第2節 ロシア
〈今後の方針〉
ロシア・CIS地域は、石油・石炭・天然ガスをはじめ、ウラン、レアメタル、レアアース等の鉱物・エネルギー資源が豊富である。一方、旧ソ連時代に建設されたインフラは老朽化が進んでおり、インフラ設備等の新規建設及び更新プロジェクトが多数存在し、これらを促進するため、我が国企業から、投資環境の改善ニーズが高まっている。
大統領や政府高官に権限が集中している国が多いことから、要人往来の機会を捉えたトップセールスが重要。特に、ロシアにおいては、2016年5月の首脳会談以降、8項目の「協力プラン」(下記注)の具体化に向けた動きが加速化している。今後、同プランの具体化を更に加速化させ、日露経済関係の深化を進める30。
〈進捗状況〉
2016年5月6日、ロシア連邦ソチで安倍総理大臣が8項目の「協力プラン」を提示し、プーチン大統領から高い評価と賛意が表明されて以降、8項目の「協力プラン」の具体化に向けた動きが加速化している。同年9月、世耕経済産業大臣がロシア経済分野協力担当大臣に任命された。8項目の「協力プラン」の具体化に向け、世耕ロシア経済分野協力担当大臣の下、野上官房副長官を議長とし、各省の次官級を構成員とした「ロシア経済分野協力推進会議」が発足した。11月には、モスクワで「協力プラン」の具体化に関する日露ハイレベル作業部会」が開催され、8項目の「協力プラン」の具体化に向けた作業の加速化が確認されるとともに、同月ペルー・リマで開催されたAPEC閣僚会合の際には、日露間で8項目の「協力プラン」の具体化に関する作業計画が合意された。
2016年12月、大統領としては11年ぶりとなるプーチン・ロシア大統領の訪日が実現し、経済分野では、日露間で協力覚書等80件の文書が署名され、インフラプロジェクト等を始めとした経済案件の着実な進展が見られた。
2017年1月、世耕大臣はモスクワを訪問し、シュヴァロフ第一副首相、オレシュキン経済発展大臣、マントゥロフ産業商務大臣等との会談で8項目の「協力プラン」を着実かつ迅速に進めていく方策について協議した。
8項目の「協力プラン」の個別分野では、「(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大」に関連し、昨年9月、ウラジオストクで行われた東方経済フォーラムの際、経済産業省とロシア連邦経済発展省は、中堅・中小企業分野における協力のためのプラットフォーム創設に関する覚書に署名した。日本側は、同月末に、中堅・中小企業の海外展開支援機関や、自治体、金融機関などからなる日本側プラットフォームを立ち上げ、さらにロシアへの輸出・投資を拡大するため、JETROにロシア展開の専門家を配置し、戦略策定から販路開拓、パートナー探し、商談同行、契約締結まで一貫して個別企業支援を行う仕組みを整備し、一体的に支援を行っている。
また、「(4)エネルギー」に関連し、世耕大臣はノヴァク・エネルギー大臣との間で2016年11月、エネルギー・イニシアティブ協議会第一回会合開催し、炭化水素、原子力、省エネ・再エネの各分野についてワーキング・グループを設置した。2017年1月の第二回会合では、各分野の協力プロジェクトについて、その早期の具体化を目指して協力を進めていくことを確認した。
「(5)ロシアの産業多様化・生産性向上」については、2016年8月、貿易経済に関する日露政府間委員会のもとに産業分野における協力に関する分科会を立ち上げ、具体化策を検討することとした。同分科会での議論を踏まえ、①高い技術力や生産性管理技術を備えた日本の専門家によるロシア企業の生産性診断及び改善指導、②ロシアの裾野産業に従事するラインマネージャーを日本に招聘し、生産工場の現場視察や日本の管理技術・設備に関する研修等を行っている。これら事業により、日本の最先端設備をロシア企業に導入することを目指すとともに、ロシア企業の生産性向上により、ロシアに進出している日系企業のロシア企業からの部品等の調達条件が改善され、ひいては日系企業の市場シェア拡大につながることが期待される。
第Ⅲ-3-2-1図 第Ⅲ-3-2-1図 2016年5月ソチでの首脳会談の様子
第Ⅲ-3-2-2図 第Ⅲ-3-2-2図 日露ビジネス対話で記念撮影に臨む両首脳
30 (1)健康寿命の伸長、(2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り、(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大、(4)エネルギー、(5)ロシアの産業多様化・生産性向上、(6)極東の産業振興・輸出基地化、(7)先端技術協力、(8)人的交流の抜本的拡大