経済産業省
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第3節 中東

〈今後の方針〉

中東地域は、我が国にとってエネルギーの安定供給に欠かせない地域である。石油依存度の高い中東諸国において課題となっている産業多角化や貿易・投資環境改善への支援を通じ、同地域との経済関係の強化・市場の拡大と、同地域の安定確保を目指す。また、要人往来の機会を捉えながら、油田権益の延長など、更なるエネルギー供給の安定性確保に向けた働きかけを進めていく。

〈進捗状況〉

サウジアラビアについては、2016年9月に、ムハンマド副皇太子が訪日し、安倍総理大臣と会談を行った。会談では、サウジアラビアの成長戦略である「サウジ・ビジョン2030」と日本の成長戦略の実施に向け具体的協力を集中的に議論すべく、閣僚級の「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」を立ち上げ、2016年10月に第1回会合を行うことで一致した。

同年10月には、リヤドにおいて、日本側から世耕経済産業大臣、薗浦外務副大臣が、サウジ側からファキーフ経済企画大臣、アル=カサビ商業投資大臣、アル=ファーレフエネルギー・産業・鉱物資源大臣が出席し、また両国合わせて33の省庁・機関が参加して、第1回日・サウジ・ビジョン2030共同グループ閣僚級会合が開催された。同会合においては、「貿易・投資機会」、「投資・ファイナンス」、「エネルギー・産業」、「中小企業・能力開発」、「文化・スポーツ」の主要テーマ毎にサブグループを設置し、具体的なアクションプランを協議することが合意され、あわせて、第1回の各サブグループ会合も実施された。この機に、世耕経済産業大臣は、サルマン国王及びムハンマド副皇太子への表敬訪問を行い、サウジアラビア側から今後の両国の関係強化に向けた強い期待が表明された。

さらに、2017年3月には、サルマン国王訪日という歴史的機会(サウジアラビア国王として46年ぶり)を捉え、安倍総理大臣との首脳会談において、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめた「日・サウジ・ビジョン203031」が合意され、両首脳立ち会いの下で、世耕経済産業大臣及びファキーフ経済企画大臣他による「日・サウジ・ビジョン203031」に係る協力覚書への署名が行われた(第Ⅲ-3-3-1図)。また、世耕経済産業大臣がサルマン国王を表敬し、「日・サウジ・ビジョン203030」の策定が歓迎された。また、第2回日・サウジ・ビジョン2030共同グループ閣僚級会合を開催し、日本側からは、世耕経済産業大臣ほか、サウジアラビア側からはファキーフ経済企画大臣ほかが出席し、「日・サウジ・ビジョン2030」を着実に実施するための討議が行われた。

イランについては、9月に国連総会の場で安倍総理大臣がローハニ大統領と首脳会談を実施。ローハニ大統領から、経済・貿易・投資関係を拡大させたいとの意向が示され、安倍総理大臣からは100億ドルのファイナンス・ファシリティの設定、投資協定の国会承認など日本側の取組を説明の上で、イラン側のビジネス環境整備等更なる努力を働きかけた。10月には前年に続きJETROがテヘラン国際産業見本市にジャパン・パビリオンを出展し、26の日本企業がこれに参加した。また、12月には多数のイラン企業を伴ってザリーフ外務大臣が訪日し世耕経済産業大臣と会談を行うとともに、JETRO・駐日イラン大使館主催のビジネス・フォーラムに出席。日本企業の更なるイラン市場への進出を呼びかけた。

UAEについては、2016年1月、5月の高木経済産業副大臣のUAE(アブダビ)訪問での協議を含む累次の働きかけをはじめ、同年5月には、ジャーベルADNOC・CEO兼国務大臣が訪日し、林経済産業大臣、高木経済産業副大臣と会談し、2018年に期限を迎える海上油田権益の再獲得に向けた働きかけ等を行う貴重な機会となった(第Ⅲ-3-3-2図)。また、同年11月、高木経済産業副大臣がUAE(アブダビ)を訪問し、この分野で世界最大級の展示会であるアブダビ国際石油展示会議(ADIPEC)に参加するとともに、政府要人との間で、エネルギーを始めとする幅広い分野での協力を一層推進していくことを確認した。2017年1月、世耕経済産業大臣がワールド・フューチャー・エナジー・サミット(WFES)に際してUAE(アブダビ)を訪問し、陸上油田権益の獲得が発表された。加えて、同年3月には、高木経済産業副大臣がUAE(アブダビ)で開催された世界製造業・産業化サミット(GMIS)に参加するとともに、政府要人との間で、エネルギーを始めとする幅広い分野での協力を一層推進していくことを確認した。

イスラエルについては、2016年12月にフランス・パリにおいてネタニヤフ首相と安倍総理大臣が首脳会談を実施したほか、同年6月にはイスラエル経済省と経済産業省との間で第2回日イスラエル経済政策対話が開催され、両国間の投資・貿易促進に向けた方策、研究開発(R&D)やサイバーセキュリティ分野での協力、ベンチャー政策等の幅広い分野で意見交換を行った。同年10月にはIoT分野の展示会「CEATEC」(於東京)にイスラエル企業が参加し、2017年1月のサイバーセキュリティ分野の展示会「サイバーテック2016」(於テルアビブ)に昨年に引き続いてJETROがジャパンブースを出展するといった双方向での企業交流を支援し、日本企業に多くのビジネスマッチング機会を提供した。また、2017年1月には「投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定」(日・イスラエル投資協定)への署名式が開催された。

トルコについては、2016年9月に国連総会の場で安倍総理大臣がエルドアン大統領と首脳会談を実施したほか、同年12月に高木経済産業副大臣の豪州出張(WTO・EGA閣僚会合)の機会を捉えて、ゼイベキチ経済大臣と会談を行い、投資・貿易関係強化に向けた意見交換に加えて、日本企業によるトルコのインフラプロジェクトへの更なる参画に向けた働きかけを行った。

カタールとの間では、2016年11月のアル・サダエネルギー工業大臣訪日時に開催されたLNG産消会議2016や日・カタール合同経済委員会といった場を通じて、我が国へのLNGの安定供給を始めとする経済関係の更なる強化に向けた意見交換が行われた。

パレスチナについては、2016年11月にJETRO・JICAの共催により「パレスチナビジネス環境視察ミッション」を派遣、在イスラエル、在欧、在中東の日系企業が参加、両国の企業交流の活発化に向けた支援を行った。

ヨルダンについては、2016年10月にアブドッラー2世国王が訪日し安倍総理大臣と首脳会談を実施したほか、「ヨルダン・日本ビジネスフォーラム」が開催され、ヨルダンのビジネス環境の説明や日ヨルダン両国企業の情報交流会が行われた。

エジプトについては、2017年3月にシャーケル電力・再生可能エネルギー大臣が訪日し、高木経済産業副大臣と会談を行い、電力分野における協力を通じて、両国の経済関係を更に発展させるべく取り組むことを確認した。

モロッコについては、2016年5月にカサブランカにおいて、林経済産業大臣出席の下、第4回日本・アラブ経済フォーラムが開催された。①日アラブ間における経済関係の多角化、②モロッコでの投資機会、③エネルギー・環境・インフラ等の幅広い分野での協力の推進について議論され、「日本・アラブ経済関係の発展のための共同声明(カサブランカ宣言)」が発出された。

第Ⅲ-3-3-1図 日・サウジ・ビジョン2030ビジネスフォーラム(協力覚書交換式の立ち会い)

第Ⅲ-3-3-2図 アブダビにおけるジャーベル国務大臣との会談

31 「日・サウジ・ビジョン2030」の骨子

(1)新しい日サ協力の羅針盤として、脱石油依存と雇用創出のためサウジが追求する「サウジ・ビジョン2030」と、GDP600兆円の達成に向けて日本が追求する「日本の成長戦略」のシナジーを目指す。

(2)シナジーを最大化させるため、「多様性」、「革新性」、「ソフトバリュー」の3本の柱からなる日本ならではの総合的な協力とする。

(3)日サの41省庁・機関が参加し、具体的連携の重点分野として9分野(競争力ある産業、エネルギー、エンターテイメント・メディア、健康・医療、質の高いインフラ、農業・食料、中小企業・能力開発、文化・スポーツ・教育、投資・ファイナンス)にまたがる広範な協力分野を設定する。

(4)また、9分野における協力を促進するため、規制の見直し、インセンティブ等のビジネス促進措置(Enabler)の分野でも連携する。

(5)31件のプロジェクトを先行プロジェクトとして、実施する。

(6)ビジネス促進のための横断的課題に取り組むサブグループを新設し、サウジアラビアの経済改革のモデルを示す特区(Enabler Showcase Zone)の設立に向けた検討を進める。また、東京とリヤドに、ビジョンの実施を継続的にフォローする拠点として、「日・サウジ・ビジョンオフィス」を新設する。

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