- 政策について
- 白書・報告書
- 通商白書
- 通商白書2014
- 白書2014(HTML版)
- 第3部 第3章 対内直接投資の促進
第3章 対内直接投資の促進
対内直接投資の拡大は、経営ノウハウや技術、人材などの経営資源が流入することにより、我が国の生産性の向上や雇用の創出に資するものである。特に、中堅・中小企業を含め技術力の高い我が国にとって、外国企業誘致はオープンイノベーションの推進や地域経済の活性化の観点から極めて重要である。しかしながら、我が国の対内直接投資残高は2008年をピークに伸び悩み、対内直接投資残高のGDP比率は、主要先進国やアジア新興国に比べ大きく見劣りしている(第Ⅲ-3-1-1図、第Ⅲ-3-1-2図)。
第Ⅲ-3-1-1図 対内直接投資残高とGDP比率
第Ⅲ-3-1-2図 対内直接投資残高GDP比率 国際比較(2012年末)
第Ⅲ-3-1-3図 対内直接投資の促進
近年、国際的に見て外国企業の誘致競争はより激化しており、グローバル企業の誘致には、政府が一丸となってグローバル企業向けの投資環境、外国人向けの生活環境整備等に取り組み、諸外国に遜色ないビジネス環境を整備することが必要である。このため、政府は、平成25年6月14日の閣議決定において、新たな成長戦略として「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」を打ち出し、3つのアクションプランのうち、拡大する国際市場を獲得するための「国際展開戦略」の中で対内直接投資の活性化を掲げた。政府は本戦略において、海外の優れた人材や技術を日本に呼び込み、雇用やイノベーションの創出を図るため、日本国内の徹底したグローバル化を進め2020年における対内直接投資残高を35兆円へ倍増(2012年末時点17.8兆円)することを目指すこととした。
そこで、政府として、海外の資金や技術等を更に我が国に取り込むため「国家戦略特区」を活用し、世界で一番企業が活動しやすいビジネス環境を整備していく。こうした環境整備は海外に移転した日系企業の国内回帰にもつながる。本年5月1日に国家戦略特別区域として6区域を指定するとともに、区域方針を決定したところである。「東京圏」、「関西圏」といった広域的な大都市圏は、世界から人材・資本・技術が集まる「国際ビジネスやイノベーションの拠点」として、総合的な規制改革の実現を目指している。また、「新潟市」、「養父市(兵庫県)」、「福岡市」は、農業や雇用といった岩盤規制分野の「改革拠点」として、農地流動化や、ベンチャー・創業支援を強力に推し進める突破口となることを目指している。更に膨大な観光資源を持つ「沖縄県」も含め、この6か所の国家戦略特区では、今後、国・自治体・民間が一体となり、具体的な事業計画を取りまとめていく。
また、政府の外国企業誘致・支援体制の抜本強化のために、グローバル企業のエグゼクティブ層と同等の目線に立ち、個社の経営戦略を踏まえて有望な外国企業を発掘・誘致するため、独立行政法人日本貿易振興機構(以下「JETRO」という)における産業スペシャリスト機能の強化、グローバル企業向けの支援措置の整備等を通じて誘致体制を強化する(第Ⅲ-3-1-4図)とともに、我が国への投資計画の策定に必要な制度・行政手続等に関する相談や規制改革要望をJETROが一括して受け付け、関係府省庁との連携のもとに個別に対応するなど、外国企業に対する包括的なサポート体制を強化していく(第Ⅲ-3-1-5図)。
第Ⅲ-3-1-4図 ジェトロの産業スペシャリスト機能の強化
第Ⅲ-3-1-5図 ジェトロの包括的サポート
投資先としての日本の魅力向上のためには、グローバル企業に対する直接的なインセンティブ措置の提示が効果的である。このため政府は、平成26年度において、日本を含む複数の国において実態のある事業活動を行っている企業、又は日本国内に拠点を置き、海外市場を目掛けて事業を行う企業を対象に、拠点整備を支援する「対内投資等地域活性化立地推進事業費補助金」を実施するとともに、今後も「特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法(アジア拠点化推進法)」(平成24年11月施行)において、グローバル企業の研究開発事業及び統括事業を対象に、法人税負担軽減、特許料軽減等の措置を講じていく(第Ⅲ-3-1-6図)。
第Ⅲ-3-1-6図 アジア拠点化推進法の概要〈平成24年11月施行〉
さらに、海外事業者と投資提携を行うことで成功している日本の中堅・中小企業の事例を収集し、国内外販路の拡大など投資提携により得られたメリットや、従業員の流出などの生じ得るリスクも掲載した「海外事業者との投資提携事例集」を作成・公表した。本事例集では、併せて、投資提携を行う際のポイントや留意点も記述しており、本事例集の普及により、日本企業の経営者が新たな経営戦略を立てる際の一助とることを目指している。
これらに加え、ビジネス環境の向上に向けて更なる施策の具体化を進めるため、「成長戦略進化のための今後の検討方針」(本年1月20日産業競争力会議決定)において、外国企業経営トップから我が国の投資・生活環境に資する制度改革についての要望等をハイレベルで吸い上げて政府横断で具体的な施策化を図り、進捗管理を行うための推進方式を確立することとされた。また、第1回経済財政諮問会議(本年1月20日開催)において、総理から、外国企業経営者等から意見を聴取し、対日直接投資促進に向けた課題を整理するよう指示があった。これらを受けて開催された「対日直接投資に関する有識者懇談会」(以下「有識者懇談会」という。)(本年2月27日より全5回)は、外国企業等からヒアリングを行い、課題を整理した。
こうした中、経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議(本年4月4日)での総理指示を受け、JETROや在外公館、閣僚レベルによる政府一体での外国企業への働きかけを抜本強化するとともに、外国企業のニーズを踏まえ、対日投資拡大に資する制度改革に対応するため、閣僚級の「対日直接投資推進会議」を立ち上げた。同会議はJETROや在外公館による案件発掘・誘致活動の司令塔機能を担うとともに、外国企業経営者等から直接意見を聴取し、必要な制度改革の実現に向けて関係大臣や関係会議の取組を促進するとしている。
このように、今後は政府横断的な制度改革を進め、JETROや在外公館、先進的な地方自治体とも連携して案件発掘・誘致活動を一層積極的に行うとともに、総理・閣僚によるトップセールスを推進し、対日直接投資を促進することにより、新たな刺激によるイノベーションの創出・生産性の向上と地域経済活性化を目指す。