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第5節 アフリカ

1.アフリカの経済概略

アフリカは世界最後のフロンティア市場と呼ばれ、多くの国が投資先として注目している。他方で、格差問題などの課題もあり、リスクを抱えている地域である。ここでは、まずアフリカ地域全体に関して概要を述べ、その後に、資源価格下落によって近年リスクが高まっているナイジェリアとTICADⅥが開催され堅調な経済成長を続けているケニアについて述べていく。

アフリカでは多くの国が高いGDP成長率を維持しており、特にエチオピアは新興国の中でも高い水準である10%近い成長率を維持している(第Ⅰ-4-5-1-1図)。また、一人当たりGDPも上昇傾向にある。近年は資源価格の下落等によって、南アフリカやナイジェリア等の資源依存国では成長率が低下しているものの、それ以外のケニアやエチオピア等では依然として高水準のGDP成長率を維持している(第Ⅰ-4-5-1-2図)。

第Ⅰ-4-5-1-1図 アフリカ主要国の実質GDP成長率

第Ⅰ-4-5-1-2図 アフリカ主要国の一人当たり名目GDP

他方で経済格差の問題を抱えており、アフリカの多くの国ではジニ係数が高止まりしている状況である。特に南アフリカでは1993年のジニ係数は0.59であったが、2013年では0.63まで上がっており、格差は悪化傾向である。ジニ係数の社会騒乱多発の警戒ラインは0.4であるとされているため、社会及び経済の安定性が懸念要素として挙げられる(第Ⅰ-4-5-1-3図)。

第Ⅰ-4-5-1-3図 アフリカ主要国のジニ係数推移

また、南アフリカ、ナイジェリアをはじめとしてアフリカの多くの国では資源輸出に依存しているため、資源価格の下落によって、財政収支が悪化する傾向がある。特にナイジェリアは近年の資源価格下落によって急速に財政収支が赤字方向に拡大しており注視が必要である(第Ⅰ-4-5-1-4)。

第Ⅰ-4-5-1-4図 アフリカ主要国の財政収支推移(対GDP比)

2.ナイジェリア

まず、ナイジェリアの輸出品目の推移を見ていくと、ナイジェリアは飲食料品が増加しているほか、輸送用危機や化学工業品についても足下では増加していることが分かる。他方で、資源依存度が高く、鉱物性生産品の輸出は全輸出品目の9割程度を占めている(第Ⅰ-4-5-2-1図)。

第Ⅰ-4-5-2-1図 ナイジェリアの輸出品目推移

産業面では石油等を含む採掘業のGDPシェアは6%程度と低いものの(第Ⅰ-4-5-2-2図)、外貨獲得手段が石油に大きく依存しているため、石油価格の変動が公的部門の需要を減らし、消費、投資、資産の価格などを通して非石油部門へと影響が及ぶ(第Ⅰ-4-5-2-3図)。

第Ⅰ-4-5-2-2図 ナイジェリアのGDP構成(2015年)

第Ⅰ-4-5-2-3図 ナイジェリアにおける石油価格下落による経済への影響

ナイジェリアの経常収支を見ると、2013年までは堅調だったものの、2014年以降は、財貿易収支が急落することによって、経常収支がマイナスにまで落ち込んでいることが分かる(第Ⅰ-4-5-2-4図)。財貿易収支の中身を見ると、その大部分が石油関連の輸出に依存していることが分かる(第Ⅰ-4-5-2-5図)。

第Ⅰ-4-5-2-4図 ナイジェリアの経常収支推移

第Ⅰ-4-5-2-5図 ナイジェリアの財貿易収支内訳推移

石油価格が下落することによって、外貨準備等も減少し、格付等も大きく連動して下がる状況となっており、石油依存から脱することが目下の課題となっている(第Ⅰ-4-5-2-6図,第Ⅰ-4-5-2-7表)。

第Ⅰ-4-5-2-6図 アフリカ主要国の外貨準備高

第Ⅰ-4-5-2-7表 ナイジェリアの長期発行体格付(外貨建て)

GDPの構成要素の推移を見ていくと2000年以降、純輸出は下落傾向にあり、家計消費が上昇している(第Ⅰ-4-5-2-8図)。純輸出の内訳を見ていくと、輸入も下落傾向にあるものの、資源価格の下落によって輸出が大幅に下落したため、純輸出が下落していることが分かる(第Ⅰ-4-5-2-9図)。

第Ⅰ-4-5-2-8図 ナイジェリアのGDP構成比

第Ⅰ-4-5-2-9図 ナイジェリアの輸出入推移(対GDP比)

3.ケニア

ケニアは資源依存度が低く、産業面においても主産業は農業である(第Ⅰ-4-5-3-1図)。また輸出で見ても、植物性生産品がメインであり、その額も上昇傾向である(第Ⅰ-4-5-3-2図)。輸入品目については、工業用品や機械製品に加えて燃料を輸入しており、輸出額よりも大幅に輸入している状況となっている(第Ⅰ-4-5-3-3図)。

第Ⅰ-4-5-3-1図 ケニアのGDP構成(2016年)

第Ⅰ-4-5-3-2図 ケニアの輸出品目推移

第Ⅰ-4-5-3-3図 ケニアの輸入品目推移

GDPの構成比でみると、純輸出の項目がマイナスとなっており、それ以外の大部分は家計消費によって構成されていることが分かる(第Ⅰ-4-5-3-4図)。経常収支についても第一次所得収支、サービス収支の黒字よりも大きく財貿易収支の赤字が出ている状況(第Ⅰ-4-5-3-5図)。

第Ⅰ-4-5-3-4図 ケニアのGDP構成比

第Ⅰ-4-5-3-5図 ケニアの経常収支推移

他方で、資源依存度が低く外貨準備高についても堅調に伸びてきており、南アフリカやナイジェリアと比較すると資源面でのリスクが小さく、IMFの経済成長率見通しにおいても、2021年においても6.5%程度の高い成長率を維持することが推測されている(第 Ⅰ-4-5-3-6図)。

第Ⅰ-4-5-3-6図 アフリカ主要国の実質GDP推移

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