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第5節 租税条約

1.租税条約の役割

租税条約は、国際的な二重課税を回避するため、両国間の投資・経済活動に関し、課税できる所得の範囲等を調整するものである。また、その締結によって、両国の税務当局間の相互協議や情報交換、徴収共助等の枠組みが構築され、租税に関する紛争の解決や脱税及び租税回避行為の防止が図られることとなる。

租税条約の締結により、海外進出企業に対する課税に係る一定の法的安定性が確保され、予見可能性が高まるとともに、我が国企業が海外で稼いだ収益の国内環流の円滑化にも資するなど、健全な投資・経済交流が一層促進されることが期待される。

2.租税関連条約の新規締結・改正状況

我が国は、2017年4月1日現在、68の租税関連条約等を110か国・地域との間で有している。

近年、中東等資源国との租税条約の新規締結や先進国との既存条約の改正が進められている。特に、ニュージーランド、米国、スウェーデン、英国、ドイツなどの先進国との改正においては、税務当局による相互協議の開始から一定期間が経過しても事案が解決されない場合に、税務当局以外の第三者の関与を得て解決を促すための仲裁制度を導入するとともに、投資所得(配当、利子等)に対する源泉地国における課税を軽減または免除する内容になっている。また、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資する情報交換を主たる内容とする条約(いわゆる情報交換協定)の締結も進められている(第Ⅲ-2-5-1表)。

今後とも、相手国との経済関係、我が国産業界からの要望や我が国課税権の適切な確保等の観点を総合的に勘案し、企業の海外展開の支援に資する租税関連条約のネットワーク拡充の取組を加速することが重要である。具体的には、将来的に我が国との投資・経済関係の発展が見込まれる投資先国との間で新規に租税条約を締結するとともに、近年の経済情勢の変化に対応した既存条約の改正を進め、海外での事業活動に対する課税所得の範囲の明確化、投資所得に対する源泉地国における課税の減免、仲裁制度の導入など、内容を充実させることが必要である。

第Ⅲ-2-5-1表 租税条約の条項 (OECDモデル条約)

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