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第5節 規制・制度環境の整備

 新興国市場の成長を取り込むには、相手国のニーズに応える商品を生み出すだけでなく、同市場を我が国の製品・技術にとって有利な競争環境に整える必要がある。昨今の熾烈なグローバル競争においては、価格や技術のみならず、知的財産、標準、民間規格、さらにはこれらを規定する各国「制度」が企業利益に大きな影響を与えている。欧米諸国は、従来から制度形成が自国製品の競争条件を左右することの重要性を認識しており、官民で連携して新興国における制度構築にも積極的に取り組んでいるが、我が国は、制度は企業が適応すべき所与のものと捉える傾向にあること、制度構築がもつ重要性に対する理解の不足などにより、必ずしも大きな成果を生んでこなかった。今後、我が国企業の製品・サービスの優位性を高める競争環境を生み出し、結果としてビジネス上の効果を生むためには、既存の制度に適応するだけでなく、最適な制度を自ら形成するという視点が必要である。すなわち、企業活動がますますグローバル化する今日においては、制度構築に際してStandards (標準)とRegulations(規制)を戦略的に連携させ、最終的に我が国が取得したStandardsを相手国のRegulationsとして導入することで企業利益を拡大することが不可欠である。

 以下の第Ⅲ-2-5-1図は、自社製品の競争上の優位性確保を目的として、各国や企業が制度形成に取り組んだ主な事例をまとめたものである。自社の売上げの増加のほか、売上げ減の回避、生産コストの削減、生産コスト増の回避等、制度形成に取り組む目的は様々であるが、今後もこのような制度形成の成功事例を増やしていくことが必要である。制度形成に当たっては、世界の政策・ルール動向に敏感であること、制度形成を経営戦略に位置づけることの重要性を理解し、最適な内部体制を構築すること、国ごとの事情や政策体系に応じた効果的なアプローチをすること、などが求められる。一方で、企業だけでは活動に限界があり、政府によるアプローチも不可欠である。制度形成の重要性を啓発するとともに、フェーズに応じて政府間の働きかけを行い、企業活動を後押しすることが必要である。

第Ⅲ-2-5-1図 各国、企業の制度整備に関する取組の例

 今後、対象とする国・市場の特徴を踏まえ、官民が連携して制度形成を積極的に仕掛けていくことで、新興国市場の成長を取り込み、我が国経済の持続的な発展につなげていく。

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