第1節 新興国市場の3類型
以下では、新興国市場の3つのグループについて、現状と課題を整理するとともに、2013年から開始している、各地域における取組の基本的方針を示す。
1.中国・ASEAN:FULL進出
第1グループは、「中国・ASEAN」である。同地域には約3万社の我が国企業が製造業を中心に進出しており、既に現地で相当程度の産業集積、サプライチェーンを形成している。
また、同地域は、特にASEANにおける中間層・富裕層の増加に伴い、生産拠点としてだけでなく、消費市場としての魅力が増加している。
ただし、同地域において自動車、家電等の日本製品は一定程度のシェアを獲得しているが、近年、海外の競合企業の追い上げは著しく、競争は激化している。
今後は、既に進出している企業については、我が国企業のサプライチェーンの高度化等を通じて「更に深く」、また消費市場が拡大してきている中でサービス業など製造業だけでなく「更に幅広い」産業の進出により需要を取り込んでいくことを目指す、いわば『FULL進出』が求められる。今後の当地域への戦略として、インフラ整備・人材育成協力によって中期的な進出基盤を構築し、制度整備と併せて市場開拓を進めていく。
2.南西アジア、中東、ロシア、中南米:CRITICAL MASSの到達
第2グループは、「南西アジア、中東、ロシア、中南米」である。同地域は、富裕層・中間層も育ち、市場規模も大きく、成長率も高いが、欧米企業や韓国企業等との比較で、我が国企業の進出は相対的に遅れていることから、いわば逆転を目指さなければならない市場といえる。
また、これらの地域には、資源国も多く、資源確保の観点からも幅広い経済関係構築・強化が必要である。
これらの市場では、市場規模、競合状況等の様々な要素を考慮した上で、戦略的に『CRITICAL MASSの到達』を目指す有望分野に絞って、集中的に取り組んでいく必要がある。
3.アフリカ:成功事例の創出
第3グループは、「アフリカ」である。同地域は、2030年頃にかけて、大幅な人口増が起こり、かつ市場も大規模に拡大するであろうとの期待も高いが、我が国企業の進出が進んでおらず、いわば不戦敗状態にある。
また、第2グループ同様、資源国も多く、資源開発及び関連インフラ整備の進展が期待されている。
今後は、我が国企業が安心して投資できる環境整備を通じて、1つでも多くの『成功事例』を創出し、我が国企業の事業展開のフィールドとして1日も早く位置づけられるような状況まで土壌作りを行っていくことが必要である。また、資源・インフラ関連の個別プロジェクトの実現が重要である。
今後、「日本企業の海外展開支援」、「インフラ・システム輸出」、「相手国からの資源供給確保」の3分野について、新興国の3グループの特性・違いに基づき、我が国として戦略的に取り組むことが肝要である。