に関しては、引き続き高い輸出競争力を維持している一方で、電気機器、一般機械、精密機器に関しては、韓国や中国の成長の影響等もあり、輸出競争力について相対的な優位性が低下してきていると見られる。
- 為替動向と生産拠点や輸出価格に関する企業行動を見てみると、それらの間には現時点では余り強い連動性は見られず、企業は海外需要の動向や為替水準の安定性を注視している可能性がある。他方、輸出数量への影響については、為替水準にかかわらず、海外における需要動向の影響を指摘する企業が多くなっているが、円高方向に推移する中での輸出数量の減少に関しては、円高の影響により価格競争力が低下したこと、また、円安方向に推移する中での輸出数量の一定の増加に関しては、円建ての輸出価格は引き下げていないが円安方向への動きによって現地価格が下がっていることを指摘する企業が比較的多くなっている。
- 2013年の我が国の経常収支は1985年以降で過去最少の黒字となった。サービス収支は赤字幅が縮小し、第一次所得収支は黒字幅を拡大したものの、貿易収支の赤字幅が拡大したことが影響した。
- 我が国が今後経常収支黒字を維持するためには、観光客誘致や知的財産権等使用料受取の拡大等により、縮小傾向にあるサービス収支の赤字幅を更に縮小し、対外直接投資の収益率を高めること等により所得収支の黒字幅を更に拡大するとともに、輸出競争力の強化や資源の安定的かつ低廉な調達等により貿易収支の赤字幅を縮小していくことが重要である。