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- 第1部 第2章 第6節 我が国の経常収支動向
第6節 我が国の経常収支動向
1.我が国の経常収支動向
2013年の経常収支は3兆2,343億円の黒字となり、3年連続で黒字幅が減少し、比較可能な1985年以降で最少の黒字となった。第一次所得収支は16兆4,755億円と過去2番目の黒字となり、サービス収支も赤字幅を縮小し-3兆4,786億円となったものの、貿易収支(国際収支ベース)が-8兆7,734億円と過去最大の赤字となったため、経常収支の黒字幅が縮小した(第Ⅰ-2-6-1図)。
第Ⅰ-2-6-1図 経常収支の推移(2000年~2013年)
2.経常収支の国際比較
米国では、第一次所得収支とサービス収支は黒字となっているが、貿易収支がそれらを上回る大幅な赤字となっており、経常収支は赤字で推移している。しかし、足下では、貿易収支の赤字幅の縮小、第一次所得収支やサービス収支の黒字幅の拡大に伴い、経常収支の赤字幅が縮小している(第Ⅰ-2-6-2図)。
第Ⅰ-2-6-2図 米国の経常収支の推移
英国では、米国と同様、サービス収支と第一次所得収支は黒字であるが、貿易収支がそれらを上回る大幅な赤字となっており、経常収支は赤字で推移している。足下では、サービス収支の黒字幅が増加傾向にあるものの、貿易収支の赤字幅は横ばいとなっており、所得収支の黒字幅の増減により経常収支の赤字幅が左右される構造となっている(第Ⅰ-2-6-3図)。
第Ⅰ-2-6-3図 英国の経常収支の推移
ドイツでは、貿易収支は2,000億ドル前後にのぼる黒字を維持し、所得収支も黒字であるため、サービス収支は赤字となっているものの、経常収支は黒字で推移している。足下では、所得収支の黒字幅は余り伸びていないが、貿易収支の黒字幅の増加により、経常収支の黒字幅が増加している(第Ⅰ-2-6-4図)。
第Ⅰ-2-6-4図 ドイツの経常収支の推移
フランスでは、米国や英国と同じ構造となっており、サービス収支と第一次所得収支は黒字であるが、貿易収支がそれらを上回る大幅な赤字となっており、経常収支は赤字で推移している。足下では、サービス収支と第一次所得収支の黒字幅が伸び悩んでいることに加え、貿易収支の赤字幅が増加傾向にあるため、経常収支の赤字幅が増加傾向にある(第Ⅰ-2-6-5図)。
第Ⅰ-2-6-5図 フランスの経常収支の推移
韓国では、貿易収支の黒字により、経常収支は黒字で推移している。世界経済危機の影響で貿易収支の黒字幅が大幅に減少したことに伴い経常収支の黒字幅も大きく減少したが、2009年以降は貿易収支の黒字幅が改善したことに加え、第一次所得収支が2008年以降黒字に転化し、更に赤字で推移していたサービス収支も2012年に黒字に転化したことにより、2012年の経常収支の黒字幅が大きく増加した(第Ⅰ-2-6-6図)。
第Ⅰ-2-6-6図 韓国の経常収支の推移
以上、日本及び各国の経常収支の動向などについて見てきた。米国、英国、フランスでは、積極的な対外投資により所得収支が黒字であり、同時にサービス収支も黒字であるが、貿易赤字分を補いきれず、経常収支赤字となっている。一方で、ドイツや韓国では、大幅な貿易黒字により経常収支黒字を維持している。日本は2011年以降、貿易赤字の拡大に伴い、経常収支の黒字幅が縮小傾向にあり、現在の経済社会状況などがこのままで推移すると、他国の事例を見ると将来的に経常収支赤字に転化する可能性があるのではないかとの懸念も指摘されている。経常収支黒字を維持するためには、観光客誘致や知的財産権等使用料受取の拡大等により、縮小傾向にあるサービス収支の赤字幅を更に縮小し、対外直接投資の収益率を高めること等により所得収支の黒字幅を更に拡大するとともに、輸出競争力の強化や資源の安定的かつ低廉な調達等により貿易収支の赤字幅を縮小していくことが重要である。
第Ⅰ-2-6-7図 世界の経常収支図表
第Ⅰ-2-6-8表 経常収支黒字拡大又は赤字縮小国
第Ⅰ-2-6-9表 経常収支黒字縮小又は赤字拡大国