第2節 APECを通じた地域経済統合の推進と経済成長の促進
ペルーが議長を務めた2016年の閣僚会議、首脳会議では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を始めとする地域経済統合の推進、サービス貿易における協力、デジタル貿易、インフラ開発を始めとした連結性の強化などについて議論が行われた。(第Ⅲ-2-2-1図)。地域経済統合の推進については、自由貿易に対する懐疑的な見方と貿易の成長の停滞に対処するため、開かれた経済を実現することの重要性が強調された。また、FTAAPについては、最終的な実現に向けたコミットメントを再確認した。また、「FTAAPの実現に関連する課題にかかる共同の戦略的研究」を承認し、同研究に係る提言を「FTAAPに関するリマ宣言」として承認した。
サービス貿易については、サービス貿易・投資を促進し、サービス分野の競争力を強化する目的と2025年までに取るべき具体的な行動などを定めた、「APECサービス競争力ロードマップ」に合意した。デジタル貿易については、デジタル貿易に関する作業を前進させる「次のステップ」の承認が歓迎された。
インフラ開発を始めとする連結性の強化については、各エコノミーのインフラ開発投資に係る関連法制度を「インフラの質」等の観点からレビューし、これにより判明した能力構築のニーズに合わせて能力構築を提供する仕組みである「APECインフラ開発投資ピアレビュー及び能力構築」など、質の高いインフラに関する取組が歓迎された。また、我が国が提案した「質の高い電力インフラ・ガイドライン」の完成が歓迎された。
2017年はベトナムが議長を務め、「新たなダイナミズムの創出と共通の未来の促進(Creating New Dynamism, Fostering a Shared Future)」をテーマに、(1)持続可能で、革新的かつ包摂的な成長の促進、(2)地域経済統合の深化、(3)デジタル時代における零細・中小企業の競争力・イノベーションの強化、(4)気候変動に対応した食料安全保障と持続可能な農業の促進の4つの課題の下に議論を進めており、その成果は11月にダナンで開催されるAPEC首脳会議・閣僚会議で取りまとめられる予定である。
我が国としては、2010年の「横浜ビジョン」を基礎とした議論の流れを着実に引き継ぎつつ、製造業関連サービスや環境サービス等のサービス貿易の自由化・円滑化や質の高いインフラ開発・投資の促進等に係る具体的な取組を進め、アジア太平洋地域の貿易・投資の自由化・円滑化を促していくことで、FTAAPを始めとする同地域の地域経済統合の推進と更なる発展に取り組んでいく。その上で、この地域の力強い成長力、インフラなどの旺盛な需要や巨大な中間層の購買力を取り込むことで、我が国に豊かさと活力をもたらすような通商政策を実現していく。
第Ⅲ-2-2-1図 APEC首脳会議