第1節 アフリカ
〈今後の方針〉
アフリカについては、豊富な天然資源を有するほか、若年層を中心とした人口増加、GDPの成長が著しく、新興国市場としてポテンシャルの高い地域となっている。一方、昨今の資源価格の下落を受け、アフリカ諸国では産業の多角化に向けたインフラ整備、人材育成等が重要と考えられており、我が国の対アフリカ協力への期待が高い。我が国の質の高いインフラにより差別化を図るとともに、投資協定の締結促進、第三国や国際機関との協力プラットフォームを通じて日本企業によるアフリカ進出を支援し、官民一体での取組を推進していく。
〈進捗状況〉
2016年8月には、ケニア・ナイロビで第六回アフリカ開発会議(TICADⅥ)が開催され、安倍総理大臣が出席。ケニヤッタ・ケニア大統領(開催国)、デビー・イトゥノ・チャド共和国大統領(AU議長)と共に共同議長を務めた。経済産業省からは松村経済産業副大臣が出席し、産業多角化に関するテーマ別会合において、質の高いインフラ整備、民間セクター活動促進、人材育成の3つの観点から取組を表明した(第Ⅲ-3-1-1図)。今次会議はアフリカのオーナーシップの高まりを受け、初のアフリカ開催となり、アフリカ53か国、開発パートナー諸国及びアジア諸国、国際機関及び地域機関の代表並びに民間セクターやNGO等市民社会の代表等、約11,000名以上(会場内のサイドイベント含む)が参加した。安倍総理大臣の同行ミッションとして、77団体の企業及び大学等の代表が参加し、各セッションにおいて日本の民間セクターの取組を紹介した。
第Ⅲ-3-1-1図 アフリカ開発銀行・アデシナ総裁と松村経済産業副大臣の会談
また、投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定(日・ケニア投資協定)への署名式が開催され、両政府の署名が実施された。発効すればサブサハラアフリカではモザンビーク(2014年発効)に続き2か国目となり、今後の日本企業の更なる進出やエネルギー分野を含むインフラ事業の推進が期待されている。
TICADⅥにおいては、経済産業省関連の施策として、①質の高いインフラ支援、②民間セクターの活動促進、③人材育成を軸に、各種施策を発表した。①質の高いインフラ支援としては、アフリカの地熱開発の総合的支援(今後6年間で約300万世帯分の電力供給を実現等)、エネルギー・資源開発を含むインフラ案件のリスクマネー供給拡大等を、②民間セクターの活動促進としては、「日アフリカ官民経済フォーラム」の創設や、アフリカ9か国の投資誘致機関とJETROとの連携強化(ジャパンデスク設置)、「アフリカ投融資特別保険」(リスクカバー率100%)等を、③人材育成としては、今後新たに3年で1000人の産業人材育成の実施やABEイニシアティブ留学生等のネットワーク化等を挙げた。
さらに、TICADⅥでは公式サイドイベントとしてJETRO主催のジャパンフェア及び日本アフリカビジネスカンファレンスが開催され、両イベントに松村経済産業副大臣が出席した。ジャパンフェアはアフリカビジネスに取り組む日本企業等約100社・機関(うち約4分の1は中小企業)の産官学各界が結集し、官民連携による質の高いインフラ整備支援、フードバリューチェーン構築、栄養改善、環境、省エネ、新エネ、保健衛生改善(医療、医薬等)等の広い分野の展示がなされ、アフリカにおける過去最大級の展示会となった。同フェア期間中には安倍総理大臣とケニヤッタ・ケニア大統領が巡覧したほか、日・アフリカ双方から多くの要人が訪れた。2日間に渡り開催された日本アフリカビジネスカンファレンスでは、アフリカへの更なる貿易・投資の拡大を見据え、50を超える日本及びアフリカの企業・機関が、資源・インフラ・製造業・ICT・医療・金融・農業・観光等の各テーマに基づき、相互のビジネス発展に資する取組を発表し、2日間で日本・アフリカ側から計1,400名規模の聴衆が参加した。同カンファレンス内では、日本とアフリカの企業・団体間におけるMOU署名式が開催され、安倍総理大臣、ケニヤッタ・ケニア大統領をはじめ、ルワンダのカガメ大統領、マダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領も出席した。その場で署名された計73本のMOUにより、日本とアフリカの官民が一体となってアフリカビジネスに取り組む方向性が確認された。
TICADⅥのほか、2016年5月には、星野経済産業大臣政務官が経済産業省政務として初めてエチオピアを訪問し、デブレツィオン副首相及びウォックナー運輸大臣と会談を行い、貿易投資、エネルギー、産業協力の強化に向け意見交換を行った。同7月には、エチオピアにおけるJETRO事務所開所式が開催され、日本・エチオピア間の貿易や日本による対エチオピア・インフラ開発支援を含む、両国間の広範なビジネス交流の促進が期待される。
2017年3月には、ニュシ・モザンビーク大統領が訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を行った。首脳会談後には両首脳立ち会いの下、経済産業省及び国土交通省は、マプト市及びモザンビーク運輸通信省との間で、「マプト市の都市交通に関する協力覚書」に署名。モザンビークの首都マプト市における都市交通の整備に関し、更なる協力関係を発展させていく。また、両首脳により発出された日・モザンビーク共同声明では、マプトにおけるJETRO事務所の設置に対する期待が示された。
このような要人往来の機会を捉え、我が国による対アフリカ投資及び我が国とアフリカの間の貿易促進に向け、引き続き取組を進めていく。