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第3章 対内直接投資の促進

第1節 対内直接投資の意義と現状

1.対内直接投資の意義

 対内直接投資の拡大は、経営ノウハウや技術、人材などの外国企業の高度な経営資源が流入することにより、我が国における生産性の向上や雇用の創出に資するものである。

 実際、日本に進出済みの外国企業の全要素生産性は日本企業に比べて高い傾向にあり、このような外国企業が参入することで、その産業全体の生産性が向上する直接効果に加え、外国企業の経営資源が他の産業へスピルオーバーすること等により、我が国全体の生産性が向上する間接効果も期待される(第Ⅲ-3-1-1-1図)。

第Ⅲ-3-1-1-1図 日本企業と日本に進出済みの外資系企業の生産性比較

 また、2014年に経済産業省が取りまとめた「海外事業者との投資提携事例集―協業で未来を拓く―」によると、日本企業が外国企業と投資提携を行うことで、商品の新規開発や社内人材の成長、国内外の販路拡大などの効果が得られたと指摘されている(第Ⅲ-3-1-1-2図)。

第Ⅲ-3-1-1-2図 外国企業との投資提携における日本企業のメリット

2.対内直接投資の現状

(1)諸外国と比較して少ない対内直接投資

 我が国の対内直接投資残高(対GDP比)は2013年末時点で3.7%となっており、主要先進国やアジア新興国に比べると低い水準にある(第Ⅲ-3-1-2-1図)。中長期的に見れば、2000年代に入り大きく増加したものの、2008年のリーマン・ショックを機に伸び悩んでいた。

第Ⅲ-3-1-2-1図 日本の対内直接投資残高

 しかしながら、2014年末の対内直接投資残高は前年比3.8兆円増の23.3兆円となっており、また、フローベースでも、2012年以降は投資の実行超が続いており、2013年は7,265億円(対前年比約17.9倍増)、2014年は9,548億円(同約1.3倍増)となる等、回復傾向にある(第Ⅲ-3-1-2-2図)。

第Ⅲ-3-1-2-2図 対内直接投資額(フロー統計)の推移

(2)東京に約7割の外資系企業の本社が集中

 経済産業省が実施した「平成26年外資系企業動向調査」によると、外資系企業の約7割が東京都に本社を設置している(地域別では約8割が関東地方に本社を設置)。また、三大都市圏(関東・近畿・中部地方)以外に本社を置く外資系企業は全体の約3%にとどまっており、外資系企業の地方への立地が課題となっている(第Ⅲ-3-1-2-3図)。

第Ⅲ-3-1-2-3図 外資系企業の本社所在地数

3.対日直接投資の要因

 経済産業省が実施した「欧米アジアの外国企業の対日投資関心度調査」によると、日本のビジネス環境の「弱み」として、事業活動コストや英語での円滑なコミュニケーション、商慣習、事業規制の開放度などを指摘する外国企業は依然として多く、これらは対日直接投資の阻害要因となっていると考えられる(第Ⅲ-​3-1-3-1図)。

第Ⅲ-3-1-3-1図 日本のビジネス環境の「強み」と「弱み」

 他方で、近年の日本経済の回復に伴い、投資先としての評価も変わりつつある。同調査によると、アジア諸国・地域を対象とした拠点類型ごとの魅力度比較において、2011年度には全ての類型で中国が1位であったが、2013年度はR&D拠点、販売拠点で日本が1位となっている(第Ⅲ-3-1-3-2表)。また、世界経済フォーラムが発表した国際競争力レポートによると、日本は「制度」「インフラ整備」「初等教育・保健衛生」「財市場」「金融市場」等の評価を伸ばし、総合順位で2012年の10位から2014年には6位にまで上昇しており、日本は国際競争力を取り戻しつつある(第Ⅲ-​3-1-3-3図)。

第Ⅲ-3-1-3-2表 アジア諸国・地域を対象とした拠点類型ごとの魅力度比較

第Ⅲ-3-1-3-3表 日本の国際競争力の推移

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